note用人類を前に進めたい

ロジックがわからなくても“居心地の良い世界”をつくりたい! | 猪子寿之

今朝のメルマガは、チームラボ代表・猪子寿之さんによる連載『猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉』の第13回です。今回は、「パリが居心地よかった!」という猪子さんが、現地で発表した新作について解説します。“動的であることを前提とした空間のありよう”を模索したその作品が、「世界に関与している実感」を得やすくなった理由とは。そして森美術館の新作『カラス』や下鴨神社の『呼応する木々』などの作品と比較する中でみえた、“世界に対しての感度”が鑑賞者に与える影響とは――?
◎構成:稲葉ほたて
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この連載が元となった猪子寿之×宇野常寛『人類を前に進めたい チームラボと境界のない世界』が好評発売中です。

■リオデジャネイロ・オリンピック閉会式の感想

宇野 この間、リオデジャネイロ・オリンピックの閉会式があったけど、ぶっちゃけ猪子さんはどう思った?

猪子 ほぼ100パーセントに近い民意を得られてて、すごいと思った。

宇野 俺はね、まずは「最適解、つまりベストのものが出てきたな」と素直に思った。だって本来だったら、もっと事故ってもおかしくない状況だったわけじゃない。

猪子 そうだね。

宇野 ただ、その一方で、あのクロージングの出来のよさって、今の日本の限界がすごく低い地点にあることを露呈させてもいるんだよね。

だって、あそこで使われた「ドラえもん」「キャプテン翼」「ハローキティ」「マリオ」って、主に80〜90年代のノスタルジーでしかないわけでしょ。まあ、南米で人気のあるネタを選んだのだろうけど、つまり同時にアレは、バブル前後の一番良かった頃の日本の魅力を最大公約数的に見せるということが、今の日本の精一杯だったとも言える。

もちろん、あのスタッフたちは100パーセントの力を出し切ったと思うんだけど、それでも「あれがベストだった」というのは、今の日本が未来のビジョンを描けないことを逆説的に証明してしまっていると思う。

猪子 ザハの新国立競技場案(以下、ザハ案)をみんなでつぶして、世界ではなくて、民主主義的に日本の全員が喜ぶものが正解になる。ソフトバンクのCMの犬とか、ああいうものがみんな好きだよね。

宇野 だからさ、ここは猪子さんが「俺は未来をもっと見せたい」って言うべきなんじゃないの(笑)?

だって、あの完成度って、未来を見せることを最初から諦めることで、初めて成り立ってるわけじゃない。でも、「すでに好きなものを確かめる」ということの先に進まないと、未来はない。俺としては、猪子さんと一緒にオリンピックの本も作ったわけで、オリンピックは猪子寿之に関わって欲しい。

【参考】

『PLANETS vol.9 オルタナティブ・オリンピック・プロジェクト』では、猪子寿之&チームラボPresents「参加型オリンピック計画」と題して、開会式や競技中継など、様々な提案を行っている。

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