男と怪我 | 井上敏樹
平成仮面ライダーシリーズの脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』、今回は「男と怪我」にまつわるエピソードを語ります。ジム通いを日課にしている敏樹先生ですが、ある日のベンチプレス中、手が滑って100キロのバーベルを口に落としてしまい……?
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脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第24回
男 と 怪 我 井上敏樹
怪我をした。しかも年末―クリスマス・イブである。私は職業柄運動不足になりがちなので、もう随分前からジムに通っている。人間、やはりたまには汗をかいた方がいい。気分がさっばりするしささやかな達成感を得られる。その日も私はいつものようにベンチプレスから始めた。ベンチプレスというのはフラットな台に横になりバーベルを上下させて大胸筋に刺激を与えるというものである。私は数あるエクササイズの中でもこのベンチプレスが一番好きだ。筋トレと言えばベンチプレスー重い重量を扱う者はジム内でも尊敬を集めたりする。以前、私はこの運動に凝り過ぎて大胸筋がやたらと発達した結果、うつ伏せで寝られなくなった事がある。胸の筋肉が邪魔になってしまったのだ。そんな私が、その日に限ってやってしまった。全く信じられないような話だが、バーベルを口に落としたのだ。百キロのバーベルである。汗で手が滑ったのだが、最初はなにが起こったのか分からなかった。
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