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男とペット3 | 井上敏樹

今朝のメルマガは平成仮面ライダーシリーズの脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』第21回です。今回は「男とペット 3」です。犬のトナとヒヨコのピヨを飼っていた井上家ですが、ピヨは成長してニワトリとなり、トナと反目し合うようになります。やがて起きる大事件。そして、井上家にやってきた二匹目の犬とは……。
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脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第21回
男 と ペ ッ ト 3  井上敏樹

さて、犬のトナとヒヨコのピヨ、我が家では二匹のペットを飼う事になった。コッペパンのようだった愛らしいカラーヒヨコのピヨはすぐに普通のニワトリへと成長した。ニワトリなど飼うものではない。なんの可愛げもないし感情が読めない。ニワトリほど嫌な面をしている生き物も珍しいのでないか。意地悪そうなあの目つき。人を全く信用しない守銭奴の老婆のような顔。しかもピヨはオスだったので卵を産まなかった。役立たずだ。この意見にはわが家の愛犬トナも激しく同意していたらしい。トナは犬小屋の中から鶏小屋のピヨをいつもジッと見つめていた。時に唸って吠えて敵意を表す。なにしろ今まで我々の愛情を一身に集めていたのに突然ライバルが登場したのだ――少なくともトナにはそう映っていたのだろう。犬の本能もあって、トナはずっとピヨに襲いかかる機会を狙っていたに違いない。すっかり可愛げを失ったとは言え、私も弟もピヨを放っておいたわけではない。きちんと餌もやれば時には小屋から庭に出して遊んでやった。遊ぶと言っても空に放り投げてジタバタするピヨをただ追いかけるというものでピヨにしてもみれば大いに迷惑だったかもしれないが。そんなある日、ついにトナが鬱憤を晴らす時がやって来た。

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