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卒論の季節と大学生になるということ|周庭

香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。この3月は卒論に取り組んでいたという周庭さん。高校時代から学生運動に参加していた彼女にとって、日本よりもはるかに狭き門である香港の大学に合格することは、自身の活動を大人たちに認めさせるという意味でとても重要なことでした。(翻訳:伯川星矢)

御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 
第26回 卒論の季節と大学生になるということ

忙しかった3月がやっと終わりました。

忙しいと言ってもやるべきことはたった一つ、卒論を完成させることだけです。
もともとは去年のこの時期に終わらせている予定だったのですが、立法会選挙の出馬で1学期休学したので、卒業計画もそのまま一年遅らせることになりました。わたしの同期はほとんどが去年卒業したので、正直ちょっと寂しいです。
雨傘運動と選挙出馬の休学、さらに社会運動への参加や立法会のお仕事もあり、学業の進捗は他の人より少し遅れて、今年の12月に大学課程を修了する予定となりました。

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卒論に集中していたこの1カ月ですが、香港衆志では「逃亡犯引き渡し条例」に反対する活動を数多く企画していました(条例改定の内容については前回の連載をご参照ください)。卒論に集中しなくちゃいけないわたしはあまり活動に参加できず、正直悔しいけれど、でも、卒業がかかっているので仕方ないというのが現実でした。

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高校二年生の時から今まで、わたしは社会運動家、学生、雇われ労働者を兼任しています。どうやって時間の兼ね合いをつけているのかよく聞かれます。実はそんな隠し技もなく、ただ単に人より多くの時間をかけて仕事をしているだけです。
でも、「選択する」ことはとても重要だと思います。例えば、大学受験前の数ヶ月間、わたしは学業に集中するために、学民思潮(当時所属していた学生組織)の会議への出席回数を減らしました。

そもそもわたしはそれほど勉強が得意なわけではありませんが、試験の結果発表後には、必ずメディアから成績について取材されると思っていました。もし大学に入れなかったら(香港では高校生の約18%しか香港の大学に進学できません)、きっといろんな人から「社会運動の参加者は勉強もできないロクでもない若者だ」と揶揄されてしまうでしょう。
もちろんこの考え方は間違っているし、社会運動は断じて学生の部活などではありません。これは社会に暮らす市民としての責任なんです。でも、それを理解しない人たちも多く、そういう人たちはいつもわたしたちを成績でしか評価しない。わたしはそのような価値観を認めるつもりはないし、わたしたちは様々な立場と自分の役割の兼ね合いをつけられると証明したい。

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予想通り、結果発表の日はわたしとジョシュアの成績を知りたい多くのメディアからの問い合わせで、朝から電話が鳴り止みませんでした。あまりにも問い合わせが多いので、結局、記者会見じみた結果発表までやったりして、本当に大変な騒ぎでした。

わたしの成績はトップの人たちには全然届きませんが、でも、あまり勉強をしてこなかったわたしにしては上出来と言える結果です。何より、親中派のメディアに叩く材料を与えずに済んだことでホッとしました。

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あっという間に5年間の大学生活が終わろうとしています。この時期によく聞かれるのは卒業後の進路で、わたしもそれを考えざるをえません。わたしたちのようなメディア露出度が高い社会運動参加者は、なかなか「普通」の仕事が見つからないし、雇ってくれる職場が少ないことも自覚しています。
もちろん、わたしはこれからも社会運動に参加しながら、社会にとって有意義な仕事に就きたいと考えています。それと同時に、少し日本語が喋れて、韓国語も学んでいる身として、自分の言語能力を活かせる仕事に就いてみたいと思うときもあります。それこそ日本と関係する仕事に就くのも悪くないかもしれません。
もうすぐ学生ではなくなることを考えると、少なからず感慨深い気分になります。昔は「学生運動に恐れなし」とスローガンを叫んでいたわたしたちですが、これからは仕事に忙しくなったり、生活に悩むこともあるでしょう。
将来の自分が、社会運動に参加した気持ちを忘れずに、仕事と社会への関心を保てることを、ただただ願っています。

「兼ね合い」と「選択」、これは人生の大きな課題です。まだまだ未熟なわたしは、これからも勉強していかないと!

(続く)


▼プロフィール
周 庭(Agnes CHOW)

1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政治組織「香港衆志」に所属している。

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