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男と男6 | 井上敏樹

今朝のメルマガは平成仮面ライダーシリーズの脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』第17回です。「祭りに行くぞ」と言われ、プロデューサーSに秩父祭りへと連れて行かれた敏樹先生。目の前で始まった痴話げんかを仲裁していると、そこにSが入り……。
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脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第17回
男 と 男 6   井上敏樹

さて、前回は私が刑事に職務質問をされた話を書いて寄り道をしてしまった。話を本題に戻そう。本題と言うのは、つまり大手映画会社のプロデューサーのSのせいで私が喧嘩に巻き込まれた話だ。まず思い出すのは祭りの場での喧嘩である。
『祭りに行くぞ』ある日、打合せに行くとSは私の脚本を放り出してそう言った。
『お前のクソつまらないホンを読んでいると鬱になる。気分直しに祭りだ』
『はあ。と、言いますと? どこのお祭りで?』
『秩父祭りだ。男の祭りよ』
確か『男と酒』で祭りの場のエピソードを書いたと思うが、その時、一緒にいたのがSだったのである。
とにかく私はわけがわからずぼ〜っとした状態でSの車で秩父に向かった。Sと知り合ってから私はよくぼ〜っとするようになった。短気で我が儘で気まぐれなSと付き合うにはぼ〜っとしてなければやってられないのである。

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