世界文学のアーキテクチャ 第一四章 不確実性――小説的思考の核心|福嶋亮大(後編)
福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ
7、グローバリズムをくり抜く地震こうして、一八世紀の新興の小説家=散文家は、オープンで不確実な世界への冒険を活気づけた。ただ、ここには面白い逆説がある。それは、進歩的な冒険者に集中すればするほど、その主人公をあらかじめくり抜いている力が目立つことである。小説を読むとき、われわれは主体という「図」にフォーカスするだけでなく、主体の背後にあって主体をあらかじめ規定する「地」を考慮に入れなければならない。なぜなら、小説ではしばしばこの図と地の反転