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今、振り返る19世紀からの思想の歩み(4)

 確かに、東京オリンピック(第18回、1964年10月10日~24日)は、記念に値するオリンピックだった。冷戦という政治社会にうんざりしている世界中の人びとに、日本が平和をうたう戦後復興をアッピールする、最高の機会になった。閉幕式に見せた世界の選手たちの混じり合った行進など、感動の極致と言っても過言ではないだろう。クーベルタンの言葉が繰り返されたし、オリンピックが文化の先端を切り開く花道になったような明るさを投げかけた。(但し、マラソンの円谷選手を決して忘れてはならないだろう。)
 しかし、この東京オリンピックとても時代を代表する主要な流れにはなれなかった。
 勝ち負け、メダルの数等がひとり強調されて、様々に予想され、取材され、語られる。そして、1980年の第22回モスクワ大会、1984年の第23回ロスアンゼルス大会である。オリンピックは例外にはなりえなかった。筆頭に来るのは、欧米とソ連という冷戦下、国家間の政治的争いがどうなるか、なのであった。確かに、1979年に始まったアフガニスタンへのソ連の軍事介入は許せるものではない。日本は、モスクワには不参加を表明した。この時のIOCの会合で参加を涙ながらに訴えた代表選手たち、わけても柔道の山下の訴えには、ビデオで見ると、今もって言葉にならない。
 スポーツを利用していく世論操作、政治的動力が力強く働き始め、その方がためになると思う組織や人が台頭する時代になった。振り返れば、東京オリンピックは、急速な変化を生活に求め、街に求め、交通に求め、大改革をうたってすっかり東京の景色を変えた。新幹線の登場、高速道路建設と日本国中というべきかも知れない。行う以上、かなりやむを得なかったとはいえ、金銭的、物質的に潤った者たちの快哉が、陰に陽にオリンピックの成否に今まで以上に強く関わってくる。

1964年の東京オリンピック閉会式

 以後のことに言葉を尽くす気にはなかなかならないが、国際情勢を考えることがとても重要だろう。ここに平和の前進の象徴になる「競技」を目指すオリンピックが、顧みるなら「競争」という言葉の持つ特殊な本質にからめとられてゆく、現代人の弱点というべきものが見え隠れしている。
 国際関係の根本的な変転・変化とは別にこれを問題にはできまい。ベルリンの壁崩壊(1989年)、ソ連の消滅東欧社会主義の総崩壊。ソ連はロシアになり、米国の主導するグローバリズムがハッシドウドウともてはやされ、新自由主義が自由主義的世界(もちろん日本も)の合言葉になる感がある。その間、数多い事件や紛争があったけれども、世紀があらたまって、9.11同時多発テロが起きた。テロ行為が国家規模、世界規模で登場したのである。そして、その「報復」戦争、アフガニスタン、イラン、イラク等々あっという間に、各地にすさまじい爆弾が落とされ、街が破壊され、都市が粉々になり、民衆・市民が区別なく犠牲になる映像が報じられ、すこしも縮小されることなく、続く。

 米国はソ連邦の崩壊を指して、民主主義の勝利としたわけだが、額面通りに、民主主義を米国の勝利と結びつけることを歴史は許さなかった、とぼくは思う。
 「競争相手」が無くなった時、台頭したのはデモクラシー(民主政体)では決してなかった。米国は、この精神をプライオリティ(第一)にするのではなく、「カネもうけ」の精神に替えたのである。そして、このカネには、代表的にはウォール街を仕切る勢力があり、戦争・あつれきを好む圧倒的な軍事力がある。単なるカネではないのだ。それらのエネルギーに密接なからみがあってこそのものである。これ以後、人や企業の「偉さ」は金儲けに長けた仕事をするかどうかによって決まる傾向が大手を振り、夢中になる人がずっと増えたようだ。マスコミ社会は、その方向に動いていく。
 そうそう、中華人民共和国(中国)は経済、軍備などの分野で米国を脅かすばかりの成長をとげたことにも注意したい。共産党が独占し、共産党の独裁者が引っ張る新たな「一党支配資本主義」の登場である。さてさて、米ソの冷戦時代とは異なる新しい緊張関係が世界を席捲するようになったことを、どう受け止めたらよいのだろう。
 今や「競争」は、国力の比較であり、チカラ関係に立つ国同士の関係なのである。「競技」もよくよく注意しないと、冷静さを欠いた感情主義になる。「競技」に夢中になることが、知らずに平和とは逆の方に行くことにおそれを持つようにしたいものだ。
 そこでまずは教育界のことを考えなければならない。ここから改めて初めて見ようではないか。

 和久内明(長野芳明=グランパ・アキ)に連絡してみようと思われたら、電話は、090-9342-7562(担当:ながの)、メールhias@tokyo-hias.com です。ご連絡ください。

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和久内明
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