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温泉の歴史

日本最古の温泉

そう言われている温泉地が
全国に存在する。

開湯○○○○年の歴史

とても惹かれるけど
内容が不確かだったり。

記紀や風土記など
歴史書に残されている温泉もある。

けど、内容が神話的だったり
書物のオリジナルが現存していなかったり

どれを真実として捉えるかは本人次第…
それが歴史の面白いところなのだけれども。

"最古級の温泉"

それは確かだから
先人達がここに足を運んだ…
なんて想いを馳せながら
湯の町を歩き、郷土料理を食べ、
湯を飲み、湯に浸かり…
温泉を楽しんでいた。



古湯で思い浮かぶ温泉地…

・日本三古湯(日本三古泉)

有馬温泉
南紀白浜温泉
道後温泉

一般的にはこの3湯
他、いわき湯本温泉や走り湯など…

・枕草子に記述のある名湯

ななくりの湯
(榊原温泉、別所温泉)
ありまの湯
(有馬温泉)
たまつくりの湯
(玉造温泉、鳴子温泉、川渡温泉)

昔の呼び名なので、諸説あり

・延喜式神名帳より
 温泉神を祀る温泉地

鳴子温泉(温泉神社)
川渡温泉(温泉石神社)
湯田川温泉(由豆佐売神社)
いわき湯本温泉(温泉神社)
那須湯本温泉(那須温泉神社)
榊原温泉(射山神社)
有馬温泉(温泉神社)
岩井温泉(御湯神社)
玉造温泉(玉作湯神社)
道後温泉(湯神社)

数が多くなってしまうので
以上3点に絞って…
旅を振り返り、纏めてみる。


  • 有馬温泉

オオナムチとスクナヒコナが
傷を癒やす三羽烏を発見し
湯の湧く場所を教えてもらう。
(伝承)

舒明天皇が津国有馬温湯に行幸
(631年 日本書紀)

有馬郡に塩原山あり
近くの塩湯に孝徳天皇が行幸
(647年 摂津国風土記)

湯は
ななくりの湯 ありまの湯 たまつくりの湯
(枕草子)

温泉神社(式内社)
祭神:オオナムチ・スクナヒコナ・クマノクスビ
(旧・熊野権現(クマノクスビ))


  • 南紀白浜温泉

有間皇子が牟婁温湯へ来浴
翌年、斉明天皇と中大兄皇子が紀温湯へ行幸
(657-658年 日本書記)


  • 道後温泉

傷を癒やす白鷺を見つけて発見。
(伝承)

オオナムチが鶴見山麓から湧く
速見の湯を地下を通して運び
スクナヒコナの病を癒やす。
※スクナヒコナが運びオオナムチを癒やす
(伊予国風土記)

景行天皇と八坂入媛命が来浴
(71-130年 伊予国風土記)

木梨軽皇子が伊余湯に流刑
(431年 古事記)

聖徳太子が来浴
(596年 伊予国風土記)

舒明天皇が伊予温湯宮に行幸
(639年 日本書記)

湯神社(式内社)
祭神:オオナムチ・スクナヒコナ
(旧・湯月大明神)


  • いわき湯本温泉

傷を癒やす丹頂鶴…
2人の旅人が傷口を洗ってあげると飛び立ち
数日後、巻き物を持った美女が現れる。
巻き物の通り、湯本温泉を開いた。
(伝承)

佐波古峰に鎮座していた社を
湯本三函の地に下山し里宮とした。
(674年 伝承)

温泉神社(式内社)
祭神:スクナヒコナ、オオナムチ
(旧:オオモノヌシ(オオナムチ))


  • 伊豆山温泉

伊豆山海岸から上がる五色の湯煙を
修験道開祖 役小角が発見。
山腹から湧き出た湯が
海岸へと飛ぶように走り流れ落ち
走湯と名付けられた。
(717-724年 伝承)

日金山の山上に鎮座していたが
本宮山を経て、甲斐国の僧 賢安により
現在地へ遷座した。
(836年 伝承)

伊豆山神社(式内社)
祭神:ホムスビ、アメノオシホミミ、タクハタチヂヒメ、ニニギ
(旧:伊豆山権現、走湯大権現)


湯の峰温泉

熊野国造 大阿刀足尼によって発見
熊野参拝の前に
湯垢離(禊)をして身を清める地だった。
(131-190年 or 367-373年 伝承)


  • 別府温泉(鉄輪温泉ほか)

オオナムチが鶴見山麓から湧く
速見の湯を地下を通して運び
スクナヒコナの病を癒やす。
※スクナヒコナが運びオオナムチを癒やす
(伊予国風土記)

赤湯の泉 郡の西北にあり
湯の泉の穴は郡の西北の竈門山にあり
玖倍理湯の井 郡の西
河直山の東の岸にあり
音を上げながら6m近く噴き上げて湧く
(733年以前 豊後国風土記)

火男火売神社(式内社)
祭神:ホノカグヅチ、ヒヤキハヤメ
(旧:御嶽権現、鶴見権現)


  • 榊原温泉

伊勢神宮参拝の前に
湯垢離(禊)をして身を清める地だった。
(伝承)

荳角皇女が伊勢斎王になられた年
自生する榊枝を榊の井の長命水に一晩浸し
神宮へ献納、現在も祭祀に使われている。
(50x年 伝承)

湯は
ななくりの湯 ありまの湯 たまつくりの湯
(枕草子)

射山神社(式内社)
祭神:オオナムチ・スクナヒコナ
(旧:温泉大明神)


  • 別所温泉

ヤマトタケルが東国征伐の際に
7か所の温泉を発見。
東征兵達が湯につかり疲れを癒した事から
「七苦離の温泉」と名付けた。
(110-111年 伝承)

円仁が大師湯に入浴し
翌年、北向観世音本堂を創建。
(825年 伝承)

湯は
ななくりの湯 ありまの湯 たまつくりの湯
(枕草子)


  • 玉造温泉

三種の神器の1つ、八尺瓊勾玉が
クシアカルタマによりこの地で造られた。
(伝承)

オオクニヌシと共に国造りをした
スクナヒコナが発見。
(伝承)

湧き出す湯に老若男女が集い賑わう。
一たび濯げば容姿が美しく
再び沐すれば万病が治る。
(733年以前 出雲国風土記)

湯は
ななくりの湯 ありまの湯 たまつくりの湯
(枕草子)

玉作湯神社(式内社)
祭神:クシアカルタマ・オオナムチ・スクナヒコナ


・鳴子温泉

鳥屋ヶ森山の噴火から数日
遂に爆発し熱湯を噴出、河となり流れた。
里人は驚いて朝廷に報告、
朝廷は温泉の神を祀り
そのときの轟音から鳴郷の湯と名づけた。
(837年 伝承)

玉造温泉神に従五位下が授けられた。
(843年 続日本後紀)

湯は
ななくりの湯 ありまの湯 たまつくりの湯
(枕草子)

温泉神社(式内社)
祭神:オオナムチ・スクナヒコナ
(旧:玉造温泉神)


  • 鳴子温泉(川渡温泉)

鳥屋ヶ森山の噴火で熱湯が噴出
6m程の石の根元から
漿色の湯が流れ出した。
(837年 伝承)

玉造温泉神に従五位下が授けられた。
(843年 続日本後紀)

湯は
ななくりの湯 ありまの湯 たまつくりの湯
(枕草子)

温泉石神社(式内社)
祭神:オオナムチ・スクナヒコナ
(旧:玉造塞温泉石神)


  • 湯田川温泉

由豆佐売神社を創建。
ユヅサヒメを祀る神社だった。
(650年 伝承)

白鷺が傷を癒やしていた事に由来し
白鷺の湯と呼ばれていた。
由豆佐売神社は湯田川温泉の守護神。
(712年 伝承)

鳥海山の噴火は
天変地異や兵乱の前触れと占われ
田川郡由豆佐乃売など三神を厚く祀るように
との命令が朝廷から出された。
(885年 三代実録)

由豆佐売神社(式内社)
祭神:ミゾクイヒメ、オオナムチ、スクナヒコナ
(旧・ユヅサヒメ、湯蔵権現、龍蔵権現)


・那須湯本温泉

傷を癒やす鹿を
猟師の狩野三郎行広が発見。
その湯を鹿の湯と名付けた。
(630年 伝承)

湯治のため下野国那須湯へ下向する
小野朝臣一行。
(638年 駿河国正税帳)

那須温泉神社(式内社)
祭神:オオナムチ、スクナヒコナ、ホンダワケ
(旧:湯前大明神、那須温泉大明神)


  • 岩井温泉

御井神を祀る御湯神社を創建。
(811年 伝承)

関白の孫、藤原冬久が薬師如来に似た
不思議な女に言われるままにお湯を浴び
長年の皮膚病が美しい肌に戻った。
(860年 伝承)

御湯神社(式内社)
祭神:ミイノカミ、オオナムチ、ヤガミヒメ、サルタヒコ


その他
ヤマトタケル、行基、空海などによる
温泉発見伝もあるけれど…
数が多すぎるので割愛。

…長い歴史の温泉地は他にも沢山。


記紀が最古の歴史書という前提で
道後温泉、南紀白浜温泉、有馬温泉が
日本三古湯に選ばれる理由が解る。

記紀の記録で人が入ったとなると
道後温泉が最古の温泉になるのだろう。

道後温泉より引湯元の別府温泉の方が
存在を早くに知られていたのでは?
なんて思ったり…

神話的な話だったとしても
記紀以外の歴史書だったとしても
何かしらの真実が変換された物語…
その可能性を膨らませると

実はこの温泉の方が古いのではないか?
なんて考えるのも面白い。

ヤマトタケルはもっと昔!
湯の峰温泉は開湯1800年の歴史!
とか、想像は尽きない。

温泉=風呂に入ってなんぼ
という前提で最古を決めるなら
南紀白浜温泉(崎の湯)が
最古の湯壺になるのだろう。

一番は決められない。
…けどだから面白い。



話は変わって、
温泉の歴史について個人的な想いを…

今も続いている歴史という価値観は
超えられない1つのステータスなのは確か。

今も湯が湧き続けているって素晴らしい。
私も勿論ワクワクしたりする。

そんな中
様々な理由で湯の枯渇に悩まされ...
けど、町全体で協力して
豊富な湯を取り戻した温泉地がある。

廃れてしまっている温泉地をよく見かける...
そんな中、景観などを蘇らせたり、
新たなシンボルを作ったりして、
活気を取り戻そうとしている温泉地がある。

残念ながら温泉地としての面影は
殆ど消滅してしまったけれど…
数件の湯屋だったり
土地の名だったり碑だったり
痕跡が残っている元温泉地がある。

地獄蒸し釜で野菜や魚を茹でてみたり

洗濯場で手ぬぐいを濯いでみたり

洗髪料を払って頭を洗ったり

三助さんに背中を流してもらったり

貴重な湯の文化を経験することもあった。

そんな歴史を守る(残る)1ページに
グッとくるものがあって...

想いに耽ながら沁みている…

孤独のグルメの温泉版?みたいな
独りニヤリと楽しんでいるだけなのだけど…

今回、最古の温泉について
箇条書き風に長々と始まり

温泉の歴史の面白さについて
少し綴ってみたけど…

私は学者でも研究家でもないから
情報に間違いがあるかもしれないし
他にも知らない事があると思う。

けど素人なりに歴史に刻まれた話と
現地で感じた空気感とを掛け合わせて…
想いに耽る時間が好きだ。

各温泉地について感じたこととか
個別に綴るのも良いかもしれない。



良い温泉に浸かること

勿論それは外せないことで
一般的には皆それを求めてる。

温泉の歴史といえば
「○○年の歴史」「○○が訪れた」
を語るくらい…

けどそこからもう一歩

温泉が"今に至るまで"を感じる

そしてこれから先を想う…

そんな温泉の楽しみ方、面白さ

表現が下手だけど…
少しでも伝わったらいいなって


まだ知らぬ温泉地へ…
なんだか行きたくなってきた

温泉の歴史は面白い。


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