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光の紙飛行機

 去年の夏、私は日常からの逃避を求めて、一人旅に出た。行き先は郊外の静かな町。そこで私は、平凡な日々からは想像もつかない、不思議な体験をすることになる。

 旅の初日は、早朝からの読書に始まり、昼には町の広い芝生広場でゆっくりとした時間を過ごした。芝生の広場には人影はなく、静寂が私を包んでいた。空は青く、風が心地よく吹いていた。

 そのとき、ふと視界に一枚の紙飛行機が舞い込んできた。誰が飛ばしたのかは分からない。紙飛行機は、芝生の上を滑るように飛び、私の足元に落ちた。何となく興味を引かれて、それを拾い上げてみた。

 紙飛行機には、薄い紙に細かい文字がびっしりと書かれていた。内容は、まるで古い日記のようなもので、ある日を境に世界が異変を起こすという予言めいたものだった。まわりを見渡しても人影は見当たらず、その紙飛行機は持ち帰ることにした。

 その夜宿に戻った私は、部屋で紙飛行機の文を読み返していた。すると突然、窓の外が異様に明るくなり、部屋中が白い光に包まれた。まるで昼間のように明るいその光に驚き、窓を開けて外を見た。

 そこには、信じられない光景が広がっていた。空全体が光に包まれ、まるで今が昼間のような明るい世界が広がっていたのだ。ありえない現実に私は恐怖を覚え、ベッドでシーツを被って怯えながら、いつのまにか眠りについていた。

 次の日、外は普段通りの静けさを取り戻していた。だが私は、前夜の出来事がただの夢だったとはどうしても思えなかった。芝生広場に行ってみると、再び紙飛行機が舞い込んできた。同じ紙飛行機だった。

 私はその日から、その紙飛行機の謎を追いかけることにした。毎日広場に通い、同じ光景を何度も見た。ある日、ついにその紙飛行機を飛ばしている人物と出会うことができた。それは、一人の老紳士だった。

 老紳士は、私に向かってこう言った。

「君がこの紙飛行機を拾ったということは、君も選ばれたのだよ」

 彼の話を聞き、私はある秘密を知ることになった。この町は、異変が起きるたびに時間が巻き戻るという特殊な場所だったのだ。紙飛行機は、その異変の兆候を示すメッセージだった。

 そして、その老紳士が語る過去の話の中で、私の存在が重要な役割を果たすことが明らかになった。彼の言葉に従い、私は自分自身の中に秘められた力を見つけ出すことを決意した。

 最後の日、再び空が光に包まれる瞬間が訪れた。私はその光の中で、紙飛行機を持って老紳士の指示通りに空に飛ばした。すると、光の中で紙飛行機が輝き、まるで時空を超えるように飛び去った。

 その瞬間、すっと理解することができた。この異変の正体は、私自身の覚悟を試すものだったのだ。

 そして、私は新たな光の中で自分の未来を見据え、ある決意を胸に抱いた。日常の生活に戻った私は、以前と同じように本を手に取り謎解きを楽しむ日々を過ごしている。しかし、心の中にはいつもあの紙飛行機と光の記憶が残っている。

 謎は全て解けたわけではないが、私の旅が確実に始まっている。あの場所とともに。

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