SF作家の息抜き

今という世の中では、ほとんどの人が無理をしている。というか、誰でもそうなのだが、少しは無理をする。無理をしている人がいないかなと見渡せば、ようやく歩き出した赤ちゃんだって、本能のままかもしれないが、歩くのに一生懸命だから、多少は無理をしているかもしれない。あるいは仕事帰りにくたびれたおじさんおばさんも、だいぶ無理をしている。赤ちゃんは、疲れてしまえば眠ることができる。それはお母さんが見守っているからできるのもある。しかし、今の人たちは、場合によっては眠れていないかもしれない。スマホの見過ぎで脳が冴えたまま一晩過ごし、翌朝寝ぼけなまこで出かけるというような体たらくの人は、そう少なくないだろう。そもそも、我々は今までに「休む」ことをしたことがあったろうか。生き残ったり、昇進したりするために必死で職場に押しかけ、休日も電車に乗り、働き詰め、そういう無理のある働きをずっと続けていたのではないだろうか。そういう人に急に休めと言っても、なかなか休むことはできないだろう。休もうとしても、休日も鳴り止まないLINEの通知に怯え、何もしないで休むことが実は難しいのではないか。
これは私自身のエッセイになっているが、内容としては、いかにして休むノウハウを手に入れたか、というものになっている。何を隠そう、二十歳のときに受けた診察で、私は統合失調症だと診断された。だから、それ以来、例えば私の場合、疲れてくるとすぐに口がぽかんと開いたり、視界に魔法が掛かったような不思議な見え方になったりして、それが休めという身体へのSOSになっていたのだ。色々あって就職してからも、できるだけ、無理をしないように生きていく術を、自分なりに模索してきたし、本書はその休み方にかけては右に出るものがないものに仕上げようと思う。
ああ、そうやって頑張りすぎて執筆しちゃうと、休めなくなっちゃうじゃん! というわけで、私もこれを書きながら、どうやって休むのか、どうやって休みながら続けていくのか、そういうことを休みながら、書いていこうと思っているのだ。

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