見出し画像

はじめて小説で食べたご飯は、カレーライスだった。

はじめて小説で食べたご飯は、カレーライスだった。
私はまだ食べられている作家とはとても言い難いけれど、こういう経験がありました、という話で一つ。

ちょっとしたつてがあって、小説の依頼があったのだが、お礼ができない、と言われた。それで、いっとき小説を書く代わりにレトルトのカレーを送って欲しいと頼んで、カレーで小口を凌いでいた時期があったのだ。

https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/3LX33N12BS3CP?ref_=wl_share

この欲しいものリストからカレーを頼んでもらい、それを送ってもらった。結果、なかなか美味しいカレーにありつくことができた。

それからも生活に苦労した。エンジェル(妻)がいるので、あんまり苦労をかけるわけにはいかないし、かといって何もしなければ干上がってしまう。そこで私はフードバンクに行くことにした。

フードバンクのご飯は、お弁当もあったし、レンコンや里芋みたいなちょっとしたお野菜とかももらえた。フードバンクの往復は、スーツケースを運んで持って行って、そこに沢山食材を詰めて帰る、ということのルーティン。
実は初めてフードバンクを利用したのはカナダにいたときだった。留学中金銭感覚のない私は4ヶ月分のお金を一気に使ってしまい、たちまちお金がなくなり、頭を抱えて相談したら紹介されたのがフードバンクだった。でもカナダのフードバンクはそんなに美味しいものはもらえなかった印象がある。来る人は黒人の方も白人の方も色々だった。新鮮な紫色のタマネギももらったが調理する気にならず部屋の片隅に腐らせてしまったことがある。まあ、それぐらい病んでいた、んだと思う。でも、良かったのは大学の構内に、ちゃんとフードバンクというシステムができていたことだった。大学では殺人事件があったこともあり、メンタルを病んだ人も多く、そういう人はみんな精神科にかかっていた。アムネスティーインターナショナルに関わりたくて留学しにきた法学部の日本人学生も病んで、精神科に来ていたところに偶然私が遭遇したことがある。

でも日本のフードバンクは、いつでも美味しかった。ただ、日本のフードバンクで見たのは、ブルーカラーの外国人労働者の数々だった。特にコロナ以降はひどく、失業した人もいて、みんなフラストレーションを抱えながら列を作って並んでいた。ただ、そこで英語を話すことで、色んな人と友達になれた。成都の大学を出て、中国共産党に追われている妄想を抱えた、難民申請中の中国人。確かに中国から逃れてきたのはいいが、その病気とはちゃんと向き合わないと治らない。バルーンの会社をやっている整形手術に3000万かけた女性タレントさん。美を追求するあまり、ご飯をも節約するのだろうか。それが本当の幸せなのだろうか。そういう、人生ってなんだろう、って考えさせられるような奇特な人に次々と出会った。

今、コロナでシステムは改善され、並ばなくても取りに行けるようになった。そのせいか、不思議と話し相手がおらず、寂しい。
習った英語のブラッシュアップついでに、色んな国々の文化を学んでいたあの頃が懐かしい。

貧困って、意外と身近なところにあるんだな、と私は思った。でも、多くの人々は、フードバンクの存在すら知らない。左翼的な発言が目立つ影響力ある人たちでさえ、フードバンクのことをリツイートしない。貧困を解消しろとか、生活保護を増やせとか言うだけで、実態としてやっているのは自分の言いたいことを言うだけだ。そういう、知識人の欺瞞のようなものも、私は肌で感じていた。フードバンクのことが広まると、もっと多くの人が食べ物を食べたいと思う気持ちから応募が殺到するのではと危惧もしたが、それでもこれを読む人が良識ある人たちだと信じて書いている。飢餓はなくさなければならない社会的な課題だから、そういう公的な活動を応援する人々に私は投票する。そういうシステムを利用することのサポートに私は支援する。でも、自分が実際それを利用する立場であったらどうか。実際左翼的な方は、社会的に成功している人が多い印象がある。でも奨学金を借りて留学までしているのに、コロナで月3万の収入になって、にっちもさっちもいかなくなってから、私ははっきり言って世の中に絶望気味だが、絶望していても何も変わらないので何かを作るしかない。そこで私はエンジェルに言った。「これから、しばらく我慢が必要になるかもしれない。でも、耐えて欲しい。」エンジェルは、「いいよ。」と言った。作家は書くことでしか、人生の問題とは向き合えない。書くしかない。もちろん焦りもあった。でも、進んでいくしか方法はないだろう。この危うい道を歩くしか。何もやることがないので、トランペットの演奏動画を上げ始めた。トランペット奏者は意外と少なく、2016年頃に公開した動画が積もり積もって2500再生回数を超えていた。

また来週もフードバンクに行くつもりだ。私は貧しい。でも、今は前に進むしかない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?