クリームソーダ
エメラルドグリーンの海の上に、白い砂浜の島が浮かんでいる。行きつけのベーカリーで、新しいドリンクメニューが出たと聞いて早速注文した。実に40年ぶりの再会である。
幼い頃、「ハレの日」には家族でデパートのレストランに行った。ガラスケースの中には美味しそうなメニューが並び、めったに食べることのない洋食に目移りしたものだ。ごちそうは少し我慢してでも、この贅沢な飲み物を注文するのが密かな楽しみだった。
バニラフロートをスプーンですくい、一口ずつ口に運ぶ。まったりとした甘みが口の中に広がり、幸せな気分になる。次に、ストローでソーダ水を少しずつ飲み込む。炭酸の刺激と共に、メロンの香りが鼻にぬける。この単純な繰り返しをしていくと、やがてバニラは小さな塊となって沈み、最後はスプーンでくるくるとかき混ぜ飲み干すのだ。
ふと、何かが足りないと思った。なんだろう。「そうだ」サクランボがないのか。子どもの頃は、あの赤い実を口に入れ、甘みがなくなるまで口の中でころがし楽しんだ。最後に舌でつぶすと、甘酸っぱい果肉が口いっぱいに広がった。
ベーカリー新作の「メロンクリームソーダ」は、懐かしい記憶と味覚を呼び起こしてくれた。
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