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能登半島地震について(速報)


はじめに

若手パワーアップグループのMです。本年も若手パワーアップグループをよろしくお願いいたします。
さて、1月1日に発生した能登半島地震では数多くの被害が発生したことと思います。一刻も早く日常に戻れることをお祈りしています。
すでに学会では調査団の派遣等が行われているかと思いますが、ここでは能登半島地震がどんな地震か簡単にご説明したいと思います。なお、使用したデータは防災科学技術研究所および神戸海洋気象台のものを使用させていただきました。関係各位にお礼申し上げます。

地震波形

地震が発生した際、地震の加速度が計測されます。現在防災科学技術研究所の強震観測網が全国にあり、地震の記録が蓄積されています。能登半島地震で最も揺れが大きかった石川県富来の計測結果を以下に示します。加速度の$${gal}$$という単位は$${cm/s^2}$$と同じです。今回の地震は群発地震と言われていますが、図にもピーク(赤枠)が複数あることが確認できます。この地震の最大加速度は2700gal程度でした。これは東北地方太平洋沖地震で観測された最大加速度と同程度であり、非常に大きな地震であるといえます。参考までに東北地方太平洋沖地震で最大加速度が観測された築館の記録も示しておきます。

石川県富来で観測された地震波形
東北地方太平洋沖地震で観測された地震波形

加速度応答スペクトル

先程、地震波形で非常に大きな地震と言いましたが、構造物におよぼす影響を把握することが大事です。これを知る方法に応答スペクトルがあります。構造物には固有周期(1回揺れる時間の長さ)があります。一般には高層建築になるほど固有周期は長くなり、10階建てで0.5~1.0秒、30階建てで4.0~7.0秒程度と言われています。この固有周期と地震の揺れが大きくなる周期が一致すると構造物への被害が大きくなります。この地震の揺れが大きくなる周期を求める方法が加速度応答スペクトルです。
加速度応答スペクトルは、下図のように色々な周期に対して地震応答解析を行い、各周期の最大加速度を調べる手法です。

応答スペクトルの概要

能登半島地震(富来の記録)と東北地方太平洋沖地震(築館の記録)、熊本地震(益城の記録)、兵庫県南部地震(神戸海洋気象台の記録)の加速度応答スペクトルを下図に示します。能登半島地震と東北地方太平洋沖地震は短周期側では加速度が大きいですが、構造物の固有周期付近では特に兵庫県南部地震の加速度が大きく、構造物への影響が大きいことがわかります。
ちなみに、能登半島地震と東北地方太平洋沖地震は海溝型地震で熊本地震と兵庫県南部地震は直下型地震です。一般的に構造物への影響は直下型地震の方が大きいと言われており、ここでも同じ傾向が見られています。

加速度応答スペクトル(減衰率5%)

非線形地震応答特性

鉄やコンクリートが降伏応力を超えると塑性化するというのは学校の理科で習うと思いますが、地震動でも規模が大きいと構造物が塑性化します。塑性化すると変位が残り続けるため、補修等が必要となります。このような地震動による影響を簡単に見るため、非線形地震応答解析を行ってみます。非線形地震応答解析は想定した震度を超えると塑性化するという仮定で構造物の地震応答特性を調べます。地震動は一方向ではなく「行ったり来たり」を繰り返すので、下図のようなループを繰り返します。これを復元力特性といいます。ここでは、この復元力特性をバイリニアモデルとして計算してみます。

復元力特性の概要

非線形地震応答解析の結果を以下に示します。なお、固有周期は0.5の構造物を想定しています。降伏震度に達して塑性化し残留変位が発生していることがわかります。ただし、残留変位は非常に小さいため、構造物への影響は大きくないといえると思います。地震波形の節でピークが複数あると言いましたが、構造物への影響が大きいのは最初のピークのみと想定されます。

非線形地震応答解析結果(変位)
非線形地震応答解析結果(復元力特性)

おわりに

本結果は速報のため、間違いがありましたらご指摘ください。
この地震でこれ以上被害が出ないことを願っています。

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