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土木学会誌7月号を読みました。

 こんにちは!若手パワーアップ小委員会です。秋の足音が聞こえ始める今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
 若手パワーアップ小委員会では、若手の自己研鑽の一環として、土木関連書籍の読み合わせ勉強会を始めました。

 今回読み合わせたのは、土木学会誌7月号に掲載の
[新会長インタビュー] 
  産学官の垣根を超えた議論で「ビッグピクチャー」を描こう

 です。

 会長関連記事のバックナンバーは、土木学会のホームページからも読むことができるんですよ。

▽△▽こちらからどうぞ▽△▽

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 今回の勉強会はオンラインで開催し、上記の5名のメンバーが参加しました。(そもそも、コロナ禍にならなければこのような勉強会をやろう、という発想にもならなかったと思いますし、オンラインだと気軽に集まれるのがいいですね!)
 以下に、上記5名+当日不参加だった1名の感想を紹介します。

1.

 谷口会長が「ビッグピクチャー」についてご説明されている中で、以下の文章がありました。

「各人の絵、思いを持ち寄って小異を捨て大きな力を発揮するようにしていくプロセスを大切に議論し、共通の絵、旗を掲げることが肝要だと思います。」

 我々土木に携わる者が、どのような意図で国土を整備しているのか。
 また、利用する立場の人が、それに対してどう思うのか。

 このような対話を通じて、ビッグピクチャーが描かれていくのかなと思いました。そして、土木学会がその対話のプラットフォームとしての役割を担っていくことができれば、望ましいと感じました。

 ビッグピクチャーの思想は初代土木学会 会長の古市公威の言葉とも通じるところがあると感じました。以下に引用します。(全文はこちら

「本会の会員は技師である。技手ではない。将校である。兵卒ではない。すなわち指揮者である。故に第一に指揮者であることの素養がなくてはならない。そして工学所属の各学科を比較し、また各学科の相互の関係を考えるに、指揮者を指揮する人すなわち、いわゆる将に将たる人を必要とする場合は、土木において最も多いのである。土木は概して他の学科を利用する。故に土木の技師は他の専門の技師を使用する能力を有しなければならない。(~中略~)会員諸君、願わくば、本会のために研究の範囲を縦横に拡張せられんことを。しかしてその中心に土木あることを忘れられざらんことを。

2.

 本稿を通読して、主題であり新会長の持論である『ビッグピクチャー論』とは、決してある一定の期間のみ掲揚されるスローガンではなく、より根柢の部分にあるべき思想、即ち技術者として様々な情報に触れるとき、そして様々な立場の人と建設的な対話を行うときに、常に欠かさず留意しておくべき視点であると感じました。

 老朽化の進む多数の既存インフラ、人的資源、激甚災害───様々な面でこれまでと同じやりかたや構想を継続していくことが通用しなくなってきた昨今の日本に生きる土木技術者として、次世代にどのような姿を残していくのか、という命題を常に考え、共生する者の意志や希望を汲み取り昇華し、そして目指すべき像と具体的に取り組むべき課題を提示し実践していく存在でありたいという思いになりました。

 そんな大局的な視点に立って、今後も日常業務や学会誌の購読などあらゆるきっかけと機会を通して、自分の思索を広げ深めていきたいと思います。

3.

 谷口会長のインタビューの中で、

「社会資本整備重点計画もしかり、自信をなくしているのか夢がなく寂しい限り。」

 という記載があり、現在の土木業界のやりがい・魅力について考えました。

 私は移りゆく時代の中で、現在の土木業界のやりがい・魅力としては、災害への対応が挙げられるのではないかと考えています。昨今の異常気象により、災害によって被害を受ける方が増えています。減災につながるインフラ整備や災害後の復旧対応等は、社会貢献として大きなやりがいがあると思います。

 その中で、若手パワーアップ小委員会の活動として必要なのは、土木のやりがい・魅力を伝えていくことが挙げられると思います。特に、若手に求められるのは、次世代の土木業界の担い手となる学生などへの土木業界のアピールだと考えます。

 土木学会誌7月号には、熊本県建設業協会青年部の取り組みとして、県内の学生に土木の魅力を伝える広報活動が記載されており、このような取り組みの中で、土木のやりがい・魅力を伝えていければいいのかなと感じました。

 そのような取り組みによって、多くの方に土木の魅力・やりがいを知って頂くことが土木業界の活性化につながり、最終的に「ビックピクチャー」につながっていけばと思いました。

4.

 新型コロナウィルスにより、これまでの物事の考え方や意識・価値観、働き方や生活スタイルに至るまで大きな変革の波が押し寄せています。コロナ後の新しい世界観や価値観を多くの人々で共感・共有していくためには、今後のあるべき社会全体像の俯瞰図・将来の方向性を示すような「ビッグピクチャー」を描いていくことが重要なカギになってくると思われます。

 一方で、高度経済成長期の大型プロジェクトや大規模なインフラ投資を経験してないロスジェネ世代にとって、夢のあるようなビッグピクチャーを描くことは、なかなかハードルが高いと感じています。このため、これまでの時代の流れや今後のあるべき将来像、国土や地域を俯瞰した観点など総合的に議論できるように、世代や性別、職種、分野を超えた様々な意見交換・人的交流によって、これからの新たな世の中を一緒に創り上げていくことが必要だと思います。

 土木は社会基盤を支え、社会活動に必要不可欠な空間・環境を創造する分野であり、最新のICTやDX技術を取り入れながら、世の中の動きにあわせて土木分野も日々進化していかなければいけないと感じています。また、自分自身も様々な考え方・価値観に刺激を受けながら、日々精進していきたいと思います。

「河川監視カメラ画像を用いた流量観測技術で世界をリード」(藤田一郎名誉教授)を読んだ感想 p.78~81

 近年、豪雨災害などの洪水予測には、実河川流量を正確に計測することが求められており、河川監視カメラを用いた安全かつ高精度な実河川流速の画像計測技術について、藤田一郎名誉教授の研究の取り組み内容や研究生活の半生が紹介されていました。

 藤田先生は、河川洪水の画像解析の第一人者でありますが、自分が神戸大学で社会人ドクターの際に副査になって頂いた先生でもあります(その節は大変お世話になりました)。

 実河川の画像計測技術の誕生までには、土木以外の流体計測分野や様々な先生方との出会いによって研究が進められ、国際ジャーナルでの公表、引用・閲覧、画像解析コードの自由な利用によって、世界的に一気に広まることになりました。また、2012年の九州北部豪雨の際に実用化されることになり、実河川の流量観測技術としてカメラさえ設置しておけば無人で安全かつ容易に計測できる点が非常に評価されたことから、国内や海外でも正式に導入されつつあるようです。

 研究生活においては、現地での計測や基礎水理実験を実際に行うことにより、大小スケールの実現象をよく見ること、自分で手を動かして考えること、他分野の研究にもアンテナを張ることなどが大事であるとされています。また人生においては、何事も好奇心をもっていろんなことに挑戦すること、若いうちは体を鍛えておくこと、これらの2点が重要であり、また本をたくさん読むことも人生を豊かにするため、乱読をお勧めされています。

 藤田先生のお言葉を胸に刻み、これからも頑張っていきたいと思います。

5.

 土木学会会長は、

「皆で力を合わせて何かを成し遂げようとするときにはビッグピクチャーは必須」

 と考えておられる。一方で現在の公共事業に関する長期計画には投資額など具体性に欠け、夢が無く寂しいとも感じておられるようだ。その通りだと思う。
 この意見を通じて私が土木について日ごろ感じていることを以下に述べてみたいと思う。

 今は令和3年。高度経済成長期に見られるイケイケドンドンな世の中では無い。少子高齢化が進行し、社会保障費が増大する日本において、公共投資が爆上がりするわけがない。当然、社会からは選択と集中による効果的かつ効率的な投資が求められる。また「新しいモノづくり」より「今あるものを大事に・賢く使っていこう」という時代だ。

 若者にとって、どう考えても土木に夢を描きにくい時代だと思う。YouTuberがなりたい職業の上位を賑わす時代だ。多種多様な職業を選択できる時代に、若者のピントが「土木」に合っているとは思えない。かくいう私も恥ずかしながら土木に夢を見て、この業界に飛び込んだわけでもない(たまたまである)。

 ここまで言うと、そんなお前は何故土木業界に居続けるのだ!と思われるかもしれない。だがしかし!である。私自身土木を職業に選んで早11年とちょっと。その中で土木の素晴らしさ・重要性は身をもって体験している。仲間と力を合わせて目標に突き進むことでしか得られない達成感が確実にある。天職とは言わないが、土木業界を選んで良かったと今では強く感じている。おそらく土木に長く携わる技術者は皆そう思っているのではないか。

 こんな魅力ある「土木」をどうにかして色んな人に伝えていきたい。土木業界を今後も発展させていくためのアクションはどうしたら良いのか。難しい課題だが、土木学会の若手PU小委員会を通じて微力ながらも土木の魅力を伝えていけたらと考えている。

 最後はトーンダウンしたが、途中で眠くなってきたのでご容赦下さい。

6.

 谷口会長の掲げるビッグピクチャーとは、

「多くの人々が信頼して共有し得る全体最適の将来見通しや全体俯瞰図」

とあります。
 私は建設コンサルタントとして道路設計に従事しているので、自分の仕事を通して見たビックピクチャーについて考えてみました。

 近年の道路整備においては、「維持管理」がキーワードとなってきていることを考えると、道路設計において、見違えるような新しい「未来像」を描くのは難しいように思いました。
 しかし、近年毎年のように発生する自然災害によって、「防災」の意識は大きく変わりました。
 見違えるような新しい景色を想像するのは難しいですが、壊れないインフラがきちんと機能し続けることで、災害が起きても極力「変わらない生活を送れる街」、というのはひとつ私の思う理想像であります。

 上記は私いち個人の想いであり、職業や年齢、住む場所などによって、国民ひとりひとりが思う将来の理想像は様々な形があると思います。
 その多様な理想像を集約し、共通の絵を掲げること、そこに谷口会長のおっしゃる、

「各人の絵、思いを持ち寄って小異を捨て大きな力を発揮するようにしていくプロセスを大切に議論し、共通の絵、旗を掲げること」

が相当するのかなと、理解しました。

 また、私としてはこの土木学会若手パワーアップ小委員会にて、他分野の若手技術者および学生の方々と接する機会がありますので、そこでみなさんの想いを聞くこと、発信していくことが、「ビッグピクチャーを描く」中でできることと感じております。
 日ごろの業務と、このような小委員会での活動をとおして、刺激を受けながらビッグピクチャーに対する理解を深めてきたいと思います。

土木学会誌を読んでみたい方は・・・

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。土木学会誌は、土木学会員に毎月送付される月刊誌で、この他にも毎月、業界のナウいトピックスが盛りだくさん、情報満載の雑誌になっております。ご興味のある方は、ぜひ土木学会にご入会下さいね!

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それではまた!

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