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先輩の下駄箱(4首目)

友と組み あこがれの君の 下駄箱に 文をと近づき 先客見つけ


高校生の淡い恋心。仲良しの友と同じ先輩を好きになり、ふたりで目立たぬように、部活の練習をのぞき、活躍する試合を応援し、手紙を書き。ありったけの勇気を振り絞って、その手紙を先輩の下駄箱に入れようと。恋というよりも、そのスリル感も全部ひっくるめて娯楽、楽しい青春の一コマだったのだろう。

放課後の誰もいない静かな玄関、1学年上の下駄箱の列に忍び足で近づいていく。あ行だから、一番上の一番右の箱。そこにはなんと、既に別の封筒が。だめ、いけない、わかっていても見てしまった裏の名前。まさか。よりによってあの先輩女子?私も友も非常に苦手としていた、きっつーいおっかなーいあの先輩女子が、私たちと同じかの君を慕っていらしたとは。

その後の恋の行方、先輩女子、友、私の3人、誰ひとりとして成就しなかったことだけははっきり覚えている。

あの時、差出人の名前をこっそり見てしまったことを申し訳なく思いつつ、怖いと思い込んでいた先輩女子も、実は可愛いらしい乙女だったのかもしれないなぁと、ふと懐かしく。かくいう自分も、「可愛らしい乙女」とはかけ離れておりました。30年以上も前の、今は完全に昔の話。