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普通にも特別にもなれないなんて
だったら一体、私は何者なんだろう。
いわゆる「普通」。
普通の家庭に生まれて、普通に学校に行って、普通に大学に進学して、普通に就職して、普通に20代のうちに結婚して、普通に子供を生んで、普通に暮らす。普通の幸せ。
それが「普通」なのだとしたら私は普通を知らない。私だけじゃない。きっと多くの人が、何かしらの普通から外れて生きている。と願いながら私は今日も生きている。
いわゆる「特別」。
ちょっと人とは違っていて、それは障害でなく個性や能力で、今は会社に属するより個人の時代。いわゆる「普通」には当てはまらないけど、それが心地いいし周りには「普通じゃない」仲間もいる。特別な幸せ。
そういや人とは違うことが認められつつある社会になってきた。「個の時代」とか「好きを仕事に」とかはもう聞き飽きてべっとりと耳に染み付いている。令和って、誰もが「普通」か「特別」を選べる時代だと思っていた。
私は今年のはじめに会社をやめた。この話でいうところの「普通」をやめたのだ。「普通」に当てはまらなかったのであれば、自分は「特別」なのかもしれないとどこかで思っていた。いや、思わなければやってらんなかったと言ってもいい。だって会社やめちゃったわけだし。
でも現実はちがった。そこには、どちらにもなれない私が待ちぶせしていた。たまげた。私の目の前には、フカフカのベッドと、買いたてのChromebookと、1年ほど生きていけそうなくらいの貯金だけがあって、ただ会社をやめるだけで「特別」のラベルをいただける世界線には生きていなかった。
「特別」どこ??「特別」よ、私のこと見えてる??私、レールから外れたよ??おーーい、私、ここにいるよ???何にも返答はなかった。
てか「特別」ってなんだっけと思った。
私は3人きょうだいの長女として生まれて、性自認は女性で異性愛者、血液型はO型である。親が少し立派な医者らしいのでそこそこお金のある家で育った。そして母のこたつのような愛と、冷戦のような家庭環境下で思春期を過ごした。親は小学校のときに別居した。
中高時代を小さな地元のちょっとした有名人で過ごして、ビリギャルみたいな気合で挑んだ受験は無事に成功した。人生ちょろいと思った。上京と大学進学で悪化した摂食障害は地獄を見たと思ったけど、去年もう1度地獄を見ることになった。双極性障害だった。
結婚で名字が変わって竹口になった訳だけど、旦那とはほとんど会わない生活をしている。仲が悪いわけじゃない。生きたい場所が異なるのだ。結婚して丸3年たつけど子供はいない。
これが雑すぎるくらい雑にまとめた私の略歴。私以上でも私以下でもなくて、これが私。
「普通」でも「特別」でもなくて、私は私として生きてきて、これからもこの延長線上をぬるぬると歩いていくんだと思う。
そもそも「普通」や「特別」は、外から人を理解するためのただの型でしかなくて、私が背負って生きていかなければいけないものでもない。そして自ら型に当て込まれにいかなくてもいい。
更に言えば、「普通」の対義語は「特別」ではない場合もある。「異常」だったり「希少」だったりもする。もっと言えばこの世は「普通」と「それ以外」が存在する世界でもない。無数の個体が存在していて、それぞれがそれぞれの人生を歩んでいる。
私は私。とは言ってもその不確かさに耐えられなくなって、型にハマりたくなるのが人間だから面倒だったりする。
そして型にハマればハマったで、違和感だの窮屈だと言い出すから、ほんと人間ってめんどくさい。
何が言いたいんだコイツはと。そうだよね。
私はこの世に「普通」も「特別」も存在しないみたいだよっていう、残念で幸福なお知らせをするためにこれを書いている。自戒でもある。
あなたのせめてもの欲しかった「普通」は、「普通」ではなくて、夢を見て憧れた「特別」は、「特別」ではない。
世界が劇的に変わることなんてなくて、何かを突然得ることはなくて、絵に書いたサクセスストーリーには泥みたいな裏話があって、私たちは明日も今日の続きを生きていく。
残酷だけど、私って私のままらしい。
だから、誰かに一緒にいてほしくなる。
そのままでも案外すきよって、誰かに言われたくなるんだよ。そして叶うならそれはあなたであってほしい。
私は毎日を何気なく過ごせる人より、そうやって藻掻いて生きている人が、心底すきだな。麻痺して空笑いして涙も流せない大人にだけはなりたくない。
世知辛いけどさ、
明日もそれなりに生きていこうね。
💛💜
竹口和香(たけぐちわか)
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