禁断の果実は血の味がするのかもしれない【映画:ボーンズ アンド オール感想文】

もしも、自分の生まれ持った性質、欲求、衝動が、この世界のルールやモラル、常識からは逸脱した、決して許されることのない禁断のものだとしたら、それを抑えて、隠しながら生きていくことはできるのだろうか…

この映画を見て、そんなのはあり得ないと、完全に否定することができない自分がいた。
 
ジャンルとしては、青春ラブカニバリズムロードムービー。
何を言ってるか分からないかもしれないが、見ればきっとわかるはず。
 
人間に理性があるのは、本能のままに生きることを止めるため。
このスイッチが壊れた時に、人は禁忌を犯してしまう。
だが、生まれた時からこのスイッチが壊れていたらどうなってしまうのか。
 
主人公のマレンを始め、何人もの人喰いたちが出てくるが、人を喰べるという行為に至る前に、様々な犯罪を平然とやっている。倫理の外にいる人たちだ。
その誰しもが、狂気的であり、利己的、しかし、どこか魅力的でもある。
 
人喰いは臭いで分かるらしく、離れた場所からでも認識できるという能力付き。
また、スタンド使いのようにひかれあう。
このように、この映画を見てると、人喰いあるあるを知ることができるのも特徴的だ。
印象深かったあるあるは、初めての食人はベビーシッターになりがち。というもの。
 
物語が進むにつれて、ハッピーエンドには向かっていないように感じる。
なにげない日常のシーンが流れる方が、なぜかドキドキしてしまう。
マレンを始め、人喰いたち自身も、自分が破滅の道を進んでいるのを自覚してるのかもしれない。
それでも、抑えきれない衝動が歩むのをやめさせてくれないのだろう。
それは、欲というよりも病に近い。
 
人が人である以上、決して、人喰いを肯定することはできない。
だからこそ、本能に忠実で、人という鎖から解き離れた存在に惹かれてしまう。
破滅へと向かう人間は、儚く、刹那的で、そして、美しい。
 
そして、この作品の1番の教訓は、老若男女問わず、自分のことを名前、ましてや、あだ名で呼ぶやつは信用できないということ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――
●少しでもカニバリズムに興味がある人へのオススメ度:☆☆☆☆
●激ヤバおじさんを見たいという人へのオススメ度  :☆☆☆☆☆
●爽やか青春恋愛ものが好きな人へのオススメ度   :☆
――――――――――――――――――――――――――――――――――
#映画感想文
#ボーンズ アンド オール

この記事が参加している募集

#映画感想文

67,269件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?