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少年は「かわいそうな加害者」のためレイプに応じた

あらゆる意味で陰惨としか言いようがない報道が目に入ってきた。

児童レイプ。それも実母による男児へのレイプについて取り上げた朝日新聞の報道である。まずは記事の内容をご紹介しよう。直接的な描写があるので、苦手な方は注意してほしい。

少年によると、少年は母とのふたり暮らし。中学3年のころに、交際相手と別れた母が風呂に入ってくるようになった。

 体を洗ってくれ、性器を触ってきた。射精するまで、「ごめんね」と言いながら、手を動かしたという。

 そのうちに性交するようになった。部活のない水曜と日曜の夜が多い。母が酒を飲み始めるのが合図で、酔っ払って「お父さんに似ている」と言う。

(中略)

「日曜日に(母が)お酒飲んで襲われた。(今日は避けるために)いまから友達のトコ行きます」

 「お母さんとはその後、何回かSEXしてしまっています。精神不安に陥るって言われると断ることができなくて。お父さんに抱かれている気持ちになれると言われます」

 「今日はお母さんの仕事納めなんです。いま、お母さんは飲んでいます。今日もか……って思うと気分が重くなります」

 「これを最後にするからね、って毎回お母さんが言うんですが、全然ですよ。お母さんがかわいそうで断固断れない僕も悪いんですけどね」

 少年は友人宅に行くなどして、なんとか母を避けようとしたが、「さびしいと言って泣くので、かわいそうになって応じた」などと言い、後ろめたさを感じながら、母からの求めに応じていた。

母親からレイプされる中学生の児童。

ここまで既に十分陰鬱なのだが、本記事の真の意味での異常さはここから始まる。なんと被害児童からの電話相談を受けた女性相談員は、「話を聞く」だけで事態を放置し、いかなる関係機関への通告も行わなかったというのである。

児童相談所に連絡する方法があることも伝えたが、「よくないことをしているのはわかっている。でも被害に遭ったとは思っていない」と返事があったという。

 相談を受ける女性は「女性から受ける男子の被害は、本人が物理的には快楽を覚えることが多い。いけないことだとわかっていても、自分が被害者と思えず、むしろ共犯者だと思いがちだ。それに男の子は加害に転ずることも少なくない」と指摘する。

 長年、若者からの性についての相談にのってきて、様々な問題を熟知する。最も大事にしているのは、子どもたちの主体性だ。「私には話を聞くことしかできないが、吐き出すことで彼らが楽になるならと思って耳をかたむけている」

当たり前だが、これは児童福祉領域の支援職として到底あってはならない態度である。児童に対する保護者からの性的強要は重犯罪だ。母親からレイプされている中学生など、まともな支援者であれば警察、児童相談所、ワンストップ支援センターなどと即座に連携すべき案件である。

これは「常識的に考えてそうするべき」というレベルの話ではなく、児童福祉領域の支援者に課せられた法的義務でもある。「子供たちの主体性」を重視して児童レイプを見逃すなどというのは到底あり得ない。虐待者からの強い支配関係に置かれている児童に「主体性」など存在し得ないからだ。

こうした支援とも言えないネグレクトを肯定的文脈で報じる朝日新聞も異常としか言いようがない。そもそもこうしたケースを「男子高校生からの『性の悩み』相談」などという牧歌的なタイトルで報じること自体が非常識である。他の連載記事はどれも「性暴力」「性虐待」「性被害」といったタイトルで報じられているのに、なぜ女性加害者のケースだけは「性の悩み」になってしまうのか。「男性の性被害」が隠蔽される構造を、この記事自体が雄弁に物語っているとすら言える。

このように、本事件を取り巻くあらゆる人々が、母親の性虐待を暖かく許容し、被害者である男児への適切な支援を拒んでいる。性虐待の主犯はもちろん母親だが、女性相談員と朝日新聞は性虐待の共犯者以外の何物でもない。

なぜ、このような事態が発生してしまうのか。

第一には、女性相談員、女性記者の中に拭い難くあるミサンドリー男性蔑視がある。そもそもなぜ男子児童の性相談に女性相談員が乗っているのか。これが男女逆で、女子中学生の「性の悩み」を男性相談員が担当するという話であればそれが極めて不適切であることは誰にとっても理解できるだろう。専門の児童相談センターでさえこうなのだ。男という性、特に彼らのセクシュアリティは極めて基本的な部分から軽視され続けている。

第二に、これが本稿のテーマでもあるのだが、多くの人々は男性の性被害に特有の構造を全く認識していない、というのがある。

それは「支援者」や「有識者」であっても同様だ。彼女らは女性の性被害と同様のアプローチで男性の性被害についても扱おうとするが、こうしたアプローチは高確率で失敗に終わる。上記事のケースはまさにその典型だろう。

「男性の性被害」が「女性の性被害」と明確に違う点、

それは「かわいそう」という気持ちを武器に他者を支配する加害者の存在である。

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週に1-2回程度更新。主な執筆ジャンルはジェンダー、メンタルヘルス、異常者の生態、婚活、恋愛、オタクなど。

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