見出し画像

男性にとって恋愛とは就活である

男性問題の専門家であるワレン・ファレルによれば、平均的な男性が1人の女性とベットインするまでに必要なアプローチの回数は、およそ100回程度だと言われている。

つまり男性は100人もの女性に働きかけ、アプローチし、その過程で99人の女性から拒絶され、嫌悪され、キモがられ、その上でようやく1人の女性と関係を結ぶことができるのだ。

これは路上ナンパのような極端なアプローチにおける平均数ではない。

連絡先を聞く、食事に誘う、SNSでメッセージを送る、仕事のあと一杯やらないかと誘ってみる、そういった極めて一般的なアプローチにおいての話だ。それを100人に行い、ようやく1人とベットインできる。他の99人からはどこかのタイミングでNOを突き付けられる。

これが男性の恋愛だ。

1人の女性と関係を結ぶために、99人の女性から拒絶される。自由恋愛社会における男性の恋愛は、資本主義社会における就活とそっくりだ。

現在の日本の就活は、内定倍率があまりに高いことから何十社もの企業に同時にエントリーすることが当たり前になっている。就活生は「御社が第一志望です!」と愛と忠誠心を囁き、ESで面接で自分がいかに優れた人材かアピールする。その淘汰と選別をくぐり抜けたものだけが、勝者として企業と関係を結ぶことを許される。

これは、男性の恋愛とそっくりそのまま同じではないか。

そこには選抜と淘汰があるだけだ。愛など存在しない。いやむしろ、愛があればあるほど上手くいかなくなる。

就活に失敗する学生の典型的な行動様式をお教えしよう。彼らはまず「自分が絶対に働きたいと思う企業」を極少数(大抵1~5社)選択する。その企業に対する企業研究を綿密に済まし、その企業で働く上で必要なスキルを身に付けようと学生時代から努力する。

そしていざ本番の就活に臨み、あっけなく選考落ちして途方に暮れる。

当たり前だ。企業にとって、就活生はアプローチしてくる何百人のうちの1人に過ぎない。彼がどれほど強い熱意を抱いているかにそれほど関心はないし、それを吟味するためのリソースもない。求める人材像やその年度の採用計画と会わなければ、即座にお祈りする。それが就活なのだ。

男性にとって、恋愛は就活と全く同じだ。何十人もの対象に同時にエントリーし、「御社が第一志望です」と愛を囁き、選ばれやすくなるために容姿を整え、面接における模範解答を暗記する。

だから、男性にとっての恋愛は、つらい。

何回も、何回も、ひたすらアプローチして拒絶され、

またアプローチして、拒絶され、

時には拒絶されるだけではなく、嘲笑され、容姿や人格を否定され、

自尊心というものをズタボロにされながら、それでもアプローチを続ける。

しかも自分を拒絶してくるのは、自分が好意を抱いた人間なのだ。

好意を抱く人たちからここまで拒絶され続けると、ふつうは自尊心が損なわれる。何か自分には根本的に問題があるんじゃないか?人に愛される資格がない人間なんじゃないか?恋愛など夢見るのはおこがましいんじゃないか?自分は人間失格の存在なのではないか?そういう気持ちがリフレインのように湧き続け、いつしか恋愛という営み自体から撤退し始める。

これが典型的な男性の恋愛だ。極端な非モテに限定した話ではない。極めて多くの男性が、この拒絶と人格否定の機銃掃射を経験しており、だからこそ多くの男性は恋愛から「降り」始めている。

就活で心を病んだ経験がある人は、男女を問わず多いだろう。男性にとっての恋愛は就活なのだ。ひたすらに拒絶され、淘汰される。

だから女を口説くことは苦しいのだ。

一方で、女性にとって恋愛は、とても楽しい営みだ。

アプローチしてくる数多くの男たちを品定めし、志願者たちのスペックと情熱を秤にかける。何十人・何百人という異性から好意的かつ献身的なオファーを受け取り、豪華な食事やレジャーを無料で楽しみながら選考を続ける。

時には、塵芥のごとく存在する志願者たちの滑稽なふるまいについて、同性の友人たちと歓談に花を咲かす。LINEのスクショをグループラインで回覧し「こいつ本当にダメだよね」という話で笑い合う。

アプローチに失敗した男性の惨めさを嘲笑しながら、自分には価値があるという確信を日々深めていく。それも当然だ。なぜなら好意を向けてくる何十人もの崇拝者に囲まれ、日々アプローチを受け続けているからだ。

もちろん先日の記事で指摘したように、女性にとって男性とは「身長3メートルの肉食ゴリラ」である。

アプローチがうっとおしいと感じることもあるだろう、不安や恐怖や嫌悪感を抱くこともあるだろう、しかしそれでも、恋愛という営みにおいて、女性が圧倒的なイニシアチブを握っている事実は変わらない。

いわば、ワンマン社長の採用面接のようなものだ。状況をコントロールし、他人を支配する。そのための絶大な権力を彼女たちは握っている。それは性的魅力というリソースに裏付けられているものだ。

しかしなぜ、女性は「女を口説く苦しみ」を理解できないのだろうか。非モテ男性の悲痛な環境に思いを馳せ、理解を寄せて支援しろとまでは言わないが、せめて同情することはできないのだろうか。

ここで恋愛工学を過剰にインストールし過ぎた人々は

「女は全員サイコパスだから」

「女には共感能力がないから」

という答えに行き着きがちだが、筆者の見解はいささか違う。

以下の部分では「なぜ女性は女を口説く苦痛を理解できないのか」について、圧倒的な答え合わせを提供しよう。

ここから先は

2,321字
週に1-2回程度更新。主な執筆ジャンルはジェンダー、メンタルヘルス、異常者の生態、婚活、恋愛、オタクなど。

狂人note

¥1,000 / 月

月額購読マガジンです。コラムや評論が週1-2本更新されます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?