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「国民総オフパコ時代」がやってきた

新しい時代がやってきた。

そう、国民総オフパコ時代が幕を開けたのだ。

言っておくが、これは何も筆者がトチ狂ったわけではない。確たる根拠を踏まえた上での極めて穏当な主張である。

というのも、先日発表された2021年版の出生動向基本調査で実に驚くべきデータが発表されたからだ。なんとオフパコ経由で結婚した新婚夫婦の割合が、学生恋愛経由で結婚した新婚夫婦の割合とほぼ拮抗してしまったのだ。

引用:第16回「出生動向基本調査」図5-3

2018年7月~2021年6月に結婚した夫婦(2021b)のうち「ネット上の出会い」を切っ掛けとしたものは全体の13.6%。これは「学校での出会い」の14.1%に迫る数字であり、逆転は時間の問題と言えるだろう。

さらにグラフにある通り、オフパコ婚は猛烈な勢いで増加している。前回調査時(2015年)はオフパコ婚はわずか全体の1.0%だったが、それがたった6年で13.6%と10倍以上に膨張しているのだ。もちろんコロナによるステイホームの影響もあるだろうが、コロナ禍と被っていない2015年7月~2018年6月(2021a)でさえオフパコ婚は全体の6.0%と急増加している。コロナ禍が明けたところでこのトレンドが後退することはないだろう。

男女交際がお見合いから自由恋愛に軸足を移して以来、恋愛のメインストリームは「学校」と「職場」だった。オフパコはあくまでも日陰者であり、ネットを通じた出会いには長年マイナスイメージがつきまとい続けてきた。

今回の出生動向基本調査は、そのイメージが若年層の間で急激に変化していることを示すものと言える。学校恋愛や職場恋愛は鳴りを潜め、オフパコが恋愛シーンの中心に躍り出つつある。オフパコは今やメインストリームであり、つまり、国民総オフパコ時代が幕を開けたと言っても過言ではないのだ。

新時代の幕開けである。しかし、喜んでばかりもいられない。

出生動向基本調査をつぶさに分析すると、「国民総オフパコ時代」には多くの暗い側面があることもまた見えてくる。

本稿は「国民総オフパコ時代」の光と影について、オフパコ文化の第一人者でありオフパコ・エヴァンジェリストでもある筆者が独自の視点から綴っていく。


国民総オフパコ時代の光と影

恋愛の主戦場が「リアル」から「ネット」へと変遷したことは、ある意味で従来型の恋愛に適応できなかった層に福音をもたらしていると言えるだろう。リアル社会ベースの恋愛文化に適応できなかった層が、新たに恋愛市場に参与しつつあることが多くの面で観測されている。

たとえばZ世代のアイドルとも言えるストリーマーや配信者は、旧世代から見ると「陰キャ」としか言いようがない人物であることが極めて多い。彼らが1970年代に生まれていたらとても今日のような人気を集めることは不可能だっただろう。

メディアの中心がテレビや雑誌にあった時代は、人付き合いができないパフォーマーにチャンスは与えられなかった。しかしネット社会の到来により、自宅から一歩も出ることなくスターに昇り詰めることが可能になった。ネット社会で存在感を示し人間関係を築くのはリアル社会とは一風違った能力が求められる。良し悪しではなく、環境が変化したことで適応的な資質もまた変化したわけだ。

つまりある意味で、「陰キャ」であっても人間関係を築ける時代が到来したと言える。ネット恋愛でもそれは同じことだろう。身なりを飾り立てることに秀でていなくても、対面での人付き合いが得意じゃなくても、SNSなりマッチングアプリなりのネットコミュニティで人間関係を築けるなら恋愛にコミットすることが可能になったわけだ。

国民総オフパコ時代の「光」の側面はここに集約される。環境が変化し、リアルのオルタナティブ代案としてのネットが提示されたことで、人々の交際関係はより多様性に満ちたものになった。

自宅から一歩も出れないひきこもりでも、アクセス性が悪い地方在住者でも、それほど大きなハンディキャップを課されずに他者と交際を持てるようになった。これはテクノロジーがもたらした偉大な進歩と言うべきだろう。ネットの普及によって、人々はより自由に、より多様に、より身近にコミュニケーションし合うようになったのだ。

しかし、光があれば必ず闇もある。あらゆる面でプラスしか生み出さない変化というものは存在しない。国民総オフパコ時代の闇は、ネット社会の利点である「自由」と「アクセシビリティ」が生み出したと言える。それは

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週に1-2回程度更新。主な執筆ジャンルはジェンダー、メンタルヘルス、異常者の生態、婚活、恋愛、オタクなど。

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