日本では賞賛されるウィル・スミスの平手打ちは、なぜ米国社会では批判されるのか
先日行われた第94回アカデミー賞授賞式において、超人気俳優のウィル・スミスが司会を務めたクリス・ロックを平手打ちするというハプニングがあった。
平手打ちの原因はクリス・ロックがウィルの妻ジェイダの脱毛症をジョークのネタにしたことで、「『G.I.ジェーン』の続編でジェイダを見るのを楽しみにしている」という発言がウィル・スミスの逆鱗に触れてしまったらしい。ちなみに「G.I.ジェーン」とは米海軍の特殊部隊に挑戦する女性兵士の活躍を描いた作品で、ヒロインは丸坊主姿を披露している。
さて、数億人に生中継された暴行事件は米セレブリティ界を超えたニュースとなったが、どちらかと言うと日本では平手打ちを放ったウィル・スミスを擁護する風潮が強かったように思う。
事件当日のはてなブックマークを見てみると。「クリス・ロックは永久追放されてほしい」「妻を侮辱されたのだから当然」「ビンタ一発で済ませたのはウィル・スミスの優しさ」などといったコメントが支持を集めている。
これははてブ以外のプラットフォームにおいてもほぼ同等で、「女性の脱毛症をネタにするなんて最低」「殴られても仕方ない」「ウィル・スミスはむしろよくやった」といった声が日本の言論空間では圧倒的に大きかったようだ。
しかし意外に思われるかもしれないが、アメリカ国内ではウィル・スミスに対する批判色が強い。オスカーの受賞を剥奪するべきと考える人まで相当数いるようで、受賞式で行われた暴行に対し日本とは比べ物にならないほど強い非難の声が寄せられている。
これだけ見ると「合衆国は文明的だ」と思ってしまうかもしれないが、実際はもう少し複雑な背景がある。公の場における暴行が米国社会で日本以上にタブー視されているというわけでは決してない。現に米国の暴行発生件数は日本の遥か上を行っている。ここで問題視されているのは「セレブリティの風刺」という米国の伝統芸をどう見るかという問題なのだ。
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