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なぜいま歌舞伎町で「立ちんぼ」女子が大量発生しているのか

Colaboに代表される「若年女性支援」界隈が悪目立ちした影響もあるのだろう。ここ1,2ヶ月で急激に若年セックスワーカーに対する関心が高まっているように思う。

特に新宿大久保公園周辺の「立ちんぼ」はメディアの恰好のネタになってしまったようだ。週刊誌やWEBメディアなどに加え、迷惑系インフルエンサーのような魑魅魍魎までもが彼女らに群がる状況が生まれてしまっている。

確かに若い日本人女性が「立ちんぼ」として街頭に立つというのは衝撃的な光景だ。もちろん街頭に立つセックスワーカーが今まで皆無だったわけではないのだが、大抵は出稼ぎ外国人やまともな店舗では働けなさそうな高齢女性であり、大久保公園周辺で見られるような若い普通の女性が街頭に立つということは絶無に近かった。

大久保公園の相場は本番込みで1万円から2万円とべらぼうに安く、未成年売春が頻発しているという報道もあり、体感治安は著しく低下したと言わざるを得ないだろう。「日本はどうなってしまったのか」「若い女性はそんなに困窮しているのか」と衝撃を受けた方も多いに違いない。ちなみにこうした体感治安の低下はColaboのような「若年女性支援」事業への公金注入や「困難女性支援法」のような不可解な立法を正当化されるために用いられている面もある

増加する若い「立ちんぼ」女子たち。

彼女らの存在は日本の若年女性の困窮を意味するものなのだろうか。

意外に思われるかもしれないが、答えはハッキリと「NO」である。

いま増えているのは「困窮する若い女性」ではなく「新しい形のセックスワーカー」だ。大久保公園周辺の「立ちんぼ」増加はあくまで売春産業の変化に伴う一時的な副産物に過ぎない。それはここ10年の売春産業の技術的、社会的、経済的変化を知悉していれば容易に理解できることだ。

本稿では2023年最新版のセックスワーカー事情と、どのようなメカニズムで現在の状況が形成されたのかについて綴っていく。


「困窮する若い女性」はそもそも増えているのか

とにかく若年セックスワーカーは「女性の経済的困窮」という切り口で語られがちだ。「貧困によってやむなく売春を選ぶ少女たち」というお涙頂戴のストーリーは自称支援団体が寄付や公金を募る上でも都合が良いのだろう。

しかし「食べるにも困るかわいそうな少女たち」というのは全くの虚像に過ぎない。継続的な食料支援を行っている団体の活動について調べればすぐにわかるが、炊き出しをはじめとする食料支援に並ぶのはほとんどが中高年男性だ。若い女性は最も数が少ない層であり、明け透けに言えば「最も飢餓から遠い」のが若年女性である。

統計的にも若い女性の経済苦は少ない。厚生労働省による「令和元年中における自殺の状況」によれば経済問題を理由に自殺を選ぶ人間の88%が男性だ。特に40代から60代の中高年男性に集中している。

女性の自殺理由は男女問題や家庭問題などの人間関係に根差したものであることが多く、若い女性ではその傾向がさらに顕著になる。経済問題を理由に自殺する20代は男性303人に対し女性はたった38人だ。経済問題が若い女性の中心的課題とは程遠いことはこれら統計からも明らかだろう。

ちなみにこの傾向はコロナ以降も継続しており、2021年の統計でも経済問題で困窮する女性の数は増えていない。メディアで報じられた女性自殺者の増加は年金生活者や主婦などの無職層を中心とした現象であり、「若い女性が経済問題を理由に困窮する」といった現象はコロナ以降も全く生じていないのだ。詳しくは以下の記事を参照してほしい。

若年セックスワーカーの問題を考える上で「経済的に困窮する若い女性」という切り口から考えることは全くの的外れであるという基本をまず抑えておいてほしい。新宿大久保公園に「立ちんぼ」が急増した理由も貧困や経済的困窮とは無関係だ。

それではなぜ、急増する日本人「立ちんぼ」という衝撃的な光景が生まれているのだろうか。


「売春産業の構造変化」が立ちんぼ公園を生んだ

若い女性はお金に困ってなどいない。食べるためにやむなく売春を選ぶ若年女性などファンタジーに等しい。それではなぜ、格安で身を売る「立ちんぼ」という存在が急増しているのか。この謎を解き明かすには売春産業の構造変化について知る必要がある。

基本的に日本の売春産業は、2015年頃まではデリバリーヘルスやソープランドなどの「性風俗店」を中心に形成されていた。特に2000年代は石原都政における歌舞伎町浄化や暴力団取り締まり強化の影響などもあり、反社会的勢力によって占められていた性風俗産業がどんどん一般に開放されていった時代だ。

経営センスのないヤクザから一般市民に市場が開放されたことにより、性風俗店の「女性の働きやすさ」は各段に向上した。クリーンなイメージが広まったことも相まって多くの女性がデリヘルに流れ込み、皮肉にも日本における性風俗産業の黄金期がこの時期到来したのだ。2005年から2015年あたりは日本の「風俗店」全盛期と言って良いだろう。

もちろんこの時代にも風俗店に属さず独自に客を取るフリーランスの娼婦は存在した。多くは「ハッピーメール」「ワクワクメール」などの出会い系サイトや、一時期乱立した出会いカフェなどを根拠地とし、自分ひとりで客を取りセックスワーカーとして活動していた。しかし、彼女たちはあくまでも少数派だったと言って良い。

その理由は「出会い系サイトを通じて知らない男性と出会う」行動がセックスワーカーからも危険でリスクの高いものだと見做されていたからだ。2000年代の出会い系サイト勃興期はメディア全体が「出会い系の闇」を盛んに報じていたのだから無理もない。サイト経由で見知らぬ男を客に取るより手取りは減るが店舗に属して安心したい。それが2000年代から2015年あたりまでのセックスワーカーたちの基本姿勢であり、だからこそこの時代は「立ちんぼ」のようなフリーの売春スタイルも極めて少数だった。

この流れが変わったのが2012年だ。あるサービスが電撃的に登場したことが売春産業の構造を根底から覆してしまった。そう、皆さんもご存じ、

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週に1-2回程度更新。主な執筆ジャンルはジェンダー、メンタルヘルス、異常者の生態、婚活、恋愛、オタクなど。

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