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若者の意識は「反差別・反フェミニズム」

大晦日。世のご家庭が正月のおせち料理を仕込み、年越しそばの準備をする日。そんな日に地獄のような記事がインターネットの一隅を騒がしていた。「若い男性ほど『フェミニストが嫌い』、なぜ? 識者の見方は」と題された朝日新聞の報道だ。

若い男性ほど「女性活躍推進施策」を支持せず、「フェミニストが嫌い」――。電通総研が11月、そんな調査結果を発表した。なぜなのだろうか。識者らに尋ねた。

(中略)

女性に対する考え方を4段階で尋ねたところ、「フェミニストが嫌いだ」について「とてもそう思う」「そう思う」を選んだ18~30歳は約43%。31~50歳が約39%、51~70歳が約32%と、若い世代ほど高かった。

「女性活躍を推進するような施策を支持する」は18~30歳が約63%、31~50歳約62%に対し、51~70歳が約79%と中高年が若い世代を大きく上回る。「最近は男性のほうが女性より生きづらくなっていると思う」は各年代とも半数が賛同した。

韓国の調査でも同じ傾向がみられた。政府系シンクタンク「女性政策研究院」が2019年、男性3千人を対象に行った意識調査によると、伝統的な「男らしさ」を支持する男性は50代が約55%、20代が約29%と、若い世代ほど少ない。一方で、フェミニズムに反対する男性は50代の約10%に比べ、20代は約51%と顕著に多い。

同研究院の報告書は「30代以下の世代は、厳しい就職難で男女問わず、正社員のいすを取り合っている。さらに男性には約2年間の兵役という不利な条件が課されている。ネット上で反フェミニズムの言説に触れる機会も多い。こうした状況が、フェミニズムへの反感につながっている」としている。

(引用:若い男性ほど「フェミニストが嫌い」、なぜ? 識者の見方は

上記事によれば、若い男性ほど「女性活躍推進施策」を支持せず、「フェミニストが嫌い」な傾向があるのだという。記事内で「識者」として分析を寄せた一橋大学の佐藤文香教授(社会学、ジェンダー研究専攻)によれば「一部の男子学生はジェンダー平等に強い反発を抱いている」らしく、その背景を「従来の男らしさの要件であった経済力と女性の獲得にハードルを感じ」ているからと分析している。

「貧乏人の非モテ男が反フェミニズムに走る」というのはここ数年で急速に台頭しつつあるジェンダー学の新ドグマだが、一橋大学の社会学教授であってもその見解に相違はないらしい。ジェンダー学という学問の精緻さに改めて舌を巻く思いだ。

さて、それにしても「若者がジェンダー平等に反発を抱いている」という朝日新聞の観測は正しいのだろうか。確かに「反フェミニズム」を掲げる若年層の声は少しずつ高まりを見せつつある。それらは「ジェンダー平等に対する反感」ゆえなのだろうか。突如として日本の若者は性差別主義者になってしまったのだろうか。

もちろん、そんなわけがない。ジェンダー平等への意識は若者を中心に高まり続けている。朝日新聞に代表されるようなリベラル知識人には理解できないだろうが、日本の若者はジェンダー平等の意識を高めたからこそフェミニズムに反発しているのだ。

本稿では現代の若年層の主要な世代感覚となりつつある「反差別・反フェミニズム」のロジックについて綴っていく。


「ジェンダー平等」を支持する若者たち。

「一部の男子学生はジェンダー平等に強い反発を抱いている」という一橋大学の佐藤文香教授の見解に見るように、リベラル知識人はフェミニズムに対する若者の敵対心を「ジェンダー平等への反発」と解釈する傾向がある

しかし実際のところ、それは事実なのだろうか。世代別のジェンダー意識については内閣府の男女共同参画センターが継続的に調査を続けている。まずはそちらデータを見てみよう。

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週に1-2回程度更新。主な執筆ジャンルはジェンダー、メンタルヘルス、異常者の生態、婚活、恋愛、オタクなど。

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