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なぜ前澤友作氏は尊敬されないのか

ZOZO TOWN創業者の前澤友作氏がついに宇宙旅行を完遂した。

アパレル業界に疎い方はご存じないかもしれないが、ZOZO TOWNは日本随一のファッション通販サイトだ。購買ユーザーは年間800万人超。商品取扱高は3000億円超。これがどれほどの数字かと言うと、かの「ヤフオク」の流通総額が8000億円ほどと言えば伝わるだろうか。アパレル単体でこの数字を出すZOZO TOWNは名実ともにEC業界の巨人と言えるだろう。

そんなメガベンチャーを築いた前澤友作氏は、当然のことながら超資産家でもある。「フォーブス」によれば氏の総資産額はおよそ2100億円超。日本の富裕層ランキングのおよそ第30位に位置する。といってもこのランキングの上位者は老人ばかりだ。50歳以下だけで集計しなおすと前澤氏の順位は堂々の第2位。「メルカリ」創業者の山田進太郎氏に次ぐ位置となる。日本において最も成功した起業家の筆頭と言っても過言ではない。

さて、そんな前澤友作氏だが、前述のとおりこの12月に日本初の私費による宇宙旅行を達成した。国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗するのは全世界を含め民間人では初の試みで、過去数十年間に渡って国家主導であった宇宙開拓が民間の手に移りつつあることを強く印象付けた。実業家としても、またプライベートの活動においても、現代日本を代表する「偉人」と言えるだろう。

…のはずなのだが、どうだろうか。読者のみなさんは前澤友作氏を「偉人」であると感じるだろうか。おそらくはそう感じないはずだ。「成金のイキリ陰キャ」。前澤友作氏に対する読者の最大公約数的な感想は、せいぜいそんなところではないだろうか。

もちろんそれは正確な論評ではない。数億、十数億程度の小金を築いた「成金」と前澤氏のスケールは違う。彼は日本を代表するメガベンチャーをゼロから築き上げた男だ。「成金」ではなく「時代の変革者」とでも呼ぶのが本来ならば正しい。それこそスティーブ・ジョブズのように。

しかし前澤氏は実績に見合う賞賛をほとんど受け取れてはいない。バンドマンとしての前歴もある前澤氏はそれこそ喉から手が出るほどに賞賛を欲しているはずだが、実績に見合う等身大の賛美さえ受け取れていないのが現状なのだ。

なぜ前澤友作はここまで尊敬されないのだろう。なぜ彼は軽んじられてしまうのだろうか。その原因は、彼が築き上げ、そしてばら撒いてきた「お金」にある。本稿では前澤友作氏を題材に「お金の持つ毒」についてお話していこう。


盛り上がらない宇宙旅行企画

12月8日。前澤氏はロシアの発射場から宇宙に旅立った。

氏の搭乗するロケットの打ち上げはYouTube liveでも生放送されたが、筆者が驚いたのはその放映の「盛り上がりのなさ」だ。再生数が250万回とプロジェクト規模の割に少ないのもそうだが、オリンピック的な「偉業を成し遂げる日本人を応援する」ムードがほとんど見られなかったのだ。

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週に1-2回程度更新。主な執筆ジャンルはジェンダー、メンタルヘルス、異常者の生態、婚活、恋愛、オタクなど。

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