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アスペでもわかる「いい雰囲気」の見分け方

発達障碍を持つ男性、特に自閉症スペクトラム(ASD)の傾向がある男性当事者は「恋愛」にうまく適応できないことが知られている。

これはインターネット上の噂話というレベルではなく、複数の精神医学的研究でも裏付けられている傾向のようだ。例えば2017年の研究によると、恋人がいるASD男性は全体の16.1%に過ぎず、健常者よりも大幅に低比率であることが確認されている。(ちなみにASD女性は46.2%に恋人がおり健常者とあまり変わらなかった)。

ASD男性が「恋愛」に適応できない理由は、「恋愛」という営みが非言語的コミュニケーションの塊だからという点に尽きるだろう。「空気を読む能力」や「非言語的シグナルを読み取る能力」が恋愛では常に求められるが、ASD男性にとってそれほど難しいこともない。このハードルによって多くのASD男性が恋愛というフィールドから脱落してしまう。

「恋愛」の典型的な初期段階をざっくりとしたフローチャートに起こしてみると、基本的にはこのようになる。

女性と知り合う

女性をデートに誘う

女性をホテルに誘う(or告白する)

工程としてこれだけにも関わらず、しかしシンプル極まりない「女性を誘う」ことがASD男性にとっては何よりも難しいタスクになる。今は「誘っていい雰囲気」なのか、それとも「誘ってはいけない雰囲気」なのか、それらはほぼ全て表情や仕草などの非言語的シグナルによって示されるわけだが、そのシグナルを読み取れない障碍特性を持つのが自閉症スペクトラム(ASD)の当事者なのだ。

「女性をデートに誘う」、カジュアルに言えば「サシ飲みに誘う」フェーズはまだマシかもしれない。飲みに誘って断られてもそこまで人間関係は気まずくならいし、社会通念上非難されることもない。

しかし「女性をホテルに誘う」「女性に告白する」フェーズはタイミングを読み違えると致命的な結果を招いてしまう。人間関係はもちろん破綻するし、ことによってはセクハラとして社会的生命まで失ってしまうかもしれない。だからこそ多くのASD男性がこのフェーズで足踏みし、関係性を前に進められずにいる。

そこで本稿は「アスペにもわかる『いい雰囲気』の見分け方」と題して、「女性をホテルに誘っても(≒告白しても)許される雰囲気」をASD男性が観測する方法について解説していく。


「いい雰囲気」を定量化する

自閉症スペクトラム(ASD)傾向のある男性に限らず、「口説いていい雰囲気」の読み取りについては世の男性の多くが苦労しているようだ。だからこそ「女性のOKサインはこれ!」的な恋愛テクニック集が世には氾濫しているし、ときには「ジーンズをはいた女はヤレる!」のような"迷言"が飛び出すこともある。

しかし、はっきり言ってしまうと「女性のOKサインはこれ!」的な恋愛テクニック集はASD傾向のある男性にとってはあまり役に立たない。というのも、

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週に1-2回程度更新。主な執筆ジャンルはジェンダー、メンタルヘルス、異常者の生態、婚活、恋愛、オタクなど。

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