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男の自己責任論と女の運命論

先日、「男の人ってなんで占い嫌いなんだろ」という記事がちょっとしたバズを引き起こしていた。素朴だが興味深い疑問について率直に綴られており、記事を読んで筆者もついつい考え込んでしまった。

私はアラサーの女だが、占いを読むのは普通に好きだ。課金して占い師に相談しに行くほどではないが、石井ゆかりさんやしいたけ占いの自分の星座欄を読んだりする程度には星占いを信じている。どっちも無料だ。本気で信じているというよりも、憂鬱な月曜に「今週は人間関係のごたごたが落ち着くかも」と言われると「あ、今悩んでることももうすぐちょっとマシになるかも、がんばろ」と思えて元気が出るから。

(中略)

しかし彼氏は私がそんな文章を読んでることもドン引きらしい。「彼女が細木数子のファンだって知ったらドン引きすることない!?占いほんと気持ち悪い、エビデンスもないのに」と言う。そしてヨッピーと同じようなことを言っていた。

自分だって初詣行ったりするのに…と思いつつ、男の人のこの占いアレルギーって何なんだろう? と不思議に思った。私はたぶんアレルギーになるほど占いの負の側面を見てないのだ。何か原体験でもあるのかな?

引用:男の人ってなんで占い嫌いなんだろ

確かに、「占い」に対する男女の温度差は著しいものがある。

実は占い産業は市場規模1兆円にも及ぶ超巨大産業であり、電話占いだけで市場規模が数百億円あると言われている。しかし顧客はほとんど女性に偏っており、男性が占い産業に関与する機会は極めて乏しい。女性向けメディアでは頻繁に人気の占い師が特集されていたりもするのだが、男性向けメディアで占いについて特集される機会はほぼ絶無だ。

博報堂の消費者調査「生活定点」のデータ見ても、「占い・おみくじを信じる」と答える比率には男女で大きな開きがある。年度にもよるが、おおむね女性は男性の2倍以上の確率で占いやおみくじを信じているようだ。

引用:博報堂「生活定点」占い・おみくじを信じる

これだけ見ると「女性はスピリチュアルを信じやすい」と断じてしまいそうになる。しかし「生活定点」を深掘りすると興味深い事実がわかってくる。

実はスピリチュアルな分野でも、ジャンルによっては男女比はほぼ見られないのだ。たとえば「宗教を信じる」「超能力を信じる」という質問項目ではほとんど男女差が見られない

引用:博報堂「生活定点」宗教を信じる
引用:博報堂「生活定点」超能力を信じる

確かに考えてみれば世界の三大宗教は全て男性によって拓かれているし、超能力開発のようなオカルトも男性修行者によって主導されてきた部分が大きい。

つまり男性はスピリチュアリズム一般を忌避しているわけではなく、「占い」というジャンルに対してだけ特別に嫌悪感を抱いているようなのだ。

よく占いにハマる女性を揶揄して「非科学的」「エビデンスがない」などと言ったりするが、男性が占いを嫌う理由の核は科学でもエビデンスでもなさそうである。

それではなぜ、男性は数あるスピリチュアリズムの中で「占い」だけを選択的に嫌悪するのだろうか。「占い」が男性の感情を逆撫でする理由はどこにあるのだろうか。端的に言えば、「占い」という営みが男性の価値観、もっと言ってしまえば「人生観」と真っ向から対立するからなのだ。


男の能力主義と女の魅力主義

男性と女性には無数の違いがある。骨格から性器の形状から趣味嗜好までその差異は多岐にわたる。その中で最大の差異と言えば価値観の違いだろう。

たとえば男性にとって、

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週に1-2回程度更新。主な執筆ジャンルはジェンダー、メンタルヘルス、異常者の生態、婚活、恋愛、オタクなど。

狂人note

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