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なぜZ李という虚言癖のオッサンをネット民は本物のアウトローだと勘違いしてしまったのか?

みなさんはZ李というインフルエンサーをご存じだろうか。いわゆる「アウトロー系インフルエンサー」と呼ばれている方で、なんでもご本人の弁によると中卒で闇金に就職し、違法薬物の売買にも携わっていたことがあり、前科前歴もあるという、(本人の弁を信じるならば)平和で安全な現代日本においては相当にアウトローと呼べる経歴をお持ちのお方である。

しかしZ李は、単なる半グレ・アウトローではない。正義の心を持った熱血漢なのだ。本人の弁によるとその腕力と組織力は一般市民ではなく本当の悪漢にのみ向けられており、たとえば暴力ホストを制裁したり、バイク泥棒のねぐらを突き止めたりと、悪人を倒し市民を守る活動を日夜続けているのだという。青年漫画の中から飛び出てきたような正義のアウトロー。それがZ李なのだ。

……以上がZ李の自称する氏の背景だが、要約していて途中から真剣に頭が痛くなってきた。よくもまぁ2024年にもなってこんな設定のアウトロー芸人が一定の支持を集められるものである。

当たり前だが、正義のアウトローなど2024年の日本で存在しうるわけがない。暴対法施行後の警察行政は憲法違反を疑われるレベルで反社・半グレの検挙を続けており、「正義のヤクザが暴力で悪人を制裁!」的な昭和のヤンキー漫画のような展開はどうあがいても起こりようがないのだ。反社・半グレに対する警察の別件逮捕や微罪逮捕っぷりときたら、ああした輩が心底嫌いな筆者でさえ「これは正当なのか?」と疑ってしまうレベルである。

例えば2011年には、暴力団員複数名が「ゴルフ場でゴルフをプレイした」ことを理由に詐欺罪に問われ起訴されている。

これはゴルフ場が「暴力団お断り」の立て看板を出していたにも関わらず、暴力団側が暴力団ではないと偽ってゴルフをプレイしたことが詐欺罪にあたると認められたケースだ。判決は最高裁までもつれこみ複数のケースにそれぞれ異なる判決が下っているが、「ゴルフをしただけで詐欺罪で起訴」とは本当にそれが法の精神に叶っているのか、若干の戸惑いを覚えるのは筆者だけではないだろう。

ちなみにこうした法の弾力的適用は反社会的勢力のみならず極左系政治結社などにも適応されており、2004年には日本共産党の活動家が「マンションのポストにビラをポスティングした」として住居侵入罪で起訴されているし、2022年にも「ホテルに偽名で宿泊した」として中核派の活動家3名が有印私文書偽造で起訴されている。

バイトでチラシをポストにポスティングする、またホテルの宿泊名簿になんとなく違う名前を書くなど、我々一般人もごく普通にやる行動と言わざるを得ないが、国家サイドから「敵」と認定された側がこうした遊びをするととんでもないことになる。それが世界で最も平和で安全な日本という国家の一側面なのだ。

つまり何が言いたいかと言うと、闇金の勤務歴があり、違法薬物の売買に携わっていた前歴があり、しかも前科前歴まであり、ネット上で派手にそれを公言して違法な海外カジノを宣伝しているアウトロー系インフルエンサーなど、ほんの少しでも法を犯せば即座に逮捕される、ということである。

Z李の言う「悪人を懲らしめる正義のアウトロー活動」など、日本国家では決して行えないのだ。少しでも脱法的な行為に及べばああしたアウトロー気取りは即座に逮捕される。さらに言えば氏の収入源はオンラインカジノの仲介ギャンブル予想オンラインサロンであり、十分な収益があることも推定できる。保身に回った小金持ちほど危険から遠い存在もない。ある意味でZ李とは、そこらへんをうろついてる野良猫以上に安全安心な存在である。

無論このくらいのことは筆者がわざわざ強調するまでもなく、いい歳した大人なら大半が理解していることだろう。正義のアウトローなど存在しない。Z李の言っていることは100%単なるフカシである。まともな社会人ならほぼ全員がそう理解している。にも関わらず、である。Z李のフカシを信じるひとは少なくないのだ。筆者の疑問、また本稿のテーマはここにある。

なぜこんな荒唐無稽な「正義のアウトロー」設定がネット民のおもちゃにならず長年存在し続けられたのか?

これは考えてみるとかなり不可思議な現象だ。

以下で詳しく解説していくが、Z李の喧伝する「正義のアウトロー活動」の詳細を見ると、あまりに荒唐無稽かつ細部がデタラメでとても高度に発展したネット社会を欺ける水準には達していない。

にも関わらず、Z李をファッション反社と見做す風潮はそこまで強いものではない。氏は90万近いTwitterフォロワーを抱え「裏社会に精通したアウトロー系インフルエンサー」として一定の畏怖を抱かれているように見える。

なぜZ李の嘘はバレなかったのか?

なぜZ李の自作自演にツッコミを入れる人はほぼ皆無なのか?

これにはひとつのハッキリとした理由がある。ある界隈でもZ李と同様の手口を用いて自身に対する告発を長年封じ込めたインフルエンサーの存在が知られており、嘘や自作自演をネット民に信じ込ませる一定の再現性のある手法が既に存在するのだ。

本稿ではZ李の自作自演の詳細な検証と、なぜそれが長年バレなかったのか?について考察していく。


Z李の自作自演を検証する

というわけで、まずはZ李の自称する「正義のアウトロー活動」がいかに疑わしく自作自演としか思えないかについて解説していこう。

個人的に自作臭が最も強かったのが、2年前に話題になった「Z李バイク盗難事件」である。Twitter上では大々的に話題になり、滝沢ガレソなどの大手インフルエンサーも積極的にその件を報じているので記憶されている読者も多いかもしれない。

簡単に経緯を説明すると、

Z李が「バイクが盗まれた」とTwitterで発信しはじめる(2022月7月8日)

犯人に懸賞金をかけ、情報提供を呼び掛ける

Z李がアウトロー人脈の力を使い犯人の特定に成功と宣伝(11月2日)

犯人宅とされる集合団地の高層階をZ李が多数の仲間と共に襲撃

ついに犯人を追い詰めるが、犯人には幼い娘がおり、娘に免じて制裁することも警察に突き出すこともZ李はしなかった…というオチがついて終了

という流れである。なんというか謎の人情譚で〆るあたりや、「アウトロー人脈の力で犯人特定!」という流れなど、あらゆるところから出来の悪いヤンキー漫画臭を感じてしまい筆者はこの時点でだいぶキツさを感じるのだが、細かい矛盾点を以下で見ていこう。


①バイク盗難犯の不可解な行動

まずは細かいところから。Z李は盗難されたバイクパーツを売るヤフオクのアカウントを特定し、そこから犯人特定が可能になったと自称しているのだが、どうみてもヤフオクの画像と犯人宅の画像が異なるのである。

特に問題となるのがこの画像だ。見てのとおり中型バイクのエンジンであり、廃屋の1階ような場所で撮影されている。

しかし犯人宅は上に引用したように、どうみても集合団地の高層階なのだ。なぜ犯人は廃屋でバイクを分解しておきながら、わざわざ団地高層階にシートや燃料タンクなど持ち運びやすいパーツのみを移動させ、そこから特定にうってつけの遠景を交えて写真を撮りヤフオクに投稿したのだろうか。

Z李の言によると犯人は団地の自宅の他に「バラシ場の廃屋」と「盗難車の保管場所」を持っていたということなのだが、それならばわざわざ保管場所からシートや燃料タンクなどの持ち運びやすいパーツのみを自宅に移動させ保管する必要などないはずである。

そもそも論として、エンジンと他のパーツで撮影場所が異なることからして不可解だ。バラシ場の廃屋でバイクを分解してそこでエンジンを撮影したなら、続けてシートなど他のパーツも撮影すればいい。

にも関わらずこの盗難犯は、わざわざシートなどの持ち運びやすいパーツのみを自宅に運び、特定しやすいベランダから周囲の遠景も交えて写真に撮りそれをヤフオクに投稿している。まったく意味がわからない。「不注意」というレベルの話ではない不合理な行動である。

しかし「Z李の自作自演」という補助線を挿入すると、全ての行動に合理性が出てくる。

Z李は「ヤフオクの画像から犯人を特定した」「犯人宅に踏み込んだら自分のバイクパーツを発見した」という物語を作りたかった。しかし中型バイクのエンジンやフレームはとても団地上層階に運び入れられる重さではない。というわけで仕方なくエンジンの撮影のみ団地外の廃屋で行い、「既にヤフオクで売られてしまった」という言い訳を付けて物語から排除する。そして持ち運びやすいパーツのみを「犯人の自宅」設定の団地に移動させ、それを「発見」して自分の捜査力や裏社会人脈が本物であると喧伝したわけだ。

そうとでも解釈しなければ、なぜ犯人が所有しているはずの「盗難車の保管場所」が全く活用されていないのか、なぜエンジンとタンクで撮影場所が異なるのか、合理的な説明をつけるのは難しいだろう。

「ヤフオクの画像から犯人を特定した」「犯人宅に踏み込んだら自分のバイクパーツを発見した」というシナリオから逆算して証拠らしきものを作るから、こうした不自然さが各部に現出してしまう。常習的な嘘つきの典型的な症状である。


②二転三転するZ李の供述

先述の通り、本件はZ李とその仲間らが犯人宅を特定して踏み込むも、そこには盗難犯の幼い娘がおり、娘の涙に感じ入ったことでZ李は私的制裁も警察への通報も取りやめるということで一件落着している。

正直な所このクサすぎる人情譚の時点で筆者などは苦笑い浮かべてしまうのだが、Z李のファンは「流石です!」「ボスやさしい」などと素直に感じ入っている向きも多く、ファンを選んだマーケティングの重要さを学ばせてくれる一件とは言えるかもしれない。

さて、「幼い娘の涙に免じて盗難犯を許してやった」エピソードだが、なんと最近になってZ李は主張を180度ひっくり返している。「Z李は警察に事情を話して犯人逮捕に協力した」という旧ソ連も真っ青な歴史改変がなされてしまったのだ。

正直な所このツイートを見たとき、筆者は電車の中で噴き出してしまった。たった2年前に自分で作った設定くらい覚えておいてほしいものである。嘘がバレそうになると新しい嘘をついて誤魔化す。常習的な虚言癖のあまりに典型的な行動だ。

さて、詳細な事実関係を確認するため、Z李がバイク盗難犯の住所に押し入ったと主張する2022年11月2日のZ李の言動を時系列順に見ていこう。

まず「犯人を特定した」というツイートが発信されたのが14時18分。

犯人宅に侵入しベランダからツイートしたのが16時52分

チンピラ風の男10名ほどで団地を取り囲み、犯人に対し「早く帰ってこい」などと脅迫する内容をツイートしたのが17時17分

「警察が集まってきた」とZ李がツイートしたのが18時27分

再び犯人宅に侵入し、室内で動画を撮影し投稿したのが20時1分

「犯人には娘がいたので勘弁してやった」という内容を投稿したのが22時6分である。

テキストでも一覧してまとめておこう。

・「犯人を特定した」というツイートが発信されたのが14時18分。

・犯人宅に押し入りベランダからツイートしたのが16時52分

・チンピラ風の男10名ほどで団地を取り囲み、犯人に対し「早く帰ってこい」などと脅迫する内容をツイートを投稿したのが17時17分

・「警察が集まってきた」とZ李がツイートしたのが18時27分

・再び犯人宅に侵入し、室内で動画を撮影し投稿したのが20時1分

・「犯人には娘がいたので勘弁してやった」という内容を投稿したのが22時6分

こうして事実関係を時系列順に整理すると、Z李の主張にはどう足搔いても多くの矛盾があることが明らかになる。

まず「集まってきた警察に事情を話して犯人逮捕に協力した」というのは確実に嘘である。警察が集まってきたのは18時27分。しかしZ李は20時1分にも再び犯人宅に侵入し動画を撮影している。Z李が主張しているように18時27分の時点で警察に事情を話し犯人逮捕に協力しているなら、20時1分には警察は犯人宅の中に踏み込み現場検証の真っ最中のはずである。のんきに動画を回しながら証拠となる盗品パーツをベタベタ触れるわけがない。また警察官ではないZ李は当然犯人宅に踏み入ることを許されない。

おそらく警察が集まってきたのは、見慣れないチンピラ風の男が10名以上も集まりそこら中で写真を撮るなどの怪しげな振舞いをしていたことで、近隣住民から通報が入ったからだろう。だから次にZ李が犯人宅に侵入するのは20時1分と警察が集まってきてから1時間半ほどの時間が空いている。現地から逃亡してほとぼりを冷まし、見回りの警察がいなくなったところで再び猿芝居を再開したわけだ。

無論のこと「幼い娘の涙に免じてバイク盗難犯を許してやった」という人情譚も真っ赤な嘘であろう。そもそも「犯人逮捕に協力した」という主張と完全に矛盾しているわけだが、それをあえて脇においてその主張の真実性について検証すると時系列的に気になる点が浮かんでくる。まずZ李は犯人がマンションに帰宅する前から犯人宅に侵入しているのだ。

犯人宅に侵入しベランダからツイートしたのが16時52分。チンピラ風の男らで団地を取り囲み「早く帰ってこい」などと犯人を脅迫したのが17時17分。つまりZ李は主人不在の犯人宅に16時52分には侵入しており、そこから17時59分ごろまで犯人宅を捜索している。2022年11月2日は平日(水曜日)である。幼い子供がいる家を夕方18時ごろまで捜索していたなら、この時点で娘と接触しているはずなのだ。

バイク盗難を繰り返す男の幼い娘が習い事に忙しいというのもありそうにない。Z李は犯人宅で「アンパンマンのおもちゃ」を発見したと自称していたが、そのくらいのおもちゃ遊ぶほどの幼い娘なら、子供のおもちゃやベビー用品が部屋中に散乱していたはずである(アンパンマンの対象年齢は0-5歳)。

にも関わらず、最初に部屋に侵入した時点でZ李のテンションは全く変化していない。幼い子供の存在に心動かされる正義のアウトローZ李が、子育て中の母親と娘がいる部屋に踏み入ってまったく心動かされないというのはどう考えても不自然である。ノリノリの犯人制裁モードをその後もしばらく続け、22時6分になってようやく「娘がいたので勘弁してやった」という人情譚を語り始めるのだが、「制裁」の証拠を出すことも「犯人逮捕」の証拠を出すこともできないZ李の苦肉の策としか解釈のしようがないだろう。


③「Z李の自作自演」を裏付ける確定的な証拠

さて、ここまで述べて来た状況証拠の羅列だけでもZ李の武勇伝は相当に疑わしいと言わざるを得ないのだが、筆者がZ李の自作自演を確信したのは他の理由からである。それは「供述の矛盾」といったものではなく、ほとんど完全な「証拠」である。2022年11月2日、Z李は

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