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わかおの日記259

我が慶大では今週いっぱい三田祭という催しが行われていて、日頃キャンパスで肩身の狭い学生はこの期間が休みになるので、それを利用して旅行をしたりする。ぼくも過去2年間の三田祭期間をただのありがたい連休としか認識していなかったのだが、今年は彼女のダンスがあるので訳が違う。高田馬場でブーケを買ってキャンパスへ赴いた。

田村くんと待ち合わせしてキャンパスへ赴くと、いつも辛気臭いキャンパスが完全に文化祭の会場になっており、授業で見かけたことない人達がここぞとばかりにホットドッグやポテトフライを押し売りしていた。彼女がデザインしたサークルのTシャツを着ている人達がうようよいて、改めてダンスサークルの大きさを思い知らされた。

彼らが全身から発する眩い青春の光にエネルギーを吸い取られ、逃げるように東門を出た。どうしても彼らにお金を落としたくなかったので、大学の隣のまいばすけっとで酒とハリボーを買って、彼女の公演が始まるまで時間を潰していた。しかし彼女のサークルの公演は1時間半も前から並ばなければならないようなものだったらしく、しびれを切らした彼女から電話がかかってきて田村くんと教室まで走った。

なんとかチケットを確保して、40分くらい熱気の凄まじい教室で待っているとダンスが始まった。彼女のサークルのダンス自体はこの間見たので新鮮な感動はなかったけれども、キラキラした笑顔で揃いの振り付けを踊る爽やかな姿には、嫉妬を通り過ぎて清々しい感動すら覚えた。息ぴったりのブレイクダンスを踊る若人たちに、「ああこの人たちが今後の日本を引っ張っていくエリートなんだ……」という確信を抱いた。ぼくもなんとか彼らの御こぼれに預かりたいのだが。

教室の暑さとルサンチマンで気絶しそうになっていると、ようやく彼女の踊りが始まった。彼女がやっているのはスロージャズというジャンルで、バレエのようにくるくる回ったりする品のいいやつだ。今日も彼女はくるくる回ったり、飛び跳ねたりしていた。やはりずっと自分と一緒にいる人が何か頑張っている姿というのは格別で、感極まり大きい声で彼女の名前を叫んだ。ずーっと外野で声を出していたから、ぼくの声はよく通る。応援できてよかったと思う。公演が終わったあとブーケを渡そうと彼女に会いに行ったが、友達といる手前恥ずかしいのか彼女はちょっとツンツンしていた。かわいくていいと思う。

個人的に三田祭でいちばん面白かったのは、記念館の前でやっていた学生プロレス、ボッキー・ナメロと小泉ちんじろうの1戦だった。双方ガリガリだったし、全くドスの効いていないマイクパフォーマンスがまさにB級で、この面白さには勝てないと思った。


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