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わかおの日記195

大学の喫煙所のなんちゃって退廃的な空気にすっかり辟易していて、タバコを吸いに行くたびにうんざりする。どうせ親に高い学費を払わせているくせにロックンロールを気取って、美容院に通いきちんとキューティクルを維持しながらロン毛にしているような奴らばっかりで反吐がでる。同族嫌悪だろうか。少なくともぼくはそうじゃないと思いたい。親に小遣いをもらっていることを悪びれずに言えるぼくのほうがリアルなんじゃないか。

しかしドーパミン分泌の誘惑には耐え難く、渋々階段を降りて喫煙所に向かおうとしていたところ、学食の材料保管庫のようなところに迷い込んだ。雑に置かれたダンボールのなかには無防備に玉ねぎが詰め込まれていて、一瞬玉ねぎ泥棒の誘惑に駆られたが、高等教育機関でそんなみみっちいことをするほどぼくも堕落していないので、泣く泣くその場を後にした。

そうして階段を降りた先には、誰も通らないようなベランダみたいなスペースがあって、もう面倒くさくなって、ぼくはそこでタバコを吸った。うまかった。下界では似非ロックンローラーと、やたらと線の細いホストみたいなやつと、お洒落が行きすぎて逆にダサくなっている下北沢野郎と、そいつらに媚びたい女がひしめき合って必死にタバコを吸っているのだ。いい気味だった。

こういう人生の楽しみ方をしていきたいと思った。

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