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音楽留学はできなくても、アメリカの先生からオンラインで学ぶことはできる

Michele Weir  ミシェル・ウィアー

ジャズボーカルをしていて、インプロの教則本とかに手を出したことがある人なら、きっと知ってるんじゃなかろうか。

数年前。私が彼女のウェブサイトを見て個人レッスンをしていることを知り、レッスン依頼フォームがあったので「すごい有名な人やしアマチュアの日本人からのレッスンリクエストなんて多分スルーされるかもしれんけど、もしかしたら受けてもらえるかもしれない」という、なんとなく「抽選に当たったらいいな」「高嶺の花に手が届いたらいいな」的な気持ちでドキドキしながら依頼フォームに入力して送信ボタンを押したのが始まりだった。

翌日、翌々日と、多分返事は来なかったと思う。「やっぱ忙しいよね・・・リクエストフォームも本当に届いてるかわからんし・・・」とか一人で勝手に思ってた矢先に、返事が来た。

返事、来たーーーーーーーーーーー!

返事の詳細は今思い出せないけど、良い返事だった。レッスンしてくれると。あのMicheleが。個人レッスンよ?(もちろんお代はきちんと払います) こんなペーペーにも丁寧にちゃんと向き合ってくれるんや・・・!!!って、ひとりでめっちゃテンションあがった。

そうしてオンラインでカリフォルニアにいるMicheleのレッスンを受け始めた。って言っても、1回2時間を月イチとかの、ゆっくりペースだけど。

私にとってはすごく大きなことだった。それまでにも歌を習ったことはあったけど、外国の先生に習うのは初めてで、日本人の先生にもたくさん素晴らしい先生はいるけど、英語で音楽を学ぶことは、私の密かな夢だった。

大学生の時に交換留学でアメリカにいたことがあるけど、全然音楽とは関係ないいわゆる普通の留学で。もちろん十分ありがたい経験だし、学びも楽しいこともたくさんあった。行けてよかったと心から思ってる。けど、留学終了間際になって、部屋でたまたまネットサーフィンしてて、ボストンのバークリー音大のウェブサイトにたどりついて

「うっっっわ、めっちゃここで学びたい」

って正直思った。そんなお金も実力も何もかもなかったけど、胸つかまれる気持ちだけが確かにあった。悲しいくらい気持ちしかなかったので、その気持ちにそっと蓋をして、帰国した。

気持ちには蓋をしただけで、蓋の下でずっと「いつかどないかして英語で歌の勉強したい」っていう気持ちは生き続けてて。このしぶとい生きる力のおかげで、Micheleに出逢えた。

というわけで、英語は留学してたおかげとかもあり、まあまあそれなりに使えます。と言っても、筋トレと一緒でやらないと言語もどんどんダメになっていくので、当たり前ですがネイティブとか帰国子女とか英検1級とかの方々の足元にも及ばないレベルです。が、身一つで英語だけのオンライン音楽レッスンに申し込むという度胸と英語力を一応兼ね備えています。(Micheleは日本語は話せないけど、日本人に教え慣れてるという点にすごく助けられている面はある)。

歌のほうは・・・好きだけど、自信がない。うまくもない。ていうかうまいって何?とか言い出したらどんどん脱線していくのでやめよう。とりあえず、私は「歌うのが好き、もちろん日本の歌やいろんなジャンルの歌が好きだけど、特にジャズスタンダードが好きだからこれからも自分のペース(スーパースロー。1歩進んで2歩戻る勢い)でそれを追求していきたい」人です。自分の趣味として、この先年齢を重ねてもささやかな楽しみとして続けていきたいだけ。

そんなこんなで、3年ぐらい前に、Micheleが私の師になった。

Micheleのレッスンは、どんなことを学びたいか、どの曲をやりたいか、など、どんなレッスンにしたいかをメールでやりとりしながら相談して決めていく。レッスンを受けて、自分がどんな状態になりたいのか、今はどんな状態で、それを自分はどう思ってるかとか、しっかり聞いてくれた。

基礎的な発声トレーニング、歌詞の発音、リズムの取り方、などなど、2時間あっと言う間。初レッスンの時は、スカイプの通話終了ボタン押したあと、しばらく脳がスリープ状態入ったのがわかったぐらい、まさしく全集中。多分あんな緊張しながら楽しんで集中したの、留学生活以来だった気がする。疲れるけどめっちゃ充実!みたいなやつ。

詳しく書くのは難しいけど、歌詞については発音指導はもちろん、歌詞を普通にしゃべって、その次にメロディをつけずにリズムにのせてしゃべって、それからやっとメロディとリズムとつけて歌って、っていうふうに段階を経ていく。歌詞をメロディなしでしゃべってもらったやつを録音して何回も聴いてシャドウイングしたりして、自分の中に歌詞を染み込ませていく。

しかも、その「普通にしゃべる」っていうのが、ただ単にスマホとかで歌詞出して読んだらいいってわけじゃなくて。感情は常に必要。ただ文字を音声に変えるだけじゃアカンわけです。細かいイントネーションとか、長いフレーズなら、どこで区切ったらどうなるかとか、もうほんま歌詞のレッスンだけで2時間いけるんちゃうっていうぐらい。特に私の場合、英語ネイティブじゃないから、もう歌詞についてはやればやるほど深みにはまっていくしかないけど、それがおもしろかったりもして。

日本語にはない、英語のニュアンスとか、歌詞を何度も何度も口にしていくうちに、なんとなく「こういう感じかな」とかちょっとでも掴めたら、Micheleはそこをすかさず「それよ!今のその感じ!!」って必ず言ってくれる。オンラインの壁が、一瞬消えてなくなったかと思うような絶妙のタイミングで「やった!」って心から思える声かけをしてくれる。とりあえずこのへんでちょっと褒めとこう、みたいな気持ちじゃないことが、画面から伝わってくる。

レッスンを経るごとに、Micheleへの信頼がどんどん増していった。自分の歌はそんなに飛躍的に変わってはいない。当たり前だけど。レッスンで教えてもらったこと、受け取ったことを、自分のものにして自然と出せるようになるまでは、自分で思ってるよりも膨大な労力と時間がかかる。スーパースローペースだから、諦めなければいいだけのこと。途中、めちゃくちゃ休憩取りまくるけどな。全然コツコツ練習とかできないタイプ。致命的。

仕事、育児、家事に追われて棚上げになることもしばしば。ていうかそれが日常茶飯事になっとる。それでも諦めきれずしぶとく消えないやる気。この灯火みたいな気持ちをここ数年持ち続けていられるのは、間違いなくMicheleとのつながりのおかげだ。

何歳でも、どこにいても、なんかのカタチで自分のやりたいことに線を繋ぐことってできるんだなぁとつくづく思うこの数年間です。

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