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カタルシス効果とは、結論から言うと”精神の浄化作用”という事だそうです。

Google先生によると、舞台の上の出来事(特に悲劇)を見ることによってひきおこされる情緒の経験が、日ごろ心の中に鬱積(うっせき)している同種の情緒を解放し、それにより快感を得ること。浄化。
ギリシア katharsis

田辺京子(仮名)51歳既婚女性の日常

午前6時57分、朝の情報番組の占いが終わると同時に夫が出勤する。
あーあ、牡牛座10位かー、、。
ひとりごとを言いながら、私は台所を片付け可燃ごみをまとめる。
毎週月曜日は可燃ごみの日である。
夫の魚の食べ方はとても雑で、中骨のあるところは手を付けない。
魚はここが一番脂がのって美味しいんでしょうに。
新婚の頃はそんな夫の食べ残しを、もったいないなぁと食べていたのだが、今となっては夫の食べ残しを食べるなどありえない。
最近は洗濯物も別々に洗っているくらいだ。
そんな夫の洗濯物の臭いは、いつしか電車に乗っているおじさんのそれになっていて、自分も同じだけ年をとったというのに、そんな小さな事で抵抗している自分が可笑しくもあった。
思春期の娘じゃあるまいし。
子供たちが就職して次々に家を出て行ってから、夫とは寝室を別にした。
いびきがうるさくてよく眠れないというのが建て前だが、夫に邪魔されず1人でゆっくり眠りたいというのが本音だ。
こちらがやっとうとうととし始めた時、隣のベッドにごそごそと入ってきて、スマホの明かりを煌々とつけていたかと思えば、その数分後に地鳴りかというほどのいびきが始まる。
そのたびに私の心地よい眠りは中断され、寝酒の赤ワインを飲みにキッチンに移動する。
首元が伸びてよれよれのTシャツに毛玉のついたスエットで、寝酒をちびちびやりながらスマホを見るともなく見ている。
SNSの世界にはこんなくたびれた51歳女のリアルなんて皆無だ。
夫とはもう15年くらいセックスレスだ。
いったい最後にしたのはいつだっただろう。
今後の人生で夫とは二度とセックスすることもないだろう。
反面、この先の人生で一度も男から求められることもなく、触れられることもなく枯れていくのも寂しすぎる。
かといって新しい出会いを求めるのも億劫だし、そもそもこんな緩みきった身体を人様に見せると考えただけで、ロマンチックな妄想は一気に現実へと引き戻される。
40代の半ばくらいから、ウエストや腰回りが目立たないような服を選択するようになった。
それでも身体のラインがだんだんとごまかしがきかなくなってきていることは、自分自身が痛いほど自覚している。
久しぶりにそでを通した11号の喪服が、窮屈になっていた。
夜景が見える高層階のレストランで食事です(グラスを二つ写す)ドライブしてます(助手席から運転席の男の腕時計を写す)、女子会です(加工写真のおばさんの集合写真)
ああそれはよかったね。はいはいすごい充実してますね。
心の中で毒づきながらいいねする。
23時48分、お世辞いいねをするのもあほらしくなって、赤ワインのグラスを手に自分の寝室へとふらふらと向かう。
赤ワインが程よく回ってきてあくびが出た。
巣立って行った子供が置いていった漫画本、中学生の時のジャージ、部活で使っていたカバン。
何年も使っていない夫の釣り道具、同じようなものが3つもあるゴルフバッグ。
そんなどうでもいいものに囲まれて、私は平和に寝る。
炊飯器のタイマーもセットした。
朝は出し巻き玉子と納豆でいいか。
明日こそ白髪染めなきゃ。

カタルシス効果得られましたでしょうか?(笑)


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