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[フィルムカメラマンの本音]インフルエンサーとフォトグラファーの違いとは

最近、食品・コスメ・宿泊施設などから「案件」をいただけることが増えてきました。

商品やサービスを無償で提供してもらい、
私はそれを撮影・投稿する。
最初はそんな需要があるんだ、と驚きました。
ありがたいことだと思います。

新しい商品やサービスを知れるきっかけになること、
宿泊案件の場合は綺麗な施設で撮影ができること、
企業とマッチングできて今後の繋がりにもなるかもしれないことなど、
メリットはたくさんあります。

一方で、ちょっとした葛藤も生まれてきました。
それについて、まとめてみようと思います。

PRを受けるメリット・デメリット

PR案件を受けることは、メリットもデメリットもあると思っている。

【メリット】

・商品やサービスを無料で受け取れる

PRの商材というのは、ご当地の商品だったり、ちょっと変わった商品だったり、何かこだわりのある商品も多い。
PRを必要とするくらいだから、まだ世にあまり知られていない隠れた名品もある。
PRがそういった新しいものと出会える機会になることが、
ひとつのメリットであると言える。

・施設で(合法的に)撮影できる

宿泊や飲食店の案件だと、
施設でサービスを受けて、現地で撮影を行う。
一般客として行くと、お店側に都度許可を取る必要があり、
さらに、場合によっては撮影を断られることもある。

しかし、PRの撮影であれば、施設側が協力的なことが多く、
常識の範囲内で自由に撮影ができる。
撮影のためにセッティングや説明をしてくださったりすることもある。
スイーツが映えるカフェ、綺麗な建築のホテルなど、
プライベートで来ても撮影したくなるような場所で、
堂々と撮影させてもらえるのは有難いことだと思う。

タイアップ投稿以外にも使えるネタになる

撮影した動画や写真は、依頼された投稿のほかに、
自分のSNS・ブログ・YouTube等の発信のネタとしても使える。
商品撮影の様子を解説してみたり、
PRのために訪れた施設・旅行の様子を動画にまとめてみたり。

タイアップ投稿では、依頼者側をPRするための文言やタグなど要件が決まっているが、
直接それらを宣伝する内容でなければ、通常の投稿に使用することもできる。

・企業と繋がるきっかけになる

商品のPRを通じて、提供元の企業や個人との繋がりができるのも利点だと思っている。
1度のPRだけで終わる場合も多いが、
投稿に使用した写真を公式サイトに掲載してもらえたり、
複数回PRを依頼してくださる企業もある。
繋がりを深められることはメリットだと思っている。

【デメリット】

金銭的な利益は少ない

PRの案件は、主に
①商品やサービスを無償で提供→PR
②商品やサービスを無償で提供 + 諸経費(交通費・小道具購入等)を負担→PR
③商品やサービスを無償で提供 + 報酬を支払う→PR(二次利用を含むことが多い)
のパターンで、主に①が多いと思う。

正直なところ、①の場合は金銭的利益は0で、
商品撮影の場合は撮影用に小道具(生花など)を購入したり、
宿泊や飲食店の案件の場合は、交通費や諸々の経費がかかるため、
むしろお金がかかっている。

PRのために時間・労力・金銭を割いているのは事実だ。

「無償なんだから」という理由でサービスを制限される場合がある

PRの案件を受けると、商品の送付状だったり当日の施設での応対などから、
たいていは「写真の雰囲気が素敵で依頼させていただきました!」「これサービスです!素敵に撮ってください!」
というように、歓迎されているのを感じることがほとんどなんだけど、

「無料で提供してやってるんだから」というような対応を取られることが稀にあって、とても残念な気持ちになる。
私は依頼を受けて協力しているわけで、
時間を割いて、いろいろと考えて撮影をして、
フォロワー数万人のアカウントを使って宣伝をするわけで、
無料でサービスを受ける対価は払っているつもりなのだ。

それが、「PRに協力するインフルエンサー」どころか、
「懸賞に当たって無料で泊まっていく人」くらいに思われてるんだろうな、
と感じることがある。

先日、とある宿泊施設のPR案件を受けた。
素泊まりの一棟貸しで宿泊費は無料、交通費は自費だった。
しかし、当日施設に到着すると、
数十匹単位の虫が室内におり、さらに残骸がゴロゴロ転がっているという状態だった。
衛生管理に不安を持ち、とても宿泊はできないと判断、
オーナーに電話をかけた。

しかし、謝罪の言葉等は一切なく、
それどころか、
「利用料金をお支払いされてご予約されたお客様な訳でもありません。」
「たまたま無料で宿泊できる予定の宿が、『虫がいるから宿泊したくない』
という自己都合の理由で変更されて、本来得られるはずだったこちらの宿泊金額の保証はしていただけますか。」
と主張された。

サービスの対価として無償でPRをする、という相互関係だったのに、無償だからという理由でまともなサービスも提供してもらえないのか、
そもそもPRを依頼してきたのはそちらではないのか、
と悲しい気持ちになった。

インフルエンサーとフォトグラファーの立場の違い

宿泊施設や飲食店の案件でいうと、
今回のように、
「無料のサービスを受ける代わりに、自分のSNSでPRをする」
という関係では、私は「インフルエンサー」として扱われている。

この場合は正式は契約等を交わすことは少ない。
私に求められることは撮影能力<発信力 で、
拡散ツールの一つとしてとらえられているような感覚がある。

そうではなく、
「報酬・諸経費を支払う代わりに、撮影データを納品・PRする」
という関係だと、私は「フォトグラファー」として扱われているのだと思う。

後者の場合は、私のフォロワー数だけでなく撮影技術も買っていただけて、
正式に発注や契約を交わしたうえで、取引先として関わることができるため、
お互いに対等な立場と捉えてもらえるのだと思う。


もちろん、どんな形であれ必要としてもらえるのはありがたいことではあるが、
いずれは、フォトグラファーとして求められる人間になりたい。
最近は、PRだけでなく、自社のサイトに使う写真や動画を依頼していただけたり、私本人に取材を依頼していただける機会も出てきた。

「フォロワー数の多いアカウント」だけでなく、
撮影や文章といった技術を認めてもらえるような深みのある人間になりたいし、
そんな自分を売っていきたい。



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