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#推薦図書 「人馬」

若宮が推薦したいのは、墨佳遼さんの「人馬」です。

人馬という文字を見るだけで、表紙を見るだけで、
みなさん「人馬ってなに??」って思うでしょう。

古来よりこの国に住まう、半人半馬の種族「人馬」。
時は戦国。人は彼らを戦の道具と見なし、その尊厳を奪った。
「赤毛の岩虎」の異名を持つ雄々しき人馬・松風は、
人間に使役される俊足の人馬・小雲雀と出会う。
ここから、ふたりの運命が大きく動いていく――
  第一巻あらすじより

第一部と第二部があるのですが、第一部の主人公が松風と小雲雀です。
その知恵と生命力から山神とも崇められた人馬ですが、戦乱の世には道具として駆り出され、第一巻では狩り尽くされつつある人馬が人間を憎みながら山の奥で暮らしています。
人が入れない山奥で暮らす松風は、人里に下りたために狩られそうになった息子・権田を助けるために駆けつけます。
簡単に捕まる松風ではありませんが、速さを極めるために腕を落とされた小雲雀により捕縛され、人の手に落ちてしまいます。
しかし、小雲雀には一つの企みが。

という始まりなのですが、第一部には色んな立場の人馬が出てきます。
親を殺された子、人間に育てられた人馬、
人間味というと変ですけど、人馬味というか、人情があって、
「人馬」というファンタジーな存在ですけれど、とてもリアルに描かれています。

そして墨佳さんの絵が綺麗。
とても躍動感のある作画で、繊細な表情、色付いて見えてきそうな自然、雄大な景色、そしてコミカルな部分。
人外を描かれる事が多い墨佳さんなので、とてもリアリティのある作品です。

全4巻が出版されており、3、4巻が第二部です。
第二部は次世代の話。第一部から数十年が経っています。
戦乱の世が終わり、小雲雀の息子・谷風は戦も人間も知らずに山奥で暮らしていました。
まだ若い谷風は好奇心も強く、人間に興味を持ちます。
話にしか聞いたことの無い人間とは、どんなものだろうかと。
そして本当の理由を隠して、山を下りる所からお話が始まります。

第一部は迫害を受ける中で、「生きる」という強い気持ちが描かれています。
そして第二部では、辛い歴史がありながらも「共に生きる」という事を考えさせられるお話です。
いくつも辛いエピソードが描かれているのですが、どんな時も希望があって、特に谷風の様な新しい世代が過去を考えながらも未来を見つめている姿が、とてもさわやかで瑞々しく、暗くなりがちなテーマですけれど、眩しいくらい希望に満ち溢れています。

pixivコミックで試し読みができるので、興味を持った方はぜひ。
墨佳遼 「人馬」


墨佳さんの他の作品、「トルソな僕ら」もオススメです。
短編集で読みやすいです。こちらもオール人外。

人外というとファンタジーとかSFとかをイメージしますけど、墨佳さんの描く人外ってすごくリアルなんですよね。
作画もだけど、設定も。
不思議な色気が漂っていて、そこに強く惹かれる。
歪なモノに耽美を感じる気持ちと似ているけれど、人間じゃない彼らは決して欠けたところなどなく、むしろ完璧に近い。
けれど人間と違うという、読者から見るとわずかな違和感に、どうしようもなく心が騒ぐのだと思う。

どうかみなさんも、この色気を感じてみてください。


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