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絵を描くのがこわい


高校は、普通科の中にある、1学年につき15人くらいの美大受験コースに通っていた
(これに入ったのも、学校に通うことさえ嫌なわたしに「絵描くのは好きでしょ」と母親が勧めただけ)

学校自体には推薦で入れたので受験は実技だけで、たまたまそのとき軽躁状態だったので寝ないでデッサンの練習をしてた

結論、入学したと同時に嫌になってしまった、絵を描くのってなんか凄い怖いと思った

あと普通に、練習のときの4倍くらい紙がデカいので塗りつぶす時間が普通に嫌だった
小さい紙に描かせてくれ!拡大コピーしようぜ!

はじめての夏休みの課題の中に、ブロッコリーのデッサンがあって、それはなんとか提出したのですが、大きな黒板に貼り出されたブロッコリー達、上手い下手以前にわたしのブロッコリーだけめっちゃ小さくて爆ワロタだった…原寸大にしか描けないもん…

毎日、美術の授業は執拗にあるし放課後までみんな練習したりしてたけど、入ってすぐダメになったわたしは美術コース専用の美術室に入るのさえ嫌で、よく授業をサボって学校の便所にこもり便座に座って泣いていた
毎日、死にたいと思っていた、朝の通学電車、快速だったし毎回飛び込もうと思っていた
快速がホームに近づいてくるとフワッとする、なんて言うんだろうあれは
わたしは電車で死んだひとたちの100%が常に死にたいと思い悩んでいたわけじゃない気がしている、なんとなくもういいかなって日にフワッと吸い込まれただけのひともいるだろうと思っている

あるとき、美術コース出身の美大生が教育実習でやってきた
なんか課題を出してきたけど、もちろんやらなかった、できないから
やる気のかけらもないわたしを教育実習生は詰めてきた、本当にいやだった、わたしは絵やデザインはやりたくないしできないと言った
「じゃあ、何がやりたい?」と返してきた、ああうざい、このパターンか
この人もまた、人間に、やりたいことがない個体が存在するなんて考えたことはないんだろう

教育実習生は、教育実習生が思いつく限りの職業をあげてみて、わたしが興味のもてるものがないか、取り調べのようなことをしたりもした
もう放っておいてくれ、殺す気か
(一応こんな人間に時間を割いてくれてるの、大変申し訳ないなとも思いました)
本当に自分はなにもやりたいことがない人間なんだと再確認するに終わった

そんなこんなで3年が経ち、皆のほとんどは名の知れた美大へ進学した

最後の授業、わたしはもちろん参加しなかったのだが、入試の得点発表コーナーがあったそう、毎年恒例らしい
デッサンはわたしが1番だったと同級生が教えてくれた

へえ〜
なんでそういうの最後に教えてくれるかな〜

まあいいや、あの瞬間においては確かにわたしは誰よりもがんばっていたと思う、それが躁状態由来だとしても

画家でもあった美術コースの先生は、扉どころか壁すらないトイレしかない家に住んでいるといつか話していた(それってトイレって呼べるのか、ただそのまま便器だけが置いてある家?)
芸術家?そういうとこ嫌だよな〜、便器まる出しの家に住むのは勝手でございますが、あえて教えてくる必要性ある??
まあいいや

そうしてわたしたちは大人になった、同級生と連絡する機会があり美術コースの皆の近況を教えてくれた
本屋さんで平積みになっているような本の後ろに名前が載っているような子もいたし、皆各方面で活躍していた、サイ◯ーエージェントにいった子までいた、すげえね

反面、連絡も取れず行方もわからない子も数人いた
芸大に進学した子は山でみんなと暮らすと言っていたのが最後どうなったのか誰も知らない、大学受験時に鬱になりかけた子は無事進学はできたが連絡がずっと取れない、そんな具合に

絵を描くってやっぱり怖いなと思う
絵に限らないが、自分と向き合うみたいな行為には鋼メンタルが必要だ
美術コースの同級生でいまだ連絡を取っている子は、美術とは関係ない小さい会社で経理をしている、今が平和だと話していた

絵を描いているひと、デザインの仕事をしているひと、尊敬というか、ただただスゲえ、スゲえと恐れ入る

メンタルがすこし足りなかったみんなや、メンタルをすこし壊したまま戻れなくなったみんなの描く絵、描きたかった絵が見てみたい

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