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だれかの心に。

先日、自分が夏までお世話になった革鞄屋さんの、新店舗に行ってみた。

自分が働いていたお店にいた方のひとりが、その新店舗に異動したと聞いていたのだ。

新店舗はたくさんのお客様で賑わっていて、異動したその方も忙しく、しかしいきいきと働いていた。

お邪魔することはあらかじめ伝えていたので、私を見つけるとすぐにそばに来てくれた。

他のお客様の様子を互いに気にしつつも近況を話し、聞く。

新しい環境に飛び込んだ私を、その人は前と同じように応援してくれた。

名残惜しさがありつつも、お店がさらに賑わってきたのでおいとますることに。

その夜、メッセージが届いた。

実はですね、私が異動するきっかけになったのって、あおやぎさんなんですよ。
あおやぎさんが前の仕事してる時、しんどい時に「この鞄も共に…!」って思いながらトート抱き締めてたって話してくれたの覚えてるかな?
あの話聞いて、自分がしてる仕事が誰かの気持ちを支えてたり、後押しするもとを売ってるんだなって思ったらそれがすごく光栄で責任ある仕事だなって思ったんです。

そんな話をしたことが、確かにあった。
私は以前教育関係の出版社にいたのだが、自分の未熟さゆえに、また当時の仕事に対して違和感を感じていたゆえに日々もやもやとしていた。出張で遠くに行くたび、「仕事中の味方はこの鞄だ」と心の中で言い聞かせながら、そのお店の革鞄をよくさすったり抱きしめたりしていたのだ。

その人はこの話を覚えてくれていて、しかも異動を希望するきっかけになったということを教えてくれた。

メッセージには続きがある。

だからもっと販売員としてレベルを高めたかったし、たくさんの人を相手にしてみたくなったんですよね。
あおやぎさんとお会いしてなかったら、私はまだぬくぬくと、なんとなく日々を過ごしていたと思います笑

やっぱり、あのお店で働かせてもらえてよかったと心から思う。

こんな販売員さんが各店舗にいるからこそ、私はそのブランドが好きだったのだ。

ただ鞄が好きだからじゃない。
製品を大切に扱って、お店へ足を運ぶお客さんをもっともっと大切にするあたたかさが感じられるから。

少し前のこの投稿では、「人のことばに自信の根拠を求めるんじゃなくて、あなた自身が自信をもてるかどうか、ってことが重要なんじゃないの」という声が自分の中から聞こえる、というようなことを書いた。

その状況は今も変わらないのだけど、今回もらったメッセージは、私の気持ちを少しアップデートしてくれたように思う。

自分で自分を元気づけたり励ましたりできない時もたくさんある。

誰かに褒めて欲しいと思う時もたくさんある。

でもそれが叶わない時もたくさんある。

だけど、「自分の存在が、誰かの心に残っている」ということを思い出せると、一歩を踏み出す力になるかもしれない。

私が“すごいやつ”じゃなくてもいい。
自分に満足できてなくてもいい。

でも今までちょっとでも生きてきたなら、
だれかに何かいい影響をもたらせているはず。

だいじょうぶ、私は誰かの心に光を灯すことができたんだ。そんな私なんだ。

こんなふうにちょっと元気を出せたら、
また目の前のことから向き合っていけばいいのかもしれない。

冬の澄んだ夜空を見上げていると、しんと静かにそんな気持ちになるのだった。


#エッセイ #君のことばに救われた


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