飛蚊症

みんなは飛蚊症って知ってる
透明なミミズみたいなのが宙を舞っているように見えるやつ
あれって目の中の硝子体のにごりなんだってさ
ボクはあれはボクにしかみることのできない細菌かなにかで
それはボクの特殊能力かと思っていたんだ
でもそれは飛蚊症というらしい
生まれつきのやつの方だからあまり害はないだろうけど
ようは病気ってことさ
正体がわかってしまった途端に魔法は解けて
ボクは能力者から病人へと変わる
いつだって本当の名前なんてものは知らないほうがいいんだ
一度知ってしまうともう知らなかった頃には戻れない
人間は現象に名前をつけて観測する
観測した途端に世界に存在する
昔はパワハラって言葉ってなかったんだって
それはいいとか悪いとかじゃなくてさ

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