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雑感:なぜこじれた?月曜日のたわわ

 どうも!おはようございますからこんばんわ!まで。

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 最近のネットニュースを地味にざわつかせた日本経済新聞の4月4日付の紙面広告に載った漫画本『月曜日のたわわ』です。共同通信配信の記事によると、国連女性機関から抗議を受けていたことが15日分かったそうで、日経新聞は「広告を巡ってさまざまなご意見があることは把握しております。個別の広告掲載の判断についてはお答えしておりません」と回答しているとのことです。

 あらかじめ申し上げておきますが、私自身は性被害という側面を無視して良いものとは考えていません。だけど、今回の一連の流れにはなぜこじれたんだろう?という疑問があり、私なりの考察を書いてみたいと思います。

1.月曜日のたわわの始まり

 2016年8月1日に配信されたねとらぼの記事によると、『月曜日のたわわ』の作者である比村奇石氏は描こうと思ったきっかけについて次のように当該記事内のインタビューで回答しています。

実は一つ目を投稿した2015年2月23日に特別何かがあったわけではなく、何かの決心の下に始めたことでもありません。ずっと仕事で漫画製作をしていますが、ストーリー漫画である以上常に描きたい絵が描けるわけではありません。ちょうどその時期は仕事の原稿に女性キャラが一切出てこなくて、鬱憤(うっぷん)を晴らすためによくラクガキを描いてTwitterに投稿していました。

 そんなラクガキの中の一つを、たまたま描いたのが月曜朝だったこともあり、脱サラ前の月曜日の苦しみを思い返しつつ「月曜日の社畜諸兄にたわわをお届けします」とキャプションを付けて投稿しました。それが始まりです。

 つまり作者としても最初から性描写に相当する物をTwitter上で見せびらかすことを目的としたものではなく、落書きの延長線上で「月曜日の社畜諸兄にたわわをお届けします」とキャプションを付けて投稿していたとの事です。また、作中におけるシチュエーションのアイデアについて比村氏は次のように回答しています。

まず1つのパターンとして、日常の至る所で、TVを見ながら、街を歩きながら、ふと目についたものから連想して思い至ることが多いです。しかし、実際現実に目にした光景が一つとして無いのはとても悲しいです……。例えば今お答えしながら思い付いたのは、インタビュー写真とかでありがちでよく話題になる「ろくろ回し」ポーズから連想して、「巨乳陶芸家が大皿を作っていたら熱中するうちに胸が当たった結果花瓶になった」みたいなネタです。ばかばかしくて好みのネタですが、日常とかけはなれた風景なので没にします……。

 また、最近はその時々の時事ネタを拾うことが多いです。とはいえ「たわわ」を主役として成立すること、元気の出るネタであることが大前提なので、全ての時事ニュースを利用できるわけではありません。

 もう一つのパターンとして、投稿時間が迫って描き始めてからひらめくことも少なくありません。これまでで一番反響が大きかった「その68(パソコン壊れました)」などはその典型で、オフィスの隣席にたわわな人がいたらどう見えるかを漠然と描いていたら机とキーボードに胸が触れそうだったので、ああこれはありえそうだな、と。

 こうしてみると、作者が安易に女性を性消費の道具として描写しているという風に感じる事はできないと思います。

2.なぜ国連が登場した?

 今回の一件でまず気になったのは国連女性機関(UN Women)がどうして登場人物として出てきた?という事です。ハフポストの記事によると、日経新聞はUN Women 日本事務所を中心として広告によってジェンダー平等を推進する「アンステレオタイプアライアンス」と呼ばれる取り組みに加盟していて、その論点で登場してきたとの事です。記事引用になりますが、「アンステレオタイプアライアンス」の概要は次の通りです。

アンステレオタイプアライアンスは、UN Women が主導する、メディアと広告によってジェンダー平等を推進し有害なステレオタイプ(固定観念)を撤廃するための世界的な取り組みです。

企業の広告活動がポジティブな変革を起こす力となり、社会から有害なステレオタイプを撤廃することを目的とし、持続可能な開発目標(SDGs)、特にジェンダー平等と女性・女児のエンパワーメント(SDGs 5)の達成を目指します。

「女・男はこうあるべき」などに見られるステレオタイプは、企業や人を縛ったり、型にはめることで、イノベーションや自由な発想を遠ざけます。消費者もステレオタイプを描くブランドや商品からは、離れていきます。また、ステレオタイプは、ジェンダー平等を達成するための大きな障壁にもなっております。

 これを具現化した1つとして、ジェンダー平等に貢献する広告を表彰する「日経ウーマンエンパワーメント広告賞」を日経は主催していて、同賞では、広告からステレオタイプを取り除くため、「3つのP」という審査項目を設けているとのことです。

Presence 多様な人々が含まれているか

Perspective 男性と女性の視点を平等に取り上げているか

Personality 人格や主体性がある存在として描かれているか

 今回の国連女性機関(UN Women)の抗議においても、この点が強く協調されているとのことです。

3.狙い撃ちでしかないやん

 今回の件はあくまでも版元である講談社と日経新聞の私人間における内内の話であるのに、そこへ国連女性機関(UN Women)がけしからんと登場するって狙い撃ちとしか思えないのが率直な感想です。確かに、日経新聞が「アンステレオタイプアライアンス」と呼ばれる取り組みに加盟しているという事情を鑑みても、作品それ自体のコンセプトを知らずに狙い撃ちな如く抗議をするって国連機関による表現への内政干渉やんと思ってしまいます。

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 そして改めて当該広告を見てみるとこの広告だけを見てどこに性消費を助長させる要素があるのかな?という見方もできるため、国連女性機関(UN Women)こそステレオタイプなんじゃないの?というツッコミな見方もできると思います。

4.おわりに

 上記動画は、表現関連に詳しい自民党の山田太郎参議院議員のYouTube動画でここにより詳細な論点が載っているので、これを見るのも一手かもしれませんが1番問題なのは今回の件が火種から山火事へと発展して、より一層の表現規制に向かうムーブメントが起こってしまったら何も書けなくなるのではないか?というのが率直な感想です。また、一弾と糾弾をしたハフポストがこういう記事には嫌悪を示さないってダブルスタンダートではないか?という指摘をするツイートもあります。

 性は捉え方次第で加害者にも被害者にもなりえる可能性をはらんでいる大変センシティブな論点であるため、より一層丁寧な論じ方が大切だけど、ここまでこじれることなのかな?という疑問がたっぷりでこれが過度な表現規制へと進む火種にならなきゃ良いなというの想いを添えて筆を置きます。


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