見出し画像

感想&雑感『もしすべてのことに意味があるなら がんがわたしに教えてくれたこと』著:鈴木美穂

どうも!おはようございますからこんばんわ!まで

 今回は、この本の感想&雑感を書いていきたいと思います。

1.概要

 著者の鈴木美穂さんは、元々日本テレビの報道局で記者として働いていました。その鈴木さんが入社3年目の24歳に乳癌を発症しました。癌をきっかけにして死という恐怖が迫った著者が癌という誰しもが発症する可能性がある病気との向き合い方(とりわけ女性の発症比率が高い乳癌との向き合い方)や、そこから派生して現在共同代表理事となっている癌に関して気軽に話すことができる空間であるマギーズ東京を開設していく道のりを記した一冊です。

2.感想1:医療を選択(セカンドオピニオン)

 本書の中でまず特徴的だったのは、癌という誰しもが発症しえる可能性を秘めつつも発症の事実を知ると悲しい気持ちになるという病気に対して、悲しみをセカンドオピニオンを貰ってでも最適な医療を選択しようとするやる気のような気持ちへ昇華させる著者の心持ちとメンタルの強さに驚きました。

 国立がん研究センターのホームページによると、セカンドオピニオンについて次のような説明があります。

 がんの診断や治療では、患者や家族が正しい情報に基づいて担当医と十分に話し合い、納得して治療を受けることがとても大切です。しかし、担当医と十分な話し合いを行っていたとしても、「別の医師の話を聞いてみたい」と思うことがあるかもしれません。診断や治療選択などについて、現在診療を受けている担当医とは別に、違う医療機関の医師に求める「第2の意見」をセカンドオピニオンといいます。セカンドオピニオンは、今後も現在の担当医のもとで治療を受けることを前提に利用するものであり、「セカンドオピニオンを聞くこと=転院すること」ではありません。

 多くの癌治療の場合、症状が比較的重くない段階においては病巣となっている部分を取り除き、その上で病巣となっている部分以外への転移を防ぐために抗がん剤治療や放射線治療を行うのが主流だそうです。しかし、著者も当初はそれ以外のやり方は無いのか?という疑問からセカンドオピニオンを頂くことを決断したそうです。

 昨今の新型コロナウイルスが一日毎にウイルスの正体に関する情報がアップデートされていくように、医療の情報は取得した段階における情報が医師毎に個人差があり、自分にとって最適な医療を受けるのは情報戦だと著者は本書内で語っており、国立がん研究センターのホームページで記載されているように、セカンドオピニオンが転院ありきではなくて治癒への可能性が高い治療方法を探る等、自分自身がその病気と向き合う上で最適な方法を探る上で大切だというのが如実に伝わりました。

3.感想2:解釈と気持ち

 本書の前段は当事者の人は恐らく頷くかもしれないし、そうでない人であっても生々しく感じてしまうほどに著者の闘病と行動の記録とそこから見つけ出した発見が鮮明に描かれています。中でも、驚いたのは抗がん剤治療の副作用として生じるせん妄状態です。

 名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学・病院准教授の奥山徹氏によると、せん妄とは次のような状態を言うそうです。

せん妄とは、貧血、肝・腎機能障害、栄養障害、電解質異常、低酸素、感染症、薬物の影響といった身体的な原因によって、意識が混濁し、興奮状態になったり、幻覚、妄想が出たりするなどさまざまな症状が出る病態です。

 本書内における著者の例で言うと、夢の中で描かれていたことに納得感を覚えたという点から幻覚や妄想に相当するのだと思います。現実世界ではとっくの昔にあの世へ逝っているけれども、夢の中で描かれている世界に出てくる登場人物の言動にリアリティを感じてしまう、すなわち夢と現実の差異が無いという感覚がせん妄という症状にはあり得るんだというのが切実に感じることができました。

 著者は本書内で、精神科医・エリザベス・キューブラー=ロスが定義した「死の受容」プロセス(本書内では「死にゆくプロセスの5段階」と表現)を引用し、現実と夢の境目が分からなくなってしまった状態が絶望で、絶望を経験することで自分は癌という病気になったんだという受容ができたんだという事を言っていました。そして、この受容が後にマギーズ東京設立へと向かう過程における動力源の1つとなったのではないかと読む中で想い、それは癌という病気を1つの試練・課題として理解し足掻きながらもこの気持ちを昇華しようと解釈し、行動力なんだろうと私は思いました。

4.最後に

 本書内では他にもマギーズ東京設立までの奮闘劇や奮闘の最中で出会う人達の交わり合い、そして年代が近く同じがんを経験した山下弘子さんとの出会い等、癌という経験が決してマイナスだけではないという事を切々書かれた手記で色んな論点があると思います。だけど、今回はここで筆を置きたいと思います。

 先行きが不透明な時代において、気持ちが折れたり浮き沈みがあると思います(私は四六時中かもしれません(笑))。だけど、目の前に見える景色は解釈の仕方で色んな方向に持っていくことが可能だという事をこの本は教えてくれていると思います。勿論、著者の鈴木美穂さんみたいに勢いを持続させていくことが難しい場合にはご自身のペースでポジティブに解釈していくことで世の中は変えることができる可能性があるんだなという事を学びました。


認定NPO法人マギーズ東京 HP



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?