雑感:選挙の秋がやってくる~衆議院議員選挙~(その3)
どうも!おはようございますからこんばんわ!まで。先日衆議院が解散となり、事実上選挙戦モードへと突入になりましたね。各党・各候補者躍起となりつつある中で、丁寧に見ていかないといけませんね。
今回3回目は憲法について書いてみたいと思います。
1.自民党が考える憲法の形
上記画像は、自民党HPで公開されている今回の衆院選に向けての政策パンフレットから憲法改正に関するページとなります。3段目に記載されている4項目は第2次安倍政権の辺りから自民党が憲法改正を目指していく上での落としどころとして提案している4項目で、落としどころを考えるほど結党当時から掲げている党是としての憲法改正を達成したくてうずうずしているんだなというのが分かります。
2.緊急事態宣言考える上での立憲主義
新型コロナウイルスの流行を契機に皆さんも耳にされたことがあるワードとして、緊急事態宣言があると思います。この緊急事態宣言は新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、新型インフル等特措法)32条を根拠としたものですが、それ自体には強制力はありません。自民党が掲げている緊急事態宣言(緊急事態条項)は、今回のような疫病に限らず敵国との戦争状態等日本ががヤバい時に一定の人権の制限を掛けようとする上での根拠として憲法に盛り込もうという考え方ですが、これを語る上では現行憲法の立憲主義を述べる必要があります。
イメージをしてみてください。勤めている会社等属している組織で、ブイブイいわせているリーダーがいるとします。そのリーダーが好き放題して”あなた昇進!””あなた左遷”みたいな感じで理由なくされたら、そのリーダーに媚びる事ができる人は上のポジションに着けるかもしれませんが、そうでない人はただただ冷や飯を食わされるだけですよね?。これを国家に置き換えてみましょう。
好き放題な王様がお前むかつくから死刑とか,お前の財産は俺様のものだ!って言ったら、その国家で過ごしていくのはムリゲーですよね。フランス人権宣言の16条では「権利の保障が確保されず、権力の分立が確立されていないあらゆる社会は、憲法を持たない社会である」と表されていて、つまり権利(人権)が保障されていて権力が特定の人物に集中しないようにすることが大切で、これが立憲主義の根本であると言われています。イメージすると、国民から権力側へのお手紙をでしょうか?。(参照:『憲法主義 条文には書かれていない本質』内山 奈月 , 南野 森 (著) pp77~79,82~83)
3.緊急事態宣言(緊急事態条項)
自民党が平成二十四年四月二十七日に決定した党独自の日本国憲法改正草案(以下、自民党改正案)の中で、緊急事態について次のように述べています。
第 九 十 八 条 内 閣 総 理 大 臣 は 、 我 が 国 に 対 す る 外 部 か ら の 武 力 攻 撃 、 内 乱 等 に よ る 社 会 秩 序 の 混 乱 、 地 震 等 に よ る 大 規 模 な 自 然 災 害 そ の 他 の 法 律 で 定 め る 緊 急 事 態 に お い て 、 特 に 必 要 が あ る と 認 め る と き は 、 法 律 の 定 め る と こ ろ に よ り 、 閣 議 に か け て 、 緊 急 事 態 の 宣 言 を 発 す る こ と が で き る 。
2 緊 急 事 態 の 宣 言 は 、 法 律 の 定 め る と こ ろ に よ り 、 事 前 又 は 事 後 に 国 会 の 承 認 を 得 な け れ ば な ら な い 。
3 内 閣 総 理 大 臣 は 、 前 項 の 場 合 に お い て 不 承 認 の 議 決 が あ っ た と き 、 国 会 が 緊 急 事 態 の 宣 言 を 解 除 す べ き 旨 を 議 決 し た と き 、 又 は 事 態 の 推 移 に よ り 当 該 宣 言 を 継 続 す る 必 要 が な い と 認 め る と き は 、 法 律 の 定 め る と こ ろ に よ り 、 閣 議 に か け て 、 当 該 宣 言 を 速 や か に 解 除 し な け れ ば な ら な い 。 ま た 、 百 日 を 超 え て 緊 急 事 態 の 宣 言 を 継 続 し よ う と す る と き は 、 百 日 を 超 え る ご と に 、 事 前 に 国 会の 承 認 を 得 な け れ ば な ら な い 。
4 第 二 項 及 び 前 項 後 段 の 国 会 の 承 認 に つ い て は 、 第 六 十 条 第 二 項 の 規 定 を 準 用 す る 。 こ の 場 合 に お い て 、 同 項 中 「 三 十 日 以 内 」 と あ る の は 、「 五 日 以 内 」 と 読 み 替 え る も の と す る 。
第 九 十 九 条 緊 急 事 態 の 宣 言 が 発 せ ら れ た と き は 、 法 律 の 定 め る と こ ろ に よ り 、 内 閣 は 法 律 と 同 一 の 効 力 を 有 す る 政 令 を 制 定 す る こ と が で き る ほ か 、 内 閣 総 理 大 臣 は 財 政 上 必 要 な 支 出 そ の 他 の 処 分 を 行 い 、 地 方 自 治 体 の 長 に 対 し て 必 要 な 指 示 を す る こ と が で き る 。
2 前 項 の 政 令 の 制 定 及 び 処 分 に つ い て は 、 法 律 の 定 め る と こ ろ に よ り 、 事 後 に 国 会 の 承 認 を 得 な け れ ば な ら な い 。
3 緊 急 事 態 の 宣 言 が 発 せ ら れ た 場 合 に は 、 何 人 も 、 法 律 の 定 め る と こ ろ に よ り 、 当 該 宣 言 に 係 る 事 態 に お い て 国 民 の 生 命 、 身 体 及 び 財 産 を 守 る た め に 行 わ れ る 措 置 に 関 し て 発 せ ら れ る 国 そ の 他 公 の 機 関 の 指 示 に 従 わ な け れ ば な ら な い 。 こ の 場 合 に お い て も 、 第 十 四 条 、 第 十 八 条 、 第 十 九 条 、 第 二 十 一 条 そ の 他 の 基 本 的 人 権 に 関 す る 規 定 は 、 最 大 限 に 尊 重 さ れ な け れ ば な ら な い 。
4 緊 急 事 態 の 宣 言 が 発 せ ら れ た 場 合 に お い て は 、 法 律 の 定 め る と こ ろ に よ り 、 そ の 宣 言 が 効 力 を 有 す る 期 間 、 衆 議 院 は 解 散 さ れ な い も の と し 、 両 議 院 の 議 員 の 任 期 及 び そ の 選 挙 期 日 の 特 例 を 設 け る
長いですがまるまるっと載せてみました。読んでみてわかるように、例えば自民党改正案98条1項で 我 が 国 に 対 す る 外 部 か ら の 武 力 攻 撃 、 内 乱 等 に よ る 社 会 秩 序 の 混 乱 、 地 震 等 に よ る 大 規 模 な 自 然 災 害 そ の 他 の 法 律 で 定 め る 緊 急 事 態のその他って一体どこまで含まれるんだろう?っていう部分です。現行の日本国憲法では41条で国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。とされていて、国会は法律を決める事ができる最高機関です。しかし、自民党改正案99条1項で緊 急 事 態 の 宣 言 が 発 せ ら れ た と き は 、 法 律 の 定 め る と こ ろ に よ り 、 内 閣 は 法 律 と 同 一 の 効 力 を 有 す る 政 令 を 制 定 す る こ と が で き る ほ か 、 内 閣 総 理 大 臣 は 財 政 上 必 要 な 支 出 そ の 他 の 処 分 を 行 い 、 地 方 自 治 体 の 長 に 対 し て 必 要 な 指 示 を す る こ と が で き る 。とされています。
政令とは簡単に言うと内閣が出すことができる命令で、日本国憲法73条6号で規定されています。通常、政令(命令)は法律の規定を執行するための性質と法律の委任に基づいて定める性質の2パターンがあります。(参照:『憲法2 統治 第6版』渋谷 秀樹 , 赤坂 正 (著) pp362~363)しかし、緊急事態宣言が発せられている時は政令が法律と同等の地位を成すという事を考えると事前もしくは事後の国会承認が規定されているとはいえ、それもなし崩し的な運用になってしまうのではないか?という懸念を覚えます。
実際新型インフル等特措法に基づく緊急事態宣言は強制力がないとはいえ、皆さんこぞって守ろうとしていましたよね?。もし、これに強制力を持たせようとするならば営業の自由の制約に対して日本国憲法29条3項に基づく補償が必要となりますが、それをめんどくさがって強く強制力を持たない形で運用されているのではないかな?と私は思います。
常々権利と義務はセットで考えるもんだよと言う人がいますが、評論家荻上チキ氏は著書『未来をつくる権利 社会問題を読み解く6つの講義』の中で、権利と義務は場合によるわけで全く記されていないものにまで一般化して語ることはできないと指摘しています。(参照:pp36)つまり、全ての文脈において契約のような形で権利と義務をセットとして語ることが難しい中で、自民党改正案で掲げている緊急事態宣言(条項)を実際に運用したら暴動がおきるんじゃないかなぁ?と私は思います。
4.終わりに
今回は緊急事態宣言(条項)をテーマにしてみましたが、日本国憲法は社会を考える一番最初のテキストだと私は思います。例えば憲法25条をベースとして考えてみる「睡眠権」や「排便権」(参照:荻上チキ(著)『未来をつくる権利 社会問題を読み解く6つの講義』pp86~90,98~101)といった、今は法律として権利化されていないけれど権利化することで人間としての生活に資したり学校教育における環境の向上に資する可能性のある論点もあると思います。
次回は、憲法の延長線上として自衛隊と国防について書いてみたいと思います。