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地方演劇を真面目に考える会 その1 【会をはじめるきっかけ編】

概要

2021年に和歌山市のクラブゲートと、オンラインで開催した「地方演劇を真面目に考える会」の記録です。以下のHPにて、開催した動画のアーカイブ、アンケートデータや、インタビュー動画をご覧になれます。ぜひご覧ください。

はじめに

2021年に、コロナ禍の中、何かできる事はないかというので、大都市圏以外(以下、非大都市圏と記述します)の演劇事情を調べることをはじめました。
それ以前から、ちょこちょこと調べてはいたのですが、本格的に調査する事ができたのは、公演が中止したりと時間ができたからではあります。
なぜここまで非大都市圏の演劇にこだわるのか?というのは、当然ではありますが、自分が地方演劇をやっているからではあり、それ以前に、自分が色々な演劇論や演劇に関する記事を読んでいる中で、自分がやっている演劇の実情と大きく違うなという実感があったからです。それは当然で、ほとんどの演劇関係の情報は、大都市圏の物です。ひどいものだと、「地方演劇」や「地域演劇」という名目で、東京以外の大都市圏の演劇、つまり大阪や名古屋、福岡の演劇事情だけを書いていて、非大都市圏には全く触れられないものもかなりありました。
そもそも、演劇で使われる、「地方」や「地域」という言葉が、東京以外という意味を含んでいるようです。つまり、自分がやっている演劇に関する情報を探すときに、どう探せばいいか分からない。つまり非大都市圏で行っている演劇活動を指す言葉すらなかったのです。これはかなり驚きました。そもそも自分の地元の和歌山だけでいえば、関西演劇祭や、関西小劇場などという言葉はありましたが、当たり前のように、そこに地元の和歌山の演劇については、まったく言及されるどころか、存在すらないような扱いをされている。ひどいときには、和歌山にも劇団があったんですねと言われる。これまでは、そんなもんかと、ニコッと笑ってはいましたが、これはまずいなあと思っていました。言葉がないうえに、存在すら認識されていない。そんな不満がありました。ただ、これはそういうものかなと自分でも受け入れていました。
 そして、もう一つ大きな理由が、自分が地方演劇を名乗っていいのかという違和感でした。自分は大阪で演劇を勉強して、地元で演劇活動を開始しました。それまでその地域で活動する劇団の公演を見たことがありませんでした。地元で活動を始めてから、その地域の劇団との関りができましたが、それ以降も、演劇を観るのは、ほとんどが大阪か京都です。そして、入ってくる演劇の情報もほとんどが東京や大阪の大都市圏。つまりほとんど影響を地元の演劇から受けておらず、自分が地元の地域で演劇をやっているだけで、地域の劇団なのか? 自分は和歌山の演劇を語っていいのか?という違和感。和歌山の演劇史から分断されている存在ではないのか?という思いがありました。ならば、そもそも地方演劇・地域演劇とはどういう定義であるんだろうか? という事をちゃんと自分の中で明確にしたいという思いがありました。
 そんな思いがふつふつとある中で、ちょうどこういった試みをする機会があり、本格的にアンケートなどを実施することにしました。多くの劇団の方にご協力いただきありがとうございました。正直、自分のいたらなさすぎて、全くこのアンケートを有効利用できていないと感じています。しかし、この貴重な資料を何とか残さなくてはなと思い、重い腰を上げてこれを書いています。少しでも興味がありましたら、ぜひご覧ください。また、忌憚なき意見をいただけましたら幸いです。

アンケート調査方法

総務省が定義する「大都市」の所在する(北海道・宮城県・埼玉県・千葉県・神奈川県・静岡県・愛知県・京都府・大阪府・兵庫県・広島県・福岡県及び、東京都)を除いた各県にある、劇団を対象にアンケートをメール・DMで依頼。
また、2020年1月時点を起点に3年間の間に公演・活動実績がみられる、メールアドレスが分かる劇団・団体にアンケートへの協力を依頼。劇団調査方法は、「コリッチ・シアターリーグ」への登録団体。グーグル検索で「【都道府県】 劇団/演劇」で検索して5ページ以内にヒットした演劇団体。
劇団の定義は、「劇団」「演劇」と自己定義、言及しているかどうかを線引。
高校演劇部・学生演劇部・大衆演劇・児童劇団・ミュージカル劇団などは除外 基本的にストレートプレイをメインにしている劇団のみ。
劇場数と公演数はコリッチ登録数。
アンケート実施日程 11月より送付を開始し、12月31日をもって締め切り
アンケート送付数 302件(該当劇団340団体 連絡先が分からない、できない団体38団体 )
アンケート有効回答数 64件

各県の劇団数

各県の劇団にアンケートをお願いする際に調べた結果の数値を表とグラフにまとめたものはコチラ

アンケートの回答をまとめたものはコチラ

調査方法について追記

どの劇団にアンケートをお願いするメール・DMを送るかの線引きをするために、まずは、大都市圏と非大都市圏に分けるために、総務省の定義する「大都市」を外すことにしました。
本来は、大都市にも同じアンケートを行って、その差を比較するという事が有効だと思うのですが、物理的に数が膨大すぎて、純粋に非大都市圏に拠点を置く劇団のみにしました。
また、調査方法も、個人でできるネットを使ったものに限定することにしました。知り合いのいる地域や、その地域の詳しい人に聞いて探すと、とんでもない時間と労力になるのと、地域によって数のバラつきが出てしまうのをさけて、公平に、ネット、SNSに情報がある劇団とすることで、同じ条件下での劇団数の方が、今回は合っているかなと考えました。
また、ネット上に情報はあるものの、すでに活動休止、もしくは休眠、解散した劇団もかなりの数がありましたので、3年以外に活動実績があることと線引きしました。
実際には、これに漏れる劇団がかなりあるであろうし、3年以外に活動実績があるが、ネット上で解散、休眠を言及していない団体もあると思われますし、実際自分の知るうえでありました。
しかし、今回は、あえてそれも各県劇団数に含めています。
なので、これが本当に大都市圏以外の劇団数の実情かと言われれば、かなりずれているところもあると思われます。

つづきます。
その2はコチラ


劇作家 松永恭昭謀(まつながひさあきぼう)

1982年生 和歌山市在住 劇団和可 代表
劇作家・演出家
劇団公式HP https://his19732002.wixsite.com/gekidankita

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