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哺乳類の進化14 - Science, 2023, ズーノミア特集①

「哺乳類の進化」シリーズで、論文紹介を約2年ぶりに再開することにしました。以前は、gooブログに掲載した記事をこちらに転載する形を取っていましたが、今回から、noteオリジナル、noteのみで公開していく予定です。

哺乳類進化の大規模な研究として、米国でズーノミア(Zoonomia)というプロジェクトが進められています。動物園で飼育されている各種の哺乳類から遺伝子を回収してゲノム解析を行ない、ヒトや既知の種も含めて240種以上の哺乳類種の遺伝子配列を比較解析して、哺乳類の多様性やヒトの病気に関する新たな知見を得ていこうという研究です。2023年に、Science誌にズーノミアの特集が掲載され、11報の論文が公開されました。その中のフリーで閲覧できる論文からいくつかピックアップして、紹介していきたいと思います。

その前に今回は、本特集のプレスリリースを元に、11報の論文の概要をメモしておきます。

① 髄芽腫患者を研究している研究者らが、脳腫瘍の増殖を加速させたり、治療に抵抗性を示したりする可能性があると考えられる、ヒトゲノムの進化的に保存された部位にある変異を同定した。この結果から、このデータとアプローチを疾患研究に用いて、疾患リスクを高める遺伝的変化を容易に発見する方法が明らかになった。

② 並外れた脳の大きさ、優れた嗅覚、冬季の冬眠能力など、哺乳類の世界におけるいくつかの例外的な形質に関連するゲノムの部分が特定された。また、保存されたゲノム部位の遺伝的変化が少ない種は、特に絶滅しやすい可能性があることが明らかになった。この情報は種の管理方法を理解するための基礎となり得ると著者らは述べている。

③ 約6500万年前、恐竜を死滅させた小惑星が地球に衝突する前に、哺乳類がすでに変化し分岐し始めていたことが示された。

④ Zoonomiaデータと実験的解析を用いて、ヒトに特異的な10,000を超える遺伝子欠失が検討され、その一部がニューロンの機能と関連付けられた。

⑤ バルトという名の1920年代の有名なそり犬がアラスカ州の厳しい地形の中で生き延びることができた理由の遺伝的説明が明らかにされた。

⑥ ゲノム構造のヒト特異的な変化が発見された。

⑦ 脳の大きさに関連するゲノム領域が機械学習によって特定された。

⑧ ヒトゲノムの調節配列の進化が説明された。

⑨ ゲノム上を移動するDNAに焦点が当てられた。

⑩ 歴史的に小さな集団を有する種は現在絶滅のリスクが高いことが明らかになった。

⑪ 約500種の哺乳類の遺伝子の比較でオーソログとパラログの解析が行われた。

次回から、具体的に論文の中身を見ていきます。

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