遺伝子検査をやってみたが、健康実感とどれだけ符合しているのだろうか?

唾液を郵送で送るだけで比較的リーズナブルな価格で遺伝子検査を受けられる世のなかになりました。体質や病気に関わる遺伝子のSNP(一塩基多型)を調べることで、様々な体質や病気のなりやすさの傾向が判定できるというものです。たまたま私もこれを受ける機会が最近ありました。で、結果を見たのですが、予想とだいぶ違っていたのです。つまり、身体の中で強いところ弱いところを自分としてそれなりに自覚しているのですが、その健康実感と遺伝子検査の結果が符合しないのです。

例えば、最近私が一番気になっている健康の問題は、直腸がんです。以前から大腸ポリープができやすくて、見つかったらその都度除去してもらっていました。そして、3年前に初期の直腸がんが見つかり、手術で切除しました。その後も、同じ場所からポリープが再発してくるので、粘膜を内視鏡で除去していましたが、元から取ったほうがいいということになり、今年の8月に再度手術で除去しました。実は、父も10数年前に大腸がんになり手術を受けています。だから、大腸がんになりやすい体質を、父から遺伝的に受け継いでいるように思われます。

それで、遺伝子検査がどうだったかというと、大腸がんについての遺伝型の発症リスク(日本人平均との比較)は、0.56倍という数字でした。つまり日本人の平均より大腸がんになりにくい遺伝型を持っているという結果だったのです。これじゃ全然あてにならないし、自分の健康を考えるうえで参考にもなりません。どういうことなのでしょうか。

検査結果をさらに詳しく見てみると、大腸がんの発症リスクに影響することが報告されている11個のSNPが調べられていました。それぞれのSNPと遺伝子名、私の発症リスクを列挙していきます。rs6687758(DUSP10 - QRSL1P2、0.93倍)、rs1321311(MIR3925 - LAP3P2、0.96倍)、rs6983267(SRRM1P1 - POU5F1B、0.89倍)、rs10795668(CHCHD3P1 - HSP90AB7P、1.14倍)、rs704017(ZMIZ1-AS1、0.92倍)、rs12241008(VTI1A、0.91倍)、rs1535(FADS2、0.84倍)、rs10774214(RPL18P9 - CCND2、1.02倍)、rs7229639(SMAD7、0.94倍)、rs1800469(TGF-β1、0.99倍)、rs2423279(SRSF10P2、0.92倍)となっていました。個々のSNPごとの発症リスクはだいたい1.00倍近くなので、大腸がんリスクに大きな影響はないように見えます。そして、11個のSNPの発症リスクをすべてかけ合わせたら、なんと、さきほどの数と同じ0.56倍になりました。そんな単純な計算で、疾病ごとの発症リスクが決められていたのです。

1個のSNPで大腸がんになりやすくなる遺伝性大腸がんというのは確かにあるようです。しかし、私が調べたところではそれらは上記したSNPとは別のもののようです。それ以外の家族集積性大腸がんといわれるものは、SNPをいくつか単純にかけ合わせたところで発症が簡単に予測できるようなものではないのかもしれません。もっと他のSNPが強く影響しているのかもしれません。さらに遺伝性の要因以外で、発生・加齢の過程における、がん遺伝子の活性化やがん抑制遺伝子の不活化の状況、環境因子や免疫系の働きの強さも発症に影響するでしょう。それらが親子で似てくる可能性も否定できません。

遺伝子検査はおもしろいのですが、結果をうのみにしないほうがいいですね。よく考えてみるきっかけにはなりそうです。

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