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#2 恋は盲目とはまさにこういうこと

2022年2月のお話。
ようやく彼にリアルで会える日が来た。
大学生時代に留学して以来、久しぶりに乗る飛行機。
バッチリメイクをして、気合いを入れて会いに行った。
積雪の影響や、飛行機の機材トラブルがあって到着が1時間ぐらい遅れてしまって、その間も「会えなくなるんじゃないか」って泣きそうになるぐらい、彼を待ち望んでいた。

現地に到着すると雪が降っていて、今までに感じたことのない寒さだった。
空港まで迎えに来てくれていた彼。
パーカーにジーンズにロングコート。そして手には…紙袋。
お土産でも用意してくれたのかと思っていたけど、その中身は彼の私物だった。小さいカバンがなかったのかな。
でもそんなことも気にならなかった。それぐらい彼に夢中になってた。

夜ご飯をごちそうしてくれて、それまでお互いマスクをしていたんだけど、
ようやくそこで顔を見せあうことができた。
…正直、私のタイプの顔だった。私の大好きな高橋克典似。
…マスクをしていた方が、よりタイプの顔だったけど。
彼は私の顔を見た瞬間、驚いたように「かわっ…」って言われたんだけど…
それは「可愛くない」って言おうとしていたのかな。
「可愛い」って言い直してくれて、喜んじゃった。
一緒に初めてご飯を食べたんだけど、なんていうか…食べ方に違和感があった。口を開けて食べる時に「そこまで口の中って見えるものかな?」って思うぐらいに口を開いて食べる感じ?伝わるかな。
なんだかお上品な感じではなかった。
でもそんなことも気にならなかった。それぐらい彼に夢中になってた。

彼の家に連れて行ってくれた。
40代、役職者独身の男性にしては…かなり年季の入ったアパートに住んでいた。おそらく8畳ぐらいの1K。
駅からも距離があるし、家賃は4万円以内だろう。
鍵もかなり簡易的なもの。容易に泥棒に入られてもおかしくないなって感じ。セキュリティが甘め。
部屋に入ってみると、洗濯機がない、テーブルもない。
ギーギーと鳴るドアに、ボロボロの家具、敷きっぱなしの布団。
冷蔵庫は壊れており、物置状態で、椅子も脚と座面部分が壊れている。
かろうじてエアコンは稼働しているが、効きが悪い状態。
洗い物もそのまま、炊飯器には保温し続けられたカチカチの白米。
お風呂は浴槽が使えないほど汚い状態で、トイレはウォシュレットもない。
ごみもまとめられてはいるが、捨てられていない。
お金はあるはずなのに…40代独身男性の家って…こんなもの?
なんとなくウシジマくんの世界観を思い出した。

正直に聞いてみた。
「ねぇ、家具とか壊れてるのとか多いけど…不便じゃないの?買い変えた方がいいんじゃない?」
「来年の6月には更新だから、引越そうと思ってるんだ。その時はお前との同棲も考えてる。そのタイミングで全部変えようと思って。あと、自分一人の為なら全然これで良くて、未来の家族の為に貯金してるんだ。」
ちゃんと未来の為に貯金してる男性だなんて…私と同じじゃん!!
もしかしたら、お金の価値観も合うのかも、と思った。

…結局、その部屋で…愛し合った。
でもそんなことも気にならなかった。それぐらい彼に夢中になってた。

洗濯機がないのでコインランドリーへ。
これが初めてのデート。
コインランドリーに行く途中で、いろんな話をしてくれた。
その中で印象的だったこと。
「俺が働いてるのはここだよ」
と彼が指し示した先には、しっかりとした門構えの施設があった。立派な施設だった。
こんな職場で働いているのであれば、さぞかし社会的にも信頼されている人なんだろうなと思った。
「へぇ、すごいね」と私が言うと、
「普通なら教えないけど、将来見据えてるからこそ、知っておいて欲しいと思って。その方が安心するだろうし、嬉しいでしょ?」
と言われ、その言葉に嬉しくなった。
信頼してくれてるんだなって思えて、私ももっと彼を信じたいと思った。

会話の相性、身体の相性、いろんなものが重なった気がして。
私は…彼に沼っていった。

さぁ、何の事件もなく、平和で幸せだったのはここまで。
ここからの私は、抜け出せるのに抜け出せない苦しみに溺れていくことになる。

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