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今日から使えるサメの雑学編⑤〜サメってママのおっぱい飲むの?〜

一つ前の記事で、胎生のサメはバラエティに富んだ繁殖方法を持っていると書きました。

文字数の都合上、詳しく書くことができなかったのですが、私はその繁殖方法に興味を持ち、大学院での研究を始めました。

本日は胎生の板鰓類に着目し(卵生の種類もいます)、お母さんザメのお腹の中にいる赤ちゃんザメが何を栄養にして成長するのか、ユニークな繁殖様式と合わせて書いていこうと思います。

ということで、今日の記事は私の修士論文のイントロ的な感じで読んでくださると幸いです。

板鰓類と書くとなんだか堅苦しくなってしまうのでここからは板鰓類とは書かずにサメにします。
ここからは「板鰓類」=「サメ」=と思って読んでいただけると嬉しいです。

○サメと人って何が違うの?

哺乳類は妊娠すると胎盤という特殊な器官によってお母さんとお腹の中の赤ちゃんが繋がっています。

赤ちゃんはいろいろな能力が未発達なので、胎盤やへその緒を経由して、お母さんの力を借りながらお腹の中ですくすく育ちます。

一方で、胎生のサメの場合も同様に赤ちゃんザメも母ザメの力を借りなくては生きていけません。

胎生のサメはどのような形で母ザメから力を借りるかによって繁殖様式を分類することができます。

その繁殖様式はどれもユニークでバラエティに富んでいて大変面白いです。

ということで、ここからはちょっぴり大事な話をしてからイラストや写真を使ってなるべくわかりやすくサメのユニークな繁殖様式を解説いたします。
※小学生でもわかるように書くため、専門家からはちょっとここは言葉が違うだろうと指摘がありそうですが気にしない気にしない(笑)

それでは早速参ります!

○サメにも子宮があるの?

胎生ザメのそれぞれの繁殖様式のご紹介の前に、ちょっとだけ大事なことを書こうと思います。

「サメの子宮」についてです。

胎生のサメの赤ちゃんは母ザメの子宮の中でスクスク育ちます。

「え?サメに子宮があるの?」

サメにおちん○んがあることを既にご存知の方はそれほど驚かれないとは思いますが、実はサメにも子宮があります。

ちょっぴりグロいですが、私が研究に使うサメちゃんを捕まえに行った時に撮った妊娠しているサメの子宮を解剖している写真があるので、まずはそちらをご覧ください。

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(妊娠しているイタチザメの子宮を解剖している様子)

サメの種類によって子宮のサイズは異なりますが、妊娠しているサメの子宮はだいたい全長の3分の1ぐらいあります。結構大きいですよね。

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ピンセットの先からちょっぴり顔を出しているのはイタチザメの赤ちゃんです。くりくりお目目でなかなかキュートです。

サメの受精卵はこの子宮の中で孵化し、栄養を取りながら少しずつ成長していきます。

ということで前置きがかなり長くなってしまいましたが、ここからは胎生のサメの繁殖パターンを簡単にご紹介致します!

○サメって胎盤があるの??

舞台は妊娠している母ザメの子宮の中です。
胎生のサメのいろんなタイプを紹介しつつ子宮の中で何が起こって起こっているのか覗いていきましょう。

①卵黄依存タイプ

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このタイプのサメの赤ちゃんは母ザメのお腹(子宮)の中で赤ちゃんの体の外に引っ付いている卵黄から栄養を摂取して成長します。

赤ちゃんの体の外に引っ付いている卵黄が卵黄柄という管のようなものを通って体の中に入っていき、腸で卵黄を吸収します。

ジンベエザメやアブラツノザメという種類がこのタイプに属します。

実物はこんな感じ。

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(ちょっとタイプは異なるのですがイタチザメの赤ちゃんです)

②卵食タイプ

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卵食タイプのサメの赤ちゃんは子宮内に入ってくる栄養たっぷりの無精卵をパクパク食べて育ちます。

イラストにあるように卵をパクパク食べるのでお腹がぽっこりするのが特徴です。
(絵心なさすぎて上手く書けなかったんですけど伝わって欲しい、、、(笑))

実物はこんな感じです(笑)

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(ホホジロザメの赤ちゃん 美ら島財団佐藤圭一先生の写真より)

ホホジロザメがこのタイプに属します。

ただ上の写真を撮った佐藤圭一先生のグループがホホジロザメの赤ちゃんはどうやら無精卵意外にも何かを食べているということを突き止めました。

サメ界隈に衝撃が走る研究だったのでリンクを貼っておきます。興味がある方は一度読んでみてください。
※個人的にはこの記事を読み終わってから読む方がめちゃくちゃ理解できるのでおすすめです。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/091500350/?ST=m_news

③共食いタイプ

共食いタイプのサメの赤ちゃんは②の卵食タイプの派生系で、子宮の中にいる兄弟の赤ちゃんザメを共食いして成長するタイプです。

②のイラストの無精卵がサメの赤ちゃんになっただけなのでイラストは割愛します。

孵化してすぐに兄弟の殺し合い。
あまりにも残酷すぎる、、、
まさにバトルロワイヤルですね(笑)

ただ、最も強い個体を残すためには良い方法なのかもしれません。

シロワニという種類がこのタイプに属しています。

④子宮ミルクタイプ

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子宮ミルクタイプのサメは子宮の壁面から分泌されるミルクのような物質を摂取することで成長します。

イラストのように子宮の中は本当にミルクのような乳白色の液体が満たされています。

この頃のサメの赤ちゃんは「外鰓(がいさい)」と呼ばれる特殊なエラが飛び出していますが、この外鰓の機能についてはイマイチ分かっていません。
イラストが雑ですいません(笑)

サメにはおっぱいがないので子宮の壁面からミルクを分泌することで授乳を行なっているといった感じです。めちゃくちゃユニークですよね。

ただ、授乳と書きましたが、サメの赤ちゃんがこのミルクを口から飲んでいるのか、エラから取り込んでいるのかは多分まだ明らかになっていません。

ちょっぴりグロいですが子宮ミルクの実物はこんな感じです。

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(妊娠したアカエイの子宮を解剖したときの写真。真ん中らへんの乳白色の液体が子宮ミルク)

アカエイやナンヨウマンタなどがこのタイプに属しています。

⑤胎盤タイプ

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「た、、、胎盤だとー!?!?」

胎盤タイプのサメはまさかの哺乳類と同じように胎盤とへその緒を使って成長します。

サメ界にもいたんですね、、、(笑)

ちなみに実物はこんな感じです。

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(シロシュモクザメの赤ちゃん ミミズみたいなやつがへその緒、右下の灰色の塊が胎盤)

胎盤は子宮の壁に引っ付いており、へその緒は赤ちゃんの胸ビレの間の部分に繋がっています。

シュモクザメやオオメジロザメなどがこのタイプに属しています。

大学院修士課程で私はこのタイプのサメの研究をしていました。

明日以降の記事でも胎盤タイプのサメが出てくるので頭の端っこに留めてくださると嬉しいです。

○まとめ

今日は胎生のサメの繁殖様式に関して、5種類のタイプをイラストや写真と一緒にご紹介致しました。

結構ボリューミーだったので最後にもう一度まとめます。

①卵黄依存タイプ(ジンベエザメやアブラツノザメ等)
②卵食タイプ(ホホジロザメ)
③共食いタイプ(シロワニ)
④子宮ミルクタイプ(アカエイやナンヨウマンタ)
⑤胎盤タイプ(シュモクザメやオオメジロザメ)

この世の全ての生き物の胎生の生き物を見てみても、今のところこんなにバリエーションに富んだ種類はサメやエイ以外いません。

なぜこんなにサメやエイの繁殖様式が多様化したのかまだはっきりとはわかっていません。

ただ一つ言えるのは、これだけの選択肢があったからこそいろんな環境の変化を乗り越え、約4億年前より姿形をほとんど変えることなく生き残ったのだと思います。

5つの記事にわたって、第1弾「今日から使えるサメの雑学編」ということで記事を投稿させて頂きました。

水族館で披露できる豆知識からかなり専門的なところまでたっぷり書きましたが、少しはサメのユニークな生態を知り、興味を持っていただけましたでしょうか。

ということで第1弾はこの記事で終わりとさせて頂きます。

次の記事からは第2弾として「わへいはなんの研究してたの編」をアップしていこうと思います。

雑学編を読んでサメに興味を持ってくださった方、もともとサメ好きの方、そういえばわへいってなんの研究してたの?って思った方等々、少しでも多くの方に読んでいただけたら嬉しいです。

今日はかなりボリューミーな内容でしたね。
ちょっと読むの大変だったと思います。
本当にありがとうございます。

お忙しいところ最後まで読んでくださりありがとうございました。

🦈わへを🦈

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