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とある焼肉屋さんのビジネスシミュレーション

とある焼肉屋さんの話として仮定して、今日はビジネスシミュレーションをしたい。

渋谷宇田川町、築10年ちょっとの商業ビルの中空階。以前は90席以上の焼肉屋、福岡からついに東京進出。店舗数は12店舗とまあまあな規模の会社だ。その焼肉屋が廃業して居抜きしたのか、80席程度に間引いて開業予定。坪単価は最低でも3万円、交渉ミスると4万円以上も考えられる。サイズは42坪、最低でも130万、もしかすると170万に近い家賃ということも考えられる。実はこの条件というのが、僕らが銀座に出そうとしていた条件と非常に似ている。コロナで断念して、内装の一部まで終わっていたので、数千万円のロスをしてでも損切りした。

家賃170万円で客席80席程度とすると、スタッフ数だけでも最低でも10名は必要だ。すべて社員として雇ったと考えると、一人25万としても250万。付随するコストなどを入れていくと最低でも700万円〜800万円。売上2000万絵とすると、肉コストで800万円、その他の食材コストなどを入れていっても切り詰めてギリギリの商売ラインだと思う。売上2000万円とは25日営業ベースで一日80万円。この立地だと客単1万円では集客が厳しい、おそらく6000円〜7000円のラインだろう。そうすると1日120名の集客が必要だ、80席で考えると一日1.5回転。相当ハードルが高いことが分かる。

僕だったらWAGYUMAFIAの幻の銀座店同様にこの物件は損切りすると思う。上振れする可能性はかなり低く、下振れしたら大赤字になることが目に見えるのと、客席数が多すぎて必要スタッフが集まらないリスクが高すぎるからだ。今までは緊急事態や時短やらで、人切りしていた飲食業が今は逆に人材不足になっていて、すべてのプレーヤーが人を探している状態になっている。そんな状況で人がいないと回らないビジネスというのは成り立ちにくい。そして立地条件リスク、顧客単価があげられない地域での出店は、素材ドリブンな焼肉業態のようなところは出さない方がいい。結局どこをいじりだすかというと素材のクオリティを下げていくからだ。きっと福岡からこの場所で開業した焼肉チェーンも、このジレンマに陥りそうになって撤退をかけたのだろう。損切りして新しい物件を借りても3000万〜50000万程度で開業できるだろう。坪数もその半分、家賃も半分以下、スタッフ数も3名〜4名で回せ、そして1万円以上の高単価を見込める場所。宣伝力を持っているのならなおさらだ、生まれ変わった方がいいのだ。

つい最近、とある餃子チェーンに行ってきた。美味しい、安い。でも、職業柄オペレーションをずっと見てしまう。キッチン2名、フロア1名。3名で20名程度を回している。ランチ時はもうとにかく休みなく働いている。客単価が少ないビジネスというのはどこかに弊害が来る。焼き場のあのおじいちゃんが倒れちゃったら、このランチサービスはどうなるのだろうか。豚肉の値段が、今年のUSの牛タンのように値上がりしたら、とてもこの値段で餃子は出せなくなるだろう。食材は世界とリンクしている話はよくこのコラムでも触れている。今日のスタッフにシェアしたニュースがこちら。

冒頭の、とある仮定の焼肉屋のシミュレーション結果は、僕的には撤退という判断となったがこれからの日本の飲食店が押さえなくてはいけないマストポイントはこの3ポイント。

・高単価が取れる立地条件
・コンパクトなスペース
・スタッフ数に依存しない

この3つだと思う。もう少し踏み込んで書くと、ここに店舗スペース以外からお金を生み出す能力があればもっといい。WAGYUMAFIAの場合は、プライベートブランドの開発、そしてブランドの海外ライセンス料、肉などの食材輸出業が加わる。僕らのような高単価な業態でさえ、国内の飲食業ビジネスだけで経営していたらこの危機を乗り越えられなかったと思う。もっとクリエイティブに攻めていかないと、僕らはこれからますます高くなる和牛を支えられなくなると思っている。


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