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生き物としてのエンターテインメント

常々現場が一番大事だと思っている。スタートしたときはシェフに任せて、僕は以前にプロデュースしたCOPON NORPのときと同じようにカウンターサイドにいた。転機が来たのは西麻布のWAGYUMAFIA THE CUTLET KITCHENを作ると決めたときだった。そこから僕はキッチンインするようになった。あれから7年が経って、毎日僕はキッチンに立つようになった。つくづく天職だと思っている、もてなされるのは苦手だが、基本的にもてなすことが好きな家に生まれた。だから毎週のようにホームパーティをしていた。人が来ない日はほぼなかった。

今年もF1ジャパングランプリが終わった。鈴鹿に行こうとみんなから誘われるが、僕は鈴鹿で走っているレーサーや家族の日本での食事を作っている。東京ドームに行く代わりに、ショー終演後に僕らのレストランにやってきてくれる。セレブリティだけではない、世界から本当にたくさんの生産者がやってくる。そして世界中のレストランオーナーが毎日集まってくる。月の半分はワールドツアーで海外をまわっている、そんな僕だがふと思うことがある。これは日本にいた方がワールド・ツアーできるんじゃないか。それぐらい毎日万博を開催しているかの如く、色々な国の人達が集まってきてくれるのだ。

昨日は羅臼町役場から環境省に出向となった友人がディナーに参加した。偶然にも12カ国から集まったゲストたちと彼の東京デビューを祝うことになった。ハリウッドスターがいて、アジアの大女優がいて、そして世界の海をダイブしているプロダイバーがいて、そこに知床を世界に紹介したい彼がいる。実にWAGYUMAFIAらしい光景だ。そんな彼とショーの終了後に、いきつけのTAMAで一杯飲むことになった。彼から「最初からこういう状況になることを想像していたか?」と聞かれた。あの時も今も僕は必死だ。だから常に足りていないと思っている。何が改善できるのか、何がもっと良くできるのか。眼の前で繰り広げられている17年間変わらずに同じ場所で改善しつづけているTAMAのオーナーをみていると、この作業は終わらない作業である。

ちょうどロンドンからレストランオーナーが来ていた。2017年ぐらいから一緒にポップアップもしてくださったりと公私ともにお世話になっている友人だ。そんな彼が定期的にチェックをしてくれている。友人のストレートな意見は大切だ、彼が一言「オーナーがしっかりメンテナンスしているレストラン」との評価をくれた。組織が出来ていく姿をとても嬉しく思ってくれているらしい。レストランは生き物である、そして僕らはそのレストランをショーアップさせてエンターテインメントというステージにしている。だから普通のレストラン生き物論とは、レベルが違うぐらいその鮮度というか、生物としての鼓動をイメージするのが大事だ。

だから僕は毎日現場に立つ。



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