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おにぎりプロジェクト③鹿児島「八千代伝編」

いよいよおにぎりプロジェクトも第三弾。このプロジェクトを共同で主宰している成澤シェフと鹿児島にやってきた。インスタグラムのストーリーで到着の旨をあげると、ナポリ出身のイタリア人より「日本のナポリへようこそ」とメッセージが来た。そうか、鹿児島はナポリなのかぁ。

鹿児島は尾崎牛を屠畜していたナン畜があるため、何度か訪れたことはあるがしっかり訪問するのは始めてだ。今回は有名な薩摩半島ではなく、東側に位置する大隅半島サイドだ。大隅半島は素晴らしい自然に触れられる美しい場所だ。噴煙に近い、水蒸気があがる桜島を背景に美しい地中海のような穏やかな海が広がる。友人がナポリと言ったのも何となく分かる。

今回は垂水という1万人ちょっとの町、その顔となる焼酎蔵の八千代伝酒造が舞台だ。成澤シェフがこよなく愛している焼酎メーカーで、僕も蔵元さんから数本送っていただき堪能させて頂いた。酒造メーカーで日本で唯一農業法人になった蔵元でもある。その四代目の八木健太郎さんは、今の焼酎業界の勢いを象徴するかのように若くて志が高い社長だ。洋酒普及の煽りを受けて生産中止をした1974年、そこから30年後の2004年に三代目であるお父さんと一緒に蔵の復活をスタートする。

芋焼酎に欠かせない良質な芋の調達、これがなかなかうまく行かなかった。どんなに頼んでも、いい芋を新参者には渡してくれない。そこで自らが作り初めて、今では芋、米、麦の3種類の原材料を自家生産する。そしてついに芋生産については100%の完全自給を実現し、晴れて酒造メーカーとして初の農業法人取得したのだった。その自慢の畑をご案内頂いた。それこそミレーの絵画をみているかのような美しい田園風景、育成方法の説明を深堀りして聞いていくと彼の作物への愛が垣間見えた。

僕らのおにぎりプロジェクトは日本の朝の原風景である、日の出の姿を見せたいということもあり、毎回早めのスタートをしている。早いスタッフは3時半から現場入する。そして朝の6時からインスタグラムでライブをする。NARISAWA公式アカウント、そして僕のWAGYUMAFIA公式アカウントからライブ配信するのだが、今回は二人の盟友である照寿司の渡邉大将も奥さんと飛び入り参加してくれた。彼のアカウントも交えて配信すると合計で4000人程度の海外の方々へ、おにぎりプロジェクトの製作過程を披露することができた。

そのライブの中で、前回の宮泉銘醸からコンテンツとなったのは、ライブで蔵見学するバーチャルツアーだ。成澤シェフ、渡邉大将とともに八木社長の話を伺う。そして世界中からライブで質問に答えていくという名物コーナーだ。海外の方々とのやり取りの中で、八木社長がこんなことを話した。

「僕らはスピリッツメーカーだとは思っていません。どちらかというと日本酒でもなく、スピリッツでもない。その間のポジション。それは焼酎というものが、米麹を基点にしていることと、うちのように朝採れのフレッシュな芋を芋切り作業なしで発酵させ、蒸留することで得られる香りと舌の上で感じる旨味がある。ここが蒸留効率が高い穀類ではなく、芋を使っている魅力だ。この香りと旨味のバランスで、十分お寿司などにも合う食中酒としても楽しむことができる。そういうスピリッツは焼酎だけだと思う。」

なるほどなぁ、時代のトレンドに合わせてあえて25%に加水して落とし、そして僕らはソーダとともにこの新しい時代の焼酎をいただく。これが実に食事に合うのだった。このおにぎりプロジェクトのもう一つの目的は日本を世界に紹介するということ。この焼酎はどうやって世界に伝えていこうかとても悩んでいたが、八木社長の一言が、実に腑に落ちたようだ。ちょうど八千代伝に使われている高隈連山から流れ出る美しい水のように、僕の灰色の細胞をカラフルに変えてくれていったのだった。

今回も多くの方々のご協力を得て、このおにぎりプロジェクトを実現することができた。この場を借りて、ご参加いただいたすべての方々に感謝したい。次回は5月30日、いよいよ和歌山に上陸する。僕らの愛する平和酒造だ。


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