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近代的な納骨堂を紡ぐ数奇なご縁

親父の百箇日法要が終わった。墓の場所などすべてお袋が仕切って、丁寧に決めていった。長年連れ添った伴侶が眠る場所である、彼女がしっかり決めた方がいいとそう思った。選ばれた場所はWAGYUMAFIAからも数分の近代的な墓だった。今までの墓までの距離はとても遠かったので、僕らも時折足を運んで親父に会いに行けるそんな場所だ。ピアノの月謝を月初めに持っていかないとぶっ飛ばされるとか、これと決めたルールは絶対曲げない人だが、小割り抜くことで貫く彼女のセンスは素晴らしい。

法要の終わりに住職からご挨拶される。「WAGYUMAFIAの浜田さんですよね?」知り合いの酒屋さんと同級生で堀江の誕生日会にもいらしたという。WAGYUMAFIAのTシャツも持っています、と伝えてくれて、一気に親近感が湧いた。お袋に聞くと初代住職は飯田の出身、これもお袋の家の地元である。菩提寺の阿弥陀寺などの修行を経て全国行脚しながら芝の増上寺にたどり着いたらしい。現住職は分けとく山の総支配人をしていた経歴もあり、実に不思議なご縁だ。親父もお袋もこの手の引きが強い。いつも数奇なご縁の巡り合わせに親父は「へーそんなことあるんだねぇ」と眼をまん丸にして驚き喜んでいた。そんな日の夜の赤ワインは美味そうだった。

「ご縁だよなぁ」

遺影の親父が少し笑っているような気がした。帰宅すると、妻が「あなたのお母さんもお父さんも人を大切にする人たちだからね」と短くも重い言葉を残してくれた。この人には色々と見えているのだろう。僕は親父の墓が近所になったことがとても嬉しい。歩いてもいけるし、墓は近い方がいい。単純すぎる感想かもしれないのだが、そう思うのだ。

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