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家族愛溢れる中村兄弟と行くウルトラハシゴ渋谷編

久しぶりにウルトラハシゴである。

江戸っ子なちょい早時間から繰り出して、その日の気分と仲間のフィーリングで店選びをしていく。日本でしかできない究極のライブエンターテインメントツアーである、それが大人のウルトラハシゴ。今回は渋谷、そしてハシゴパートナーはラーメン界のベストブラザーこと中村兄弟だ。ラーメンの天才職人こと弟の栄利さんがニューヨークに帰国する直前ということもあって、ラストミニッツなハシゴを計画。兄でAFURIの代表の比呂人さんも参加して、うちの家族とともにネオ東京な渋谷を行脚する。

最初はSG CLUBで、レモンズサワーを2杯でアペロなスタート。普段はなぜか空港で会うオーナーの後閑信吾もたまたま居合わせて久しぶりのキャッチアップ。そこから比呂人さん曰く数十年ぶりじゃないか?というスペイン坂を下る作業を終えて、向かうは渋谷交番横の兆楽。世界で一番下世話な餃子と味変ルースー焼きそばを瓶ビールとともに摘む。ハシゴツアーにとって餃子とこの摘みな焼きそばの存在は、実にありがたいリリーフピッチャーのよう、序章には欠かせない選手たちだ。

さくっと30分、次は麗郷で腸詰めとシュウマイとシジミである。ここでも珍しくビールで繋ぐ、キッチンが見えない二階のラウンドテーブルだったが、客の喧騒とレトロなシルバープレートが、一階の雰囲気にも勝るとも劣らない老舗らしい雰囲気を醸成させる。

そこから鶏に行くか、寿司に行くか?こんな贅沢な悩みを語れるのもハシゴツアーのいいところであり、また食の都ネオ東京渋谷ならではの会話だ。栄利さんがこういう「人と仲良くなったなぁという目安の一つは、雑談ができるかどうかなんです」と彼はそういう。雑談とは最高の会話だ、通奏低音みたいなものでこの雑談が気持ちいいかどうか、ひいてはできるかどうかが、楽曲のハーモニーにも繋がってくる。「ニューヨークのお店は今はスタッフが回しているんですか?」との僕の質問に「そうなんです、いいチームがいて。みんなお母さんの料理で育っている。」聞けば、母親の料理を食べて育った人たちとそうでない人たちは違うらしい。

なるほど、彼らもそうだし、僕ら夫婦もそうだが、みんな家庭の味で育っている。小学校のときにオーストラリアから戻ってきて知り合いの家で食事をすることがあった、共稼ぎの夫婦の家だったと思う。レンチン料理のオンパレードでびっくりしたことがあった。アメリカで留学を始めたときは、「何をCOOKする?」という表現を使いつつ、さあどうだと見せられたのはTV DINNER(冷凍食品)が詰まったGEの冷凍庫だった。そこから僕は毎日彼らに料理をすることを始めたんだっけ。ドンキホーテ前で記念撮影をしている横を、そんな家族愛あふれる話をしながら通っていく。

たどり着くのは魚屋がやっている立ち食い寿司だ。なんともない普通の寿司屋なのだが、働いて三年になるダナン出身のベトナム人女性の握りがなんとも新しい時代の幕開けのような気がして心地がいい。食が好きかどうかというのがリトマス試験紙になるような店だ。にわかファッショナブルな食通もどきを連れて行くと「浜田くんはこの寿司で本当に満足して人を連れて着ているの?」と言われて面食らったことがある。僕は「照寿司」のなべちゃんや「はっこく」ヒロなど、寿司職人の友人とも一緒にこの場所を訪れる。みんなこういう寿司がいいよねぇっという顔でオーダーが止まない。今日の兄弟も眼をキラキラさせながら、次々とオーダーしていく。お好みの寿司の魅力は、自分ではない他の客がオーダーする魚の名前で酒が飲めるところにあると思っている。

百軒店手前にこの間発見した焼き鳥屋さんの空いているカウンターを指差すと親父がもう今日はダメとノンルックNGを送ってくる。いつもの森本も目一杯だったし、どうしても串料理がが食べたいなぁっと思って行きずりで入ったのが串揚げ屋で、薄手のべっ甲模様のメガネをかけた店主が僕の顔をみて「あら、久しぶりじゃない」というので、初見ながら僕も久しぶりにやってきた客みたいなテイでカウンターに座る。嬉しいのが黒木本店の「やまねこ」がある。僕はこの酒をヤマネコンティと呼んでいる。客ゼロのカウンターだった、この串揚げがまさかの大当たりだった。無口を装って実はメガネ越しに見ている粋な親父の一言、「別誂えのジョイホワイトもありますよ」というトークに、ネオ東京の奥深さを感じる。

「じゃあ、また次回!」

と串揚げを最後に兄弟と分かれるものの、何故か道で再び遭遇。5時間かけて食べ歩いたウルトラハシゴ、最後は振り出しのSG CLUBに戻ってグラシャンで終了。最高の5時間の雑談、そして東京の夏の本格的な訪れを感じる最高の時間だった。

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