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おにぎりプロジェクト第九弾:石垣島請福酒造編

おにぎりプロジェクトが始まって以来、「沖縄ではいつか開催できたらいいですねぇ」と成澤シェフと話していた。運良くNARISAWAのスタッフの一人に石垣島出身の方がいらして、請福酒造さんが先輩だという。タイミング良く東京に訪れていた社長の漢那さんとお話して、嬉しいことに念願の沖縄開催が決まったのだ。沖縄は僕にとって思い出が深い場所だ、そしてこの石垣島はWAGYUMAFIAが始まる前に琉球チャイニーズ料理を手掛ける玉代勢さんと彼の息子さんと旅をした場所でもある思い出深い島だ。あの旅から僕の今があるといっても過言ではないからだ。

請福酒造は1949年に創業した泡盛蔵だ。革新的な取り組みをいくつもしており、泡盛リキュールと呼ばれる梅酒も彼らが初めて誕生させた。今回もコーヒーのリキュールが登場しており、12度という飲みやすい度数で非常に濃厚なコーヒーリキュールとして仕上がっていた。聞けばコーヒーが大好きな蔵人が一人いて彼の作品だという。そして琉球古来の幻の酒と呼ばれる芋の酒、イムゲーを100年ぶりに復活させたのも彼らだ。ご存知の通り酒税は政府の大切な税収のひとつ、首里王府の管理下で作られていた泡盛、その当時の庶民は芋や黒糖で作った自家製酒だ。僕らもソーダで割って飲む、これが非常にスムーズでいい味だった。

考えてみれば、石垣島は今年初めての訪問となる。いつも通り、作成するおにぎりは2種類。今回も山と海をテーマに班を分けて制作する。おにぎりプロジェクトの一番の醍醐味はこの地元の食材を徹底的に勉強するという時間だと僕は思っている。帯同しているスタッフにとってもとても大切な時間になっている。現場でしか分からないことがたくさんある、僕も調味料として愛用しているピバーチ、生産者を巡ってコンクリート塀がだいたい背丈ほどの高さに這わせるように栽培するのだが、聞けば1m50cmないと実がならないそうだ。赤い種以外で灰色のものは停滞がインドネシア産を混ぜているという。香りはインドネシア産がいいという、それは温度帯に依るものだ。まだ歩けば汗をかくこの島だが、分布的には亜熱帯に属する。言い換えると赤道付近の熱帯の地域と比べると温度は低い地域だ。僕は温度が足りない分、生まれたものはたくさんあると感じている。それだけこの石垣の食文化は多様性がある。

今回生まれた2つのおにぎり。成澤シェフ、炊きたての米に湯がいたアーサをかける再び色が瑠璃色に代わり、そしてあたりに海の香りが充満する。素潜りでモリ一本で漁をされている若いうみんちゅの方がとってくれた魚たちを豊富にいれて、請福の泡盛で甘露煮にした。僕は島の豚を長命草とスクガラスで作ったソースで炒める、刻んだ島らっきょを和えた。炊きあがりのお米にシークワーサーとフーチバを混ぜて、そして潰した煎り米をおにぎりの顔に付ける。

いつもは竹の葉で包むのだが、今回は月桃の葉を用いた。今回も日の出前の早朝から全スタッフで400個ほど握り、渡したタイミングで、看護婦の方が「あら、これ月桃?」と手を差し伸べてくれた。漢那さんが「とても理事長が喜んでおられました」そう伝えてくれた。島の食材のみを使った2つのおにぎり、僕らももちろん作り終わってみんなで食べている。シンプルなおにぎりなはずが、おにぎりを作れば作るだけ学びがある。今回も一口二口と運ぶ度に味わいから感じられる食文化の豊かさがある。

「ぜひ今度は石垣にまた遊びにきてください」

おせわになったかりゆし病院の結びの言葉が、心にとても温かく響いた時間だった。

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